Black Butterfly / Joe Thomas

あー だの こー だの そー だの、なんやかんやと忙しくしてて、最近はゆっくり音楽を聴く時間もとれません。とほほ。

Vine Linux development becoming very active and busy, enjoying small home vegetable farm at my apartment’s verandah, watching professional tennis matches on TV, playing tennis with my friends . . . that’s how I cannot have enough time to enjoy listening to vinyls and 78rpms in the living room nowadays . . .


[4312BMkII Attenuators]

最近になってやっと気付いたのですが、SP を聴く時にはスピーカのツィータ用アッティネータを絞ると、割合といい感じで再生できています。たまにはアッティネータも動かしてあげないといけませんしね。あ、もちろん、ヴィンテージのフルレンジなどにかなうはずもありませんけど、まぁ慎ましく平凡な生活を営む我が家ではこんなんでよしとするしかないでしょう (笑)

My recent discovery (small but innevitable) is, that decreasing high frequency output by adjusting an attenuator for a tweeter works very well when playing old 78rpms. Other than that, it may be better for the attenuator to get moved very often. Of course, I know vintage full-range speaker units/systems will sound far better, but it’s my home system – money always talks anyhow 🙁

初めて耳にした時からその優しくて暖かい音色にぞっこん。マイナーな地位に甘んじましたが、知る人ぞ知る名スタイリスト ジョー・トーマス (Joe Thomas) (1909-1984) のトランペット。以前 Jack Teagarden のエントリ で書いた通り、Keynote レーベルに残された Joe Thomas の全録音はぜひ SP で揃えたいと思っています。

Heart-warming sound of his trumpet always makes me happy since I listen to his performance on vinyl for the first time many years ago . . . He has been very underrated and less-known, but he is definitely a special stylist – his name is Joe Thomas (1909-1984). As I wrote in the previous entry regarding Jack Teagarden, someday I would like to get all recorded 78rpms on Keynote label featuring Joe Thomas on trumpet . . .


[Keynote K-642 Side-A]      [Keynote K-642 Side-B]

Black Butterfly c/w You Can Depend On Me / Joe Thomas and his Orchestra
(Keynote [US] K-642)

先日うちに届いた7枚の SP (全部 $4 とか $5 とか、まあ常識的な範囲内の価格でした) の中で、最も聴くのを楽しみにしていたのがこの盤でした。Keynote レーベルでの、Joe Thomas 唯一のリーダーセッションから 2曲が収録されているからです。 曲そのものは「The Complete Keynote Collection」で聴いていたものの、やっぱり SP で聴いてみたかったのでした。

This 78rpm, one of all seven 78rpms I bought a while ago (all at very fair price such as $4 or $5 BTW), was what I was looking forward to listening to the most. Both sides contains Joe Thomas’ leader session left on legendary Keynote label (Joe could have his leader session on Keynote only once). Of course I already know what kind of performance they are, since I have a huge 21LP box set entitled “The Complete Keynote Collection”. But I couldn’t help buying this 78rpm since I would like to know and enjoy what the original 78rpm sounds like.

原曲のメロディを丁寧に吹いているだけなのに、なぜこんなに心ときめく音色になってしまうのでしょう。 “Black Butterfly”Joe Thomas の演奏は、とてつもなくメランコリックで、とてつもなく美しく、暖かい。名手バーニー・レイトン (Bernie Leighton) のソロも素晴らしく、その後を再び引き継ぐ Joe Thomas のフレージングはたまりません。B面の “You Can Depend On Me” も負けず劣らぬ名演で、サッチモの正統的伝承者といっても過言ではないでしょう。

His trumpet is like a magic – he simply plays original melodies as they are, but once he put simple notes with his trumpet, fantastic and beautiful atmosphere comes around. On the A-side “Black Butterfly”, Joe’s trumpet sounds so melancholic, so beautiful, and so warm – simply great. The accompanied pianist Bernie Leighton’s solo improvisations are also superb, followed by Joe’s beautiful trumpet phrases again . . . what a good performance. Side-B “You Can Depend On Me” is another good performance by Joe Thomas, who was one of the great followers of Louis Armstrong in his 1920s-1930s.

ところが、意外や意外、期待していた程に鮮烈な音ではありませんでした。うちにある他の Keynote の SP がいい音なだけに、その落差は歴然。盤質も比較的良好に見えるのに、どうして? ここで、「The Complete Keynote Collection」のライナーノーツをひもといてみると、興味深い記述が伺えます。

However, against my huge expectation, this 78rpm turned out not to sound so good, while other Keynote 78rpms I have sounds so brilliant and excellent. Condition of this copy looks very nice, but the sound lacks some kind of magic – why? Then I consulted liner-notes on the 40-page booklet which come with “The Complete Keynote Collection” box set, and I found the following explanation:


. . . キーノートの売れ行きは、目立つほどではないにしろ、着実だった。なかでも最大のベスト・セラーとなったのが「レスター・ヤングの作品だった」という。レコードはペンシルバニアのスクラントンにある当時としては最高のキャピトルのプラントでプレスされた。ところが 1946年になると、原材料のシェラックが需要に追いつかなくなり、キーノートはしめ出されてしまった。音質を売り物にしてきたキーノートは、プレス工場を変えようとしたが満足のいくプラントはみつからない。そこでキーノートはカリフォルニアのプラントを買収したが、これが裏目に出てしまった。そこでプレスしたレコードがすべて不良品となったのだ。この結果、キーノートは 25万ドルもの損失をこうむってしまった . . .
(「ハリー・リムと『キーノート』の歴史」、ボブ・ポーター著より転載)

. . . Keynote sales were not spectacular, but they were steady and consistent. Harry recalls that Lester was probabily the best seller. Keynote had also been known for top quality pressings which were done in Capitol’s Scranton, Pennsylvania plant; but in 1946, Scranton could no longer press Keynote and Keynote couldn’t find pressings of similar quality. Keynote invested in a plant in California, but all the pressings were bad. Keynote lost some $250,000 on the plant . . .
(from “Keynote: The Label and It’s Producer” by Bob Porter)

この Joe Thomas の K-642 が具体的にいつごろのプレスなのかは分かりませんが、デッドワックスから判断すると、スクラントンプレスではないことは間違いありません。まぁそれでも LP 復刻よりはずっといい音なのでこれで満足しときましょう。

I don’t know the exact pressing period of this 78rpm K-642 by Joe Thomas, but according to the dead-wax imprints, this 78rpm was not pressed at Capitol’s Scranton plant (which should have “anvil mark” stamp on the dead wax). Anyway, this 78rpm still sounds far better than LP reissues.



さて、この Joe Thomas のセッションでは全 4曲がレコーディングされました。残りの 2曲 “She Didn’t Say Yes”“Pocatello” は、Keynote レーベルが Mercury に買収されたのち、EmArcy レーベルのコンピレーションアルバムに収録されて陽の目を見ることとなりました。この 2曲も Joe Thomas の素晴らしさ全開の好演です。

Joe Thomas and his Orchestra recorded four tracks on the same session, and among them two tracks were released as Keynote K-642. The other two (“She Didn’t Say Yes” and “Pocatello”) stayed unissued for a while, until two compilation LP albums from EmArcy label included these unreleased performances back in 1955 (Keynote was sold to Mercury in 1948, and EmArcy was a subsidiary label of Mercury). These two tracks also presents superb performances by Joe Thomas and his Orchestra.


[EmArcy MG-36017 Front Cover]      [EmArcy MG-36017 Side-B]

Trumpet Interlude / Various Artists
(EmArcy [US] MG-36017)


[EmArcy MG-36018 Front Cover]      [EmArcy MG-36018 Side-B]

Alto Altitude / Various Artists
(EmArcy [US] MG-36018)



Joe Thomas and his Orchestra:
Joe Thomas (tp), Tyree Glenn (tb), Hilton Jefferson (as), Jerry Jerome (ts),
Bernie Leighton (p), Hy White (g), Billy Taylor (b), Lee Abrams (ds).
Recorded in New York City on August 16, 1946.
HL164-3  You Can Depend On Me                         Keynote K-642
HL165-2  She Didn't Say Yes                           EmArcy MG-36018
HL166-2  Black Butterfly                              Keynote K-642
HL167-2  Pocatello                                    EmArcy MG-36017

13 thoughts on “Black Butterfly / Joe Thomas

  1. Keynoteは1枚だけColeman Hawkinsのを持ってますが確かに音いいですよね。RIAA-FLATというカーブになかなかたどり着かず苦労しましたが、、、Shaolinさんのアップされていたいイコライザーのカーブ表にちゃんと載ってたのですね、気がつくのが遅すぎました。
    >全部 $4 とか $5 とか、まあ常識的な範囲内の価格でした
    モノにもよりますが、私はこの2〜3倍くらいまではと思ってたのですが、そうか・・・がんばります。。。

  2. > RIAA-FLATというカーブになかなかたどり着かず苦労しました
    あれれ、私は RIAA-12 で聴いてましたが . . .
    確かに、以前リンクを貼ったいくつかのサイト/PDF の中には、Keynote が RIAA-FLAT となっているものがありますね。アメリカのレーベルで 1943年〜1947年という時期から考えると RIAA-FLAT とは考えにくいのですが . . . どうなんでしょう。
    クワシキヒトカイセツモトム

  3. 私も最初RIAA-12あたりで聴いてたのですが、高音がもこもこするなと思いロールオフをいじっていくうちにFLAT(ウチのプリの表記はTAPE)で音のピントが合いました。ノイズもはっきりするのでカットオフしてます。Shaolinさんのイコライザーの表にもそれほど古くないプレスでもロールオフFLATのレーベルが目につきますが、こういうのはカッティングマシーンなどのハードに依存していたのかなとも思いました。
    因みに以前の記事にあったsignatureのColeman Hawkinsは何で聴いてますか?ウチはちょっとラベルが違うのですがsignatureもRIAA-FLATで聴いてます。。。

  4. ご無沙汰しております。
    RIAA-FLAT というカーブは電気録音の初期、1925年前後に多く見られます。パラマウント、ヴォカリオン、ブランズウィック等が該当します。また、250-FLAT ではジェネット等があります。そして、1927年あたりになると、FLAT から-5dB あたりになります。初期のコロンビア、オーケー、ヴィクター等が該当します。この時期は、ウエスタン・エレクトリックの録音機材を使っており、素晴らしい音のことは皆さんご存じと思います。1930年代に入ると、-8.5dB あたりになり、ブルーノート等がこのカーブでした。40年代には-12dB が多くなります。聴感上はRIAAとほとんど変わりません。アラディン、ファンタジィ、MGM、ルースト、サヴォイ、プレスティジ、キイノート等があります。お尋ねのシグネチュアは500/-8.5dB です。しかし、シグネチュアは、盤質の荒いものも結構あり、-8.5dB でもきつく感じることもあります。FLAT の場合は、相当のサーフェイス・ノイズが出るのではないでしょうか?
    イコライザーに関しては、復刻として世に出す場合を除いては、結局、自分好みの音で聴くようになるのでしょうか?
    私の場合は、指定カーブ、または年代に合ったカーブで、不満を感じたことはありません。あと、SPカートリッジでも、針径、2.5mil、3mil、3.5mil、4mil かでもだいぶ違います。また、MC、MM、バリレラ、クリスタルでも大きく感じが違ってきます。あと、能率の低いスピーカー、高いスピーカーでも高域の感じ方が違うと思います。

  5. 遅くなりました。
    > 以前の記事にあった Signature の Coleman Hawkins
    RIAA-8.5 (うちのイコライザでは -5 か -10 しかないのでどちらか) でオッケーでした。
    > FLAT の場合は、相当のサーフェイス・ノイズが出るのではないでしょうか?
    ですねぇ。けどひぃ〜さん的にはこれがドンピシャリな音だったと。興味深いです。
    ではこれから仕事で外出…

  6. 毎度お騒がせしているひぃ〜です、、、
    もしかすると、うちのプリのTAPEというポジションはFLATと違うのかもしれませんね・・・
    瀬谷さん初めまして、「TAPE」という表記が録音カーブの何と同じかご存じでしたら教えて頂ければ幸いです。プリはマッキンのC20です。
    説明書のカーブ特性表をよく見ると、2つの「TAPE」カーブがのっていました。1つは水平軸0に被さる0/TAPE、もう1つはラインが10KCまで水平軸0より上にあるラインTAPEです。(これなのかな?)
    http://www.officewin.com/manyual.html

  7. ひぃ〜さん、初めまして、よろしくお願いします。
    C-20のことは良く分からないのですが、0/TAPE ポジションはFLATのアコースティック・カーブと思います。もうひとつのTAPE カーブは低音が出すぎるのではないでしょうか?
    C-20のRECORD COMPENSATOR に何故TAPE というポジションがあるのか不思議ですが、BASS側はEQ のTURNOVER のことで、0/300/400/RIAA(500)/LP(800)/TAPE(1000) でしょうか? TREBLE側はROLL-OFF のことで、TAPE(0)/-5/-10/-12/RIAA(-13.7)/LP(-16)だと思います。
    ただ、C-20の各社カーブ例にもあるようにTAPE ポジションの例はひとつもありません。Keynote が500/-12 としたら、まずRECORD COMPENSATOR をその位置に合わせて、ひぃ〜さんがこもると感じるのでしたら、もうひとつのBASS AND TREBLE の方で微調整をする方が良いと思います。

  8. 瀬谷さん、ありがとうございます。
    カーブポジションだけでなくBASS AND TREBLEの方でもつめていこうと思います。
    はじめの頃はただ面倒と思った録音カーブあわせですが、ああだこうだいいつつ最近なんだか楽しくなって来てしまいました。
    拙ブログにも書きましたがクレデンザなどでは録音カーブなど考慮しなくてもちゃんと鳴るのですけどね。
    今年のSPレコードを聴く会には是非、伺いたいと思っておりますので、その時はよろしくお願いします。
    Shaolinさんもいらっしゃればお会いできますね!
    では又。

  9. 先刻帰宅しました。なるほどこれが C-20 のマニュアルですか . . . 興味深く拝見しました。
    並びからすると、瀬谷さんが仰る通り、BASS 側の TAPE は 1000、TREBLE 側の TAPE は FLAT じゃないでしょうかね。
    SP レコードを聴く会、次回がいつかは分かりませんが (笑) ともあれなにかの機会にお会いできるのを楽しみにしています。

  10. あ、それと
    > 以前リンクを貼ったいくつかのサイト/PDF の中には
    > Keynote が RIAA-FLAT となっているものがありますね
    の件ですが、明らかな間違いというのも中にはあると思います (笑)
    私の場合は、複数のデータを見比べて、時代的に一番まっとうそうなものをチョイスして、それから実際に聴いてみて確認する、ってことをいつもやってます。
    瀬谷さんがメインの守備範囲であろう 1920年代〜1930年代とは違って、1940年代中期のアメリカ盤は、そんなにバリエーションがあるわけではないと思ってますが。
    せいぜい NAB、AES、RIAA、及びその近辺という感じで。

  11. 久しぶりにキイノートをまとめて聴いてみました。
    やはり、500/-12 が一番自然でした。-5 やFLAT では、ハイ上がりの音になり、バランスが崩れます。ただ、ボリュームを絞って聴くとあまり気になりませんでした。低い音の時に使うラウドネス効果の高音版といった感じでしょうか。
    私は能率の高いフィールド・タイプのフルレンジ・スピーカーで聴いているので、こもったような感じは受けないのですが、比較的新しい年代のジャズを聴いている方やドンシャリが好きな方には500/-12 は物足りなく感じるかも知れませんね。

  12. うちも励磁型ほどではないにせよALTECのドライヴァー・ホーンとウーファーのシステムなので能率は100dB程あるのですが、ドンシャリ好きといわれるとそうかなとも思いました。コールマン・ホーキンスがロリンズ/コルトレーンばりに鳴るのはやはり間違いなのでしょうね、、、(ソレハイイスギカナ)
    普段渋好みだと云われているのですが、瀬谷さんにしてみれば私なんて「新しい年代のジャズを聴いている」者になるのだと思いちょっと笑ってしまいました。。。

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