Beyond The Little Willies (3) : I'll Never Get Out Of This World Alive

. . . this article deals with The Little Willies’ newest album, as well as original performances they covered on the album. Currently available only in Japanese . . .

Little Willies のアルバム でカヴァーされた楽曲のオリジナルバージョンを探訪する本企画。

第1回の Night Life” (Ray Price)、 第2回の Roly-Poly” (Bob Wills) に続き、今回はアルバムの 2曲目、偉大なる Hank Williams の生前最後にシングルリリースされた、タイトルも意味深な “I’ll Never Get Out Of This World Alive” です。




[MGM 11366 Side-A]      [MGM 11366 Side-B]

I’ll Never Get Out Of This World Alive c/w I Could Never Be Ashamed Of You
/ Hank Williams with his Drifting Cowboys

(MGM [US] 11366)

1953年の元旦、ショーファーの運転するキャディラックの後部座席で、ウィスキーのボトルを抱えながらあの世に旅立っていった偉大なるカリスマ Hank Williams。その激動かつ波乱の人生とは裏腹に、彼が次々レコーディングした名曲たちは、一聴する分には意外なほどあっけらかんとした能天気さに満ちている様に響きます。しかし、聴けば聴くほど、そのサウンドや歌詞の奥底からは、人生の苦しみや辛さや浮き沈み、諦観、自暴自棄、そして逆に楽しみや嬉しさといった、人間の感情の全てが反映されているように感じられ、問答無用に感動させられます。私事で恐縮ですが、私が生まれて初めて「カントリーを聴いて涙が出た」のは、Hank Williams の録音によってでした。

1952年6月録音の A面 “I’ll Never Get Out Of This World Alive” も、そのタイトルや歌詞とは裏腹に、意外なほどあっけらかんと歌われ、演奏されています。絶妙に設定されたゆるいテンポの上に、しっかりと引き締まった演奏、Elvis Presley も心酔していたであろう絶妙な歌い回し。このあっけらかんとしたサウンドだからこそ、恐ろしい程の説得力と「ブルース」的なフィーリングを感じてしまうのでしょう。この曲程、恐ろしい程インパクトのある歌が他にあるでしょうか。このサウンドに、この歌声に、この情感に、あの Mick Jagger を含めた Rolling Stones のメンバー達が心酔しきっていたというのも、うなずける話です。

1952年9月録音の B面 “I Could Never Be Ashamed Of You” の方は、アレンジメントもとてもコンサバティブで、極上のカントリーチューンといった趣。しかし、この Hank の声で歌われるだけで、こんなにも説得力が増すというのは、本当に天賦の才能としかいいようがありません。演奏形態やコード進行は全然ブルースではないのに、彼にしか表現しえないカントリーブルースとなっている、とでもいいましょうか。

Side-A : I’ll Never Get Out Of This World Alive
Hank Williams (vo, g), Sammy Pruett (g), Don Helms (steel-g), Jerry Rivers (fiddle) Howard Watts (b).
Recorded at Castle Studio, Tulane Hotel, Nashville, TN on June 13, 1952.

Side-B : I Could Never Be Ashamed Of You
same personnel as above.
Recorded at Castle Studio, Tulane Hotel, Nashville, TN on September 23, 1952.




Little Willies のバージョンはというと、テンポは原曲に準じているものの、アレンジメントを大幅に変えています。オリジナルのスローな 2ビート的ノリはあっさりとあきらめ、よりロック的なアプローチで元気良く迫っています。Richard Julian のヴォーカルは、カントリーっぽい歌い回しというよりは、やはりロックっぽいニュアンスを感じさせられるもので、元気の良いドラムスと充分張り合っています。要所要所でコーラスに絡む Norah Jones も、ロック的なサウンドに溶け込んでいます。演奏もサウンドもストレートに聞こえてくるというものです。

アルバムの 2曲目、意図的に肩透かしをくらわすべく、こういうアレンジで臨んだのか。あるいは Hank Williams のテイストを再現するのは諦めて別のアプローチで臨んだのか。ともあれ、原曲とはまったく異なるものが出来上がった、という感じです。これはこれで悪くありません。ただ、原曲と比べるのは御法度でしょうね。

» . . . 第4回「Beyond The Little Willies (4) : No Place To Fall」に続く . . . »


[Hank Williams Sr.]


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