1948〜1958年のモノーラルLPに使われたEQカーブは何か — 移行期ゆえに正解がひとつではない問題の整理

最終更新: 2026年4月8日 読了時間の目安: 約5分

1948〜1958年のモノーラルLPには、どのEQカーブが使われているのか?

このページで答える問い: RIAA統一前のモノーラルLP期(1948〜1958年)に、各レーベルはどのEQカーブで録音していたのか。



正直な答え:正解はひとつではありません

1948年のLP登場から1954年のRIAA規格策定、そしてその後の移行完了まで、 各レーベルはそれぞれ異なるカーブを使用していました。 さらに、RIAA策定後も移行には1〜2年を要しています。

したがって、「モノーラルLPはこのカーブ」という単一の答えは存在しません。 以下は、確認できる資料に基づいたレーベルごとの概要です。


レーベル別のおおまかな時系列

レーベル RIAA(またはその同等カーブ)への移行時期 移行直前のカーブ
RCA Victor 1952年8月頃〜(New Orthophonic = RIAA と同一) Old Orthophonic
Capitol 1953年秋頃〜 AES
Columbia 1955年前半、遅くとも1955年後半に完了と推定(1954年8月時点で「半数未満が移行済み」— Billboard 誌) Columbia LP
Mercury 1954年後半頃 AES
米 Decca 1955年前半頃 NAB
MGM 1954年後半頃 500N-12(Old Orthophonic のターンオーバー・ベースシェルフ + AES の高域ロールオフ)との説が有力だが諸説あり
London(英 Decca) 1954年前半 ffrr
Westminster Columbia に準ずる(カッティングを Columbia に委託)
一部は RCA Victor に準じる(カッティングを RCA Victor に委託)
Columbia LP
Old/New Orthophonic (ジャケットには AES と記載)

この表は概要であり、個々の盤の録音カーブを保証するものではありません。 各レーベルの詳細は → 各レーベルはいつRIAAに切り替えたのか?


なぜ単純ではないのか

移行期のレコード再生を難しくしている事情がいくつかあります。

スタンパーの継続使用。 レーベルがRIAAに移行した後も、旧カーブでカッティングされたスタンパーが摩耗するまでプレスに使われ続けました。同じカタログ番号でも、プレス時期によって異なるカーブでカッティングされている可能性があります。

カッティングの外部委託。 自社にカッティング設備を持たないレーベルは、Columbia、RCA Victor、Capitol などの大手に委託していました。委託先の設備と移行時期がそのまま適用されるため、レーベル名だけでは判断できません。

記録の不在。 多くの録音について、使用されたEQカーブの正確な記録が残っていません。上の表も、業界誌の記事やエンジニアの証言に基づく推定を含んでいます。


実践的な指針

正解がひとつではないとしても、実用的なアプローチはあります。

1. まず RIAA で聴いてみる。 移行期に使われていたカーブの多くは RIAA と同じターンオーバー周波数(500Hz)を持っており、差が出るのは主に低域のベースシェルフと高域のプリエンファシスです。まずは RIAA で聴いてみて、そこを出発点にするのが実用的です。

2. 違和感がある場合、レーベルの移行前カーブを試す。 上の表を参考に、高音がきつければターンオーバーの低いカーブを、低音が薄ければロールオフの緩いカーブを試してみてください。

3. 「好ましく聴こえる設定」と「録音時の設定」は別の問いであることを忘れない。 可変EQフォノイコライザで設定を変えて「良い音」に聴こえたとしても、それが録音時のカーブと一致しているとは限りません(→ EQカーブを変えると音の違いは聴こえるのか?)。

可変EQフォノイコライザの導入を検討している場合は: → 可変EQフォノイコライザは必要か?

信頼できるカーブ資料を探している場合は: → 信頼できるEQカーブの資料はあるか?

詳しくは → Pt.17Pt.20


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変更履歴

  • 2026年4月8日: 初版公開