プレRIAA期のレコードを現代の機器でどう再生すべきか — 実践的な選択肢の整理
プレRIAA期のレコードをどう再生すればよいか?
このページで答える問い: RIAA規格(1954年)以前に録音されたレコードを、現代の機器で再生するにはどうすればよいか。
まず確認:そのレコードは本当にプレRIAAですか?
手元のレコードがプレRIAA期の録音かどうかを、まず確認しましょう。
- ステレオ盤(1958年以降)→ RIAAカーブです
- 1954年以降のモノーラル盤 → レーベルによってはすでにRIAAに移行済みの可能性が高い
- 再発盤・リイシュー盤 → カッティングし直されている場合、RIAAの可能性が高い
各レーベルの移行時期については: → 各レーベルはいつRIAAに切り替えたのか?
以下は、確認の結果「プレRIAA期の録音である可能性が高い」場合の選択肢です。
選択肢1:RIAAのまま聴く
最も簡単で、多くの場合、実用上は問題ありません。
プレRIAA期の主要なカーブ(Columbia LP、NAB、AES、Orthophonic など)は、 ターンオーバーがいずれも 400〜500Hz 付近にあり、RIAAの 500Hz と大きくは離れていません。 高域プリエンファシスの差はやや大きいですが、 通常のリスニングで致命的な問題になることは少ないでしょう。
当時のリスナーも、各社のカーブの違いをトーンコントロールで補正しながら聴いていました。 「RIAA以外で聴かなければ台無しになる」というほどの差ではない場合もあるでしょう。
とはいえ、筆者も可変フォノEQを使って、資料を参考にしながら再生していますし、 「台無しになるというほどの差ではない」と断言はできません。
そのため、次の選択肢2が考えられます。
選択肢2:トーンコントロールで補正する
お使いのアンプにトーンコントロール(低音・高音の調整)がある場合は、それを使って、 聴感上のバランスを整える方法です。
精密な補正ではありませんが、実用的です。 実のところ、プレRIAA期のリスナーが日常的に行っていた方法でもあります。
選択肢3:可変EQフォノイコライザーを使う
ターンオーバーや高域プリエンファシスの値を切り替えられるフォノイコライザーを使えば、 録音時のカーブに近い設定で再生を試みることができます。
ただし、注意点があります:
- 録音時のカーブが正確にわかるとは限らない。 プレRIAA期の多くの録音は、使用カーブの記録が残っていません。設定はあくまで推定です
- EQカーブは信号チェーンの一要素に過ぎない。 カーブの3パラメータを合わせただけで「録音時の音」が再現されるわけではありません(→ EQカーブとマスタリング)
- 「好ましく聴こえる設定」と「録音時の設定」は別の問いです(→ EQカーブを変えると音の違いは聴こえるのか?)
「正解がわからない」ことを受け入れる
プレRIAA期のレコード再生では、一部のレーベルでは使用された録音カーブが特定されているものの、そのほかでは確実な正解がなかったり、諸説分かれていたりするのが実情です。 さらに、当時の録音チェーンは複雑で、EQカーブの3パラメータだけでは捉えきれない変動要因が 数多く存在していました。
可変EQフォノイコライザーで選べる設定は近似値であり、 「この設定が正しい」と保証されているわけではありません。 そのことを理解した上で、自分にとって好ましい音を探る—— それがプレRIAA期のレコードとの、現実的な付き合い方ではないでしょうか。
変更履歴
- 2026年4月8日: 初版公開