レコードの溝には物理的な制約があり、低音はそのまま刻むと溝が振れすぎ、高音はサーフェスノイズに埋もれます。録音時に低音を抑え高音を強調し、再生時に逆の処理で元に戻す仕組みがフォノイコライゼーション(フォノEQ)です。現代の標準はRIAAカーブ。
フォノイコライゼーションとは何か? なぜ必要なのか?
このページで答える問い: レコードの再生に「イコライゼーション」が必要な理由と、その仕組み。
レコードの溝が抱える物理的な問題
レコードは、音の振動を溝の微細な振れとして刻んでいます (モノーラル盤では横方向、ステレオ盤では左右の溝壁それぞれの方向)。 いずれの方式でも、同じ物理的な制約があります。
低音域: 同じ音量であれば、周波数が低いほど溝の振れ幅は大きくなります。 低音をそのまま刻むと、溝が大きく振れすぎて隣の溝と接触してしまい、 1面に収録できる時間が極端に短くなります。
高音域: 逆に高音域では溝の振れ幅が小さくなりすぎ、 盤面のノイズ(サーフェスノイズ)に埋もれてしまいます。
解決策:録音時に加工し、再生時に戻す
この問題を解決するために、レコードの録音では次の加工を行います:
- 低音域を抑えて記録する → 溝の振れ幅を抑え、収録時間を確保する
- 高音域を強調して記録する → ノイズに埋もれにくくする
再生時には、この逆の操作を行います:
- 低音域を増幅して元に戻す
- 高音域を減衰させて元に戻す(同時にサーフェスノイズも低減される)
この「録音時の加工」と「再生時の逆操作」の組み合わせが、フォノイコライゼーションです。
この対の関係は、1956年の一般読者向け書籍 The Saturday Review Home Book of Recorded Music and Sound Reproduction (Second Edition, 1956) でも、Canby がちょうど鏡像のような関係として説明し、Burke は再生側の回路を「exact negatives(完全に反転させた像)」を作る素子として描いています。
なぜ「カーブ」と呼ぶのか
周波数ごとにどれだけ増減させるかをグラフに描くと、曲線(カーブ)になります。 このカーブの形が、録音・再生の特性を定義しています。 そのため「EQカーブ」「イコライゼーションカーブ」と呼ばれます。
現在の標準:RIAA カーブ
現在、世界中のレコードで使われている標準のEQカーブは RIAA カーブ です。 1954年に米国のレコード業界団体 RIAA(Recording Industry Association of America)が策定しました。
しかし、RIAA カーブが標準になるまでには、各レーベルが独自のカーブを使っていた時代がありました。 その歴史に興味がある方は:
変更履歴
- 2026年4月19日: 1956年 Saturday Review 書籍での説明を補記
- 2026年4月14日: 図版を追加
- 2026年4月8日: 初版公開