何故クラシツク音楽ノモノオラル盤ハ安價ナリシカ

この内容は 日記サイトの記述 と同一のものです.テストも兼ねて此方にも再録します.

英DECCAが縦横振動式の ffss を,米ウェストレックスが 45/45 方式を,それぞれ完成させたのが 1950年代半ば.結局は 45/45 方式に統一され,ステレオ LP レコードは今に到ります.

それはさておき,ステレオ LP が店頭に並び出したのが 1958年.当然,店頭の LP がその日から全てステレオ盤になるわけもありません.各レコードレーベルやオーディオ業界の喧伝によりステレオ盤は徐々に受け入れられていきますが,結局は 1960年代後期まで,同じ音源でもモノーラル盤とステレオ盤が並行して売られることになります.





モノーラルカートリッジは横振動のみを拾い出す為,ステレオ LP 登場以前のモノーラルカートリッジは縦振動に弱く,よく知らないユーザがこの針でステレオ LP を再生しようとし,結果 LP を傷めてしまうというトラブルが多発しました.実際,現在中古市場で流通しているステレオ盤の中には,恐らくそうやって傷められたのであろう盤がちらほらと見受けられます.ぱっと見では盤質は良好なのにも関わらず,実際にトレースしてみると音がビリビリ割れまくり,というあれです.

さて,クラシック音楽の録音の場合,もともとワンポイントマイク録音によるモノーラルだったわけで,これがステレオ期に入ると 2マイク,あるいは 2マイク + 1マイクによるステレオ録音となります (現代ではもっと多くマイクをたてる場合もある様ですが).ステレオプレゼンス効果を購買者に知らしめるには最も適した録音方式だった訳で,クラシック音楽愛好家の間ではあっという間にステレオ LP が普及します.

ジャズやポピュラーの場合は,各楽器にマイクをあてがい,オンマイクで録音したものをミックスして 2ch にトラックダウンする為,まだ 2ch テープレコーダしかなかった当時では 左 中 右 とくっきりと音源が分かれてしまっているものが少なくありません.マルチコンソールやマルチレコーダが普及するまでのステレオ初期の盤では,概してモノーラル盤の方が珍重され高価で取り引きされているのも分かります (勿論稀少度や録音などによる例外も少なくありませんが).それに比べるとクラシックの方では,ステレオ盤はよりスムーズに受け入れられた訳です.

ところがステレオ盤初期には,プレス技術がまだ追い付いておらず,どうしても低音域が弱くなってしまう.また,一枚一枚の盤のクオリティのばらつきが結構多かった時期でした.その為,クラシック音楽ファン and/or オーディオファンの中でも,モノーラル盤を好んで買い続ける方は少なくなかった様です.しかし大勢はステレオ盤を好んだ.しかもプレス品質が良好な,現存するステレオ盤は意外と少ない.

この辺りが,クラシック音楽 LP の中古市場で当時のオリジナル盤のうちステレオ盤の方が圧倒的に高価で流通している主な理由の様です.先日 ディスクユニオン お茶の水クラシック館 を覗いた際,壁にディスプレイされている盤の余りの高価なことに腰を抜かしそうになりました.それらの多くは (1940年代後半〜1950年代中期の,SP から移行した直後のモノーラル盤を除いて) 矢張りステレオ盤で,中にはステレオ盤 18,000円,モノーラル盤 3,000円なんてものもありました.しかもモノーラル盤の方は 7割引のエサ箱に入っているという....

PISTON: The Incredible Flutist; MOORE: The Pageant of P. T. Barnum / Eastman-Rochester, Hanson (Mercury MG-50206)[MG-50206]

例えばこの盤.番号からすると 1959年〜1960年にリリースされたもの.これはモノーラル盤 (RFR1/RFR1 なので 1961年以降のセカンドプレスもの) ですが,購入価格は 300円(笑).これのステレオ盤 (SR-90206,しかも FR プレスなんか) だと,2万円は下らないのでしょう.モノーラルでも相当名録音だと分かるのですが.うちの (ちょっと古い Jazz や Soul,Rock が一番合う)オーディオ機器では,なんか借りて来た様な音になってしまいますが,盤自体のポテンシャルは充分に感じとれます.

内容ですが,よりによって Piston さんと Moore さんという日本ではとんでもなくマイナーなアメリカ人作曲家ペアの盤.それでもこの Piston さん の "The Incredible Flutist" (不思議な笛吹き) は有名な方でしょうか.重厚でむしろ古典的な佇いを感じさせるかと思えばかなりブッ飛んだフレーズやアンサンブルも飛び出すという,なかなか楽しめる曲だと思います.そういえば過日吉祥寺の古本屋で,かの有名な「管弦楽法」 (Piston 著) が激安で売っているのを見付け,暫し立ち読みしました.どうでもいいんですが.

B面の Moore さん の方は,もうちょっと保守的な響きがしました.わたくしクラシックまにやではないのでこんな程度の印象でしょうか.





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This page contains a single entry by Shaolin published on December 25, 2002 11:31 AM.

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