嗚呼,10吋盤.リードイン部分が盛り上がっていない最初期のマイクログルーヴなアナログ.後の弾力性のあるものとは違う,重く厚くそして硬い塩化ヴィニルの円盤.そして内袋を兼ねたチープで薄くぺなぺなの紙で出来たジャケット.内容なんかお構い無しで,もうそれだけでうっとりしてしまいそう.我ながらアホです.
Dixieland Classics Vol.2 / Phil Napoleon's Emperors Of Jazz (Mercury MG-25079)
幾ら Dixie 系の音楽がもはや不人気の領域に入ったとは言え,幾ら盤質が最高ではないとは言え,この盤が $3.00 とはどうかしてます.Yorklyn Records さん,有り難う(笑)
Phil Napoleon さんと言えば,Original Memphis Five のメンバとして知られ,Dixie 系の白人トランペッターの中ではかなり人気を博し,沢山の録音を残した御方.戦後に音楽活動を再開して吹き込んだこの盤でも,往年の元気の良さは健在で,年齢を重ねたが故の渋みと,たまらない明るさのバランスの良さが秀逸です.Web をあれこれ検索してみた限りでは,1946年録音とのこと.ということは SP 盤でリリースした後,1950年代前半にこの 10吋LP としてリイシューしたということでしょう.
ドラマーの Tony Spargo さん,本名 Tony Sbarbaro さんは,史上初の Jazz 録音を行った伝説の ODJB (Original Dixieland Jazz Band) のメンバだった方.物凄い事をされてる訳では決してないのですが,旧き良きドラムスタイルでずんちゃんずんちゃんと全体を盛り上げてはります.その他のメンバも Chuck Wayne (g) さんを筆頭に,がんがんハッピームードに貢献しています.
超絶技功のソロをとるでもなく,音楽的に斬新な事をされてる訳でもない.けどとても楽しく,うきうきとした気分にさせてくれる.けど底抜けの明るさの裏にちょっぴりセンチメンタルなものもしのばせている.Dixie ってなんでこんなに気持ち良いんでしょうか.いやほんまに.
Vol.1 (Mercury MG-25078) も欲しくなりました.後に Vol.1,Vol.2 の両方の収録曲をあわせて EmArcy の 12吋盤 (MG-36033) としてもリリースされている模様.