Madrigal / Chihiro Yamanaka Trio

[AS-038 Front Cover]
Madrigal / Chihiro Yamanaka Trio
(澤野工房 AS-038)

発売から一月以上経過していますので方々でレビューされてますが, まあ売れ行きは上々どころか売れに売れまくってるそうで.世の中捨てたもんちゃいますな.





J-POP かアイドル系の CD かと見間違うが如きアートワークはさておき,あっという間の 9曲.最近の新譜でここまで内容が濃い盤も珍しいんじゃないでしょうか,一応「ジャズ」というカテゴリーに入れられてる幾多のアルバムの中で.

[AS-038 Label]

オープニング “Antonio's Joke” は結構オーソドックスな感じ,まだウォーミングアップ中.けどテクニックに走る事もなく,全体のサウンドバランスと起承転結を重視したまとまりの良い演奏.この一曲だけ単独ではどうってことはないんですが,ここからが素晴しい.

続く “Living Time Event V” がアップテンポの痛快無比な 8ビート.全く嫌味のない 8ビート,上から下まで鍵盤を絢爛に使いきるピアノ,完全にロック的なドラムス,なのにちゃんとジャズになってる.このセンスは白眉でしょう.もちろん George Russell のあの曲です.

5曲目 “School Days”.予備知識なしでこの低音域ごんごんのオープニングを聴いて,最初あの学生時代とは気付きませんでした.カッコつけすぎてクサくなる寸前のところで抑えてるところに,バランス感覚の素晴らしさがにじみ出てます.いや素晴らしい.

“Caravan” と “Take Five”.あざとい程のアレンジですが,全く嫌味っぽくないところに脱帽.マンネリ化したアレンジに陥ることなく,かといって空回りすることもなく,ちゃんと今様の音と演奏になってるのはさすが.

とにかく,手持ちのパレットが豊富です.たくさんの語法を持ちつつ,たんなるコピーでつまんねーと思わせない様なバランス感覚がとにかく素晴らしい.選曲眼もさることながら,各曲の魅力がひきたつ部分をちゃんと把握されていて,それを見事に表現されてます.全曲 4分〜6分とコンパクトなのもいいですね.3人のテクニックひけらかしマスターベーションにはならず,かつ十分ジャズ的に楽しめる長さ.

連綿と受け継がれて来た「ジャズ」という固定されつつある狭いジャンルに全くとらわれず,自由奔放な解釈をみせつつ,けどやはりこれは何かというとジャズになってる.そういう意味でもっとも「ジャズ」から遠く,もっともジャズらしいアルバム,古き良きジャズであり,新しいジャズでもある,と言えます.

実にキャッチーで,実に一般受けしそうで,実に優れた BGM で,けれども聴き込む程にジャズ以外のなにものでもない. 山中千尋さん の優れたバランス感覚が一番発揮されているのはそこなのかも知れません.これなら文句なく万人にお薦めできる良盤です.ジャズの CD としてではなく,ポピュラー CD としても.

LP でもリリースしてくれよぅ〜.

    Chihiro Yamanaka (p)
    Larry Grenadier (b)
    Rodney Green (ds on tracks 1, 3, 4)
    Jeff Ballard (ds on all the rest)

    Recorded in New York City on February 12, 13 and 15, 2004.




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This page contains a single entry by Shaolin published on June 27, 2004 10:12 AM.

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