(澤野工房 / Sketch SK-08)
という訳で 山中千尋さんの CD に続き, HUM の LP を買ってしまいましたよ... 澤野工房 の web から直接購入.
ヨーロッパものってあんまり好んで買ったり聴いてはきていないんですが,とにかく新譜 LP に餓えている (?) 人間としては本当に助かります(笑)
この 180g 重量盤 LP のプレス自体はヨーロッパで行われている様です. 一部の方には懐かしい響きであろう “DMM” カッティングの LP. 御存じの通り Direct Metal Mastering の略で, 通常はラッカー盤にカッティングマシンで刻んでいくところを, 録音信号に 70kHz の信号を重複させて,カッターヘッドで強引にアモルファス銅の円盤を刻むという技術です.結局,この技術が円熟するはるか前に,CD 時代が到来して消えていったのでした.
それはともあれ,この LP で演奏される HUM (Humair, Urtreger, Michelot) の御三方.文字通りフランスを代表するプレーヤーでしょう.三人共,フランス国内だけに留まらず世界的に一定の知名度と評価を受けて来た重鎮.
もともと 澤野工房 から 3枚組 CD としてリリースされたアルバムの,3枚目だけを独立させて リリースされた LP です. ちなみに CD の 1枚目は 1960年のライブ (当時 Vega レーベルから出たもの), 2枚目は 1979年の Carlyne レーベルのアルバム.そして今回 LP としても出た 3枚目は 1999年のスタジオ録音です.
冒頭に書いた事情により,その 3枚組 CD も勿論 (?) 買ってはいません.
A-1 “Humeurs” の出だしの Humair さんの緊張感溢れるドラミングからすぐにこのアルバムの虜になってしまいます.全12曲中オリジナルは 9曲というのも好印象.残るカヴァーの A-4 “You'd Be So Nice To Come Home To”, B-5 “Everytime We Say Goodbye”, B-6 “Airegin” も,オリジナルの楽曲群との統一感あるアレンジと音色で全く飽きさせません.
日本やヨーロッパの Jazz といえば,どちらかというと表面上のインパクト重視よりも内へ内へと深く掘り込んでいく精神的なプレイが多いという印象がありますが,この盤も例外ではありません.瑞々しい透明感溢れる空気の音としっとりと描かれるフレーズ,バラード,ミドルテンポ,アップテンポと全曲を通じて貫かれる単一の色.そんな感じではあります.
けれども,全く飽きることがないのは,どの楽曲でももの凄い緊張感と共に深くへと追求されるそのプレイ.この手の演奏スタイルはえてして飽きられ易かったり,プレーヤーの自己満足に陥ったりしがちですが,前述の統一感ある空気がそうはさせてくれません.実に気持ちのいい空気感.そして,聴けば聴くほど「この人達,一聴では分からないけど実は凄い演奏してんねんなぁ」と思わされることしきり.円熟味を感じさせられ,同時にとても新鮮な音でもあります.
B-6 “Airegin” (もちろん Rollins のあの曲です) は,前述の 3枚組 CD では 3枚共で演奏されているそうで.1960年版,1979年版,1999年版と 3つの “Airegin” と共に,この長い歴史の間に 20年おきにタッグを組む御三方の変化と進化が聴きとれる様になっているそうです.
Daniel Humair (ds) Rene Urtreger (p) Pierre Michelot (b) Recorded at Studio Damiens, Boulogne, France on February 23, 24 and 25, 1999.
末筆になりましたが, 澤野工房 さん,本当にありがとうございます. 過去にも国内で LP を通販購入したしたことが何度かありますが, 梱包 の仕方に,並々ならぬレコードへの愛情を感じた次第です.
具体的には,ジャケットから LP を出して,別の白ジャケットにいれたのち,その 2つを重ね合わせています.輸送時に LP の重さがためにジャケットの上下や背表紙が裂けてしまわないための基本中の基本の配慮で,コレクター間での個人的なやりとりの場合にはごく一般化しています.が,レーベル会社から直に買った際に,ここまでして頂けたのは初めてでした.
輸送時の最外部の段ボール梱包も,縦辺と横辺とで二重に段ボールを巻いており,これなら絶対に輸送時破損は起こり得ないという頑丈なものでした.いやはや,改めて感謝感激です.