ブログ連載 Pt.0〜Pt.25 の全体像と読み方ガイド

最終更新: 2026年4月8日

連載「Things I learned on Phono EQ curves」について

この連載は、筆者が2022年夏から2年以上にわたり、フォノEQカーブの歴史を一次資料にあたりながら調査・考察した記録です。全25回+序章の構成で、1925年の電気録音黎明期から現在までを追っています。

調査の出発点となった問いは、次の4つでした。

  1. なぜレコードにEQカーブが必要なのか
  2. 各時代の技術は、そのカーブをどう実現したのか
  3. なぜカーブは統一されなかったのか、その差異にはどんな意味があったのか
  4. 米国での調査・開発・業界活動は、どのようにして統一規格へ至ったのか

参照した資料は、回路図、技術文書、学術論文(AES Journal等)、業界誌(Billboard、Down Beat等)、特許、カタログ、サービスマニュアルなど多岐にわたります。



読み方のガイド

通しで読む場合

Pt.0(序章)から順に読むと、技術と産業の両面から標準化への道筋をたどれます。ただし、全体で非常に長いため(数時間以上かかります)、まず In a Nutshell(約15〜20分) で全体像を把握してから読み始めることをお勧めします。

特定のテーマだけ読む場合

以下の一覧から関心のあるパートに直接飛べます。各パートは独立した記事として読めますが、前後のパートへの参照が含まれている箇所もあります。

特定の疑問がある場合は、FAQ が近道です。各FAQページから関連するパートへのリンクもあります。


各パートの概要

Pt.0 — 序章:この調査の動機

なぜこのテーマを調べ始めたのか。調査の前提と方法論について。

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Pt.1 — 定振幅と定速度:電気録音の物理

1925年の電気録音商用化。Western Electric のラバーライン・レコーダーにおける定振幅記録と定速度記録の原理。EQカーブは電子回路ではなく、カッターヘッドの物理特性によって決まっていた。

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Pt.2 — 世界初の電気録音とその周辺

Western Electric 以外の電気録音技術。Brunswick のライトレイ方式。

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Pt.3 — 1930年代の録音技術の発展

ライセンス料を避けるための独自技術開発。英国の Bramline システム。マイクの周波数特性による、意図せぬ高域プリエンファシス。

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Pt.4 — 映画サウンドトラックとトランスクリプション盤

33⅓ rpmのトランスクリプション盤は商業用78rpm盤より先に存在した。Vitaphone と Sound-on-Disc。縦振動カットのトランスクリプション盤と、意図的な高域プリエンファシスの導入。

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Pt.5 — Stokowski と Bell Labs、そして Orthacoustic の誕生

Bell Labs / Western Electric の実験録音への Stokowski の貢献。NBC=RCA の横振動トランスクリプション盤。1941年、Orthacoustic 特性の起源。

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関連FAQ: Stokowski と Bell Labs の実験録音


Pt.6 — ラッカー盤、アセテート・レコーダー、そして針圧

ラッカー盤の普及とアセテート・レコーダー。Pierce & Hunt による針圧と再生歪みの研究。横振動方式が高調波歪みの点で優れていることの実証。

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関連FAQ: レコード再生技術の進化


Pt.7 — 圧電式ピックアップの時代

1930年代後半、ジュークボックス向けに登場した圧電式(クリスタル)カートリッジ。その後数十年にわたる民生機での支配。定振幅記録方式の試みとその挫折。

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関連FAQ: レコード再生技術の進化


Pt.8 — 1942年 NAB 規格の採用

NAB(全米放送事業者協会)が放送用トランスクリプション盤の規格を策定。NBC=RCA の Orthacoustic が選ばれた経緯。戦時下の制約により、規定項目は16項目に限られた。

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Pt.9 — 戦中・戦後の再生環境と英米の温度差

戦中・戦後の再生機器の実態。高域プリエンファシスに対する英国の慎重姿勢。米国における独自EQカーブの乱立。「規格統一」より「ノイズ低減」が優先された時代。

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関連FAQ: RIAA以前、リスナーは実際どうレコードを再生していたのか


Pt.10 — 1949年 NAB 規格の完成

1949年版 NAB 規格の策定完了。NAB の高域プリエンファシス(100μs)の強さをめぐる技術的議論。

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Pt.11 — Columbia LP マイクログルーヴの登場

1948年6月18日、Columbia LP 発表。1939年頃からの秘密開発。功績を主張する複数の関係者と、食い違う証言。

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関連FAQ: LPレコードを発明したのは誰か


Pt.12 — Columbia LP の録音カーブ

Columbia LP 録音カーブの技術的背景。NAB カーブとの違いはベースシェルフの時定数のみ。ホットスタイラス技術(Columbia が1〜2年独占)。10,000Hz以上のカッティング能力の向上。

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関連FAQ: Columbia LP カーブとは何か · ホットスタイラスとは何か


Pt.13 — RCA Victor 45回転の登場

1949年1月10日、RCA Victor 45rpm 発表。旧 Orthophonic カーブの系譜。「回転数戦争」の始まり。

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関連FAQ: レコード再生技術の進化


Pt.14 — 回転数戦争とその決着

1949〜1950年の業界の反応。最終的な棲み分け:LP=アルバム、45rpm=シングル。

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関連FAQ: 「回転数戦争」とは何か


Pt.15 — 「ハイファイ」という言葉の歴史

「High Fidelity」の起源は1927年。戦後のハイファイの定義をめぐる技術的議論。LP / 45rpm 時代のマーケティング用語としての普及。

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Pt.16 — Sapphire Group、AES、そして標準化への機運

業界の秘密主義から協力へ。Audio Engineering 誌と AES の役割。AES 再生カーブの策定。

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関連FAQ: Sapphire Group とは何か


Pt.17 — 1949〜1953年のレーベル別録音特性

磁気テープの普及による録音スタジオとカッティングスタジオの分離。Pultec EQP-1A の登場。マトリクス番号による調査方法。RCA Victor の1952年8月 New Orthophonic 採用(RIAA の前身)。

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関連FAQ: 各レーベルはいつRIAAに切り替えたか


Pt.18 — NARTB、AES、RIAA 規格の成立

1953年6月 NARTB 承認、1953年12月 AES ドラフト承認、1954年1月29日 RIAA 標準録音再生特性承認、1954年6月 AES TSA-1-1954 正式承認。RIAA 技術委員会の構成(5大レーベルのチーフエンジニア)。75μs の選択(RCA Victor New Orthophonic と同一)。フィードバック・カッターの登場とフラットレスポンスの実現。

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関連FAQ: RIAA規格はいつ成立したか · なぜRIAAが「勝った」のか


Pt.19 — 1950〜70年代のディスク録音機材

録音EQの変遷:独立したEQユニットからアンプ内蔵回路へ。Gotham、Fairchild、Westrex、Neumann、Ortofon 各社のシステム分析。アンプ内部でのRIAA実現。

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関連FAQ: ステレオLPは本当にすべてRIAAか · EQカーブ以外に音を決める要素


Pt.20 — RIAA 移行の実態

RCA Victor、Capitol の早期移行。Columbia の1954年夏の移行(約1年で完了)。1955年末までにほぼ完了したと推定。各レーベルの移行時期の調査方法と、技術文書・マトリクスデータに基づくカーブ対応表の構築。

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関連FAQ: 各レーベルはいつRIAAに切り替えたか · 1948〜1958年のモノラルLPにはどのカーブを使うべきか


Pt.21 — テストレコードとEQカーブ

78rpmおよび33⅓トランスクリプション盤の周波数特性測定の記録。フィードバック・カッター時代の仕様(1kHz以下はRIAA、以上は定速度)。1953年 Dubbings、1954年 Folkways の例外。

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Pt.22 — 1957〜1964年の民生用アンプのフォノEQ

ステレオ初期、一部のアンプにはRIAA以外のEQ切替が残っていた。McIntosh の例外(C-22、C-24、MA230)。ステレオ=RIAA再生という前提の定着。

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関連FAQ: 可変EQフォノイコは必要か · RIAA以前、リスナーは実際どうレコードを再生していたのか


Pt.23 — RIAA偏差の測定と LCR / CR フィルタ

1972年のステレオサウンド誌によるRIAA偏差測定データ。LCR型フィルタとCR型フィルタの議論。Bell Labs / Westrex の系譜。戦後の民生再生におけるRC回路の優勢。

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関連FAQ: 聴感テストと歴史文書、どちらを信じるべきか


Pt.24 — マイクから最終メディアまで:信号経路の全体像

録音・マスタリング・再生の各段階における多段階の音づくり。ポピュラー音楽におけるアクティブEQの実践。聴感によるカーブ同定の限界。

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関連FAQ: EQカーブとマスタリング、どちらが音を決めるのか · EQカーブ以外に音を決める要素


Pt.25 — 結語:調査を終えて

Pt.0〜24 で学んだことの時系列整理。現時点での結論。参考文献と謝辞。

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変更履歴

  • 2026年4月8日: 初版公開