銅板玉子焼器火入其之參

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さて,次回は未定と書きました が,週末たこ焼ハッカーとしては日曜日に作るしかありません.たこ焼については過去学生時代に銅板で何度も汗水たらし訓練してきましたし,味付けについても毎日の様に作ってほぼ基本形は完成しています (勿論まだまだ改善の余地ありですし,今後も精進し続けますが).そこで,今回は難易度の高い 玉子焼 (地元の明石以外では明石焼と呼ばれますが) にチャレンジすることにしました.








両親共に生まれが神戸であるうちの実家では,やはり関西人の常として,月に 2〜4回ペースで家でたこ焼を作り食べていました.しかし,私が高校生の頃 (静岡県清水市でした),同級生がうちに遊びに来て一緒にたこ焼を食べた時に指摘されて初めて気付いたのです.

そう,うちで作っていたたこ焼というのは,玉子焼だったのでした.私はこの時まで,これがたこ焼だと信じて疑っていませんでした.

ともあれ,母親の作る玉子焼の生地は,本場明石の玉子焼よりは硬く (家庭で使うコンロ付鋳鉄たこ焼器で焼ける様に) 作ってあったと記憶しています.もちろん,たこ焼の生地よりはよっぽどやわらかいのですが.




私が大学一年生から二年生にかけてアルバイトをした梅田の某たこ焼屋さんは,玉子焼ほどではないにしても,たこ焼としては異例の生地の軟らかさでした.その為,玉子焼と同じく銅板鍋を使っていました.鍋一枚に 8 x 8 = 64 個の穴がある巨大な銅板たこ焼器が 5台程並んだ店頭で,ほぼ毎日汗をたらしつつ焼いておりました.焼き,かえしの技術はこの時に叩き込まれました.アルバイトを始めた最初の数日は,どれだけのたこ焼を無駄にしたことか.

しかし,生地の配合については,店長は絶対に教えてはくれませんでした.特にある白い粉については,それが何であるかすら教えてもらえませんでした.一度この白い粉をわけてもらったことがあるのですが,それはそれは見事なたこ焼に仕上るのでした.今では,これが何であったかはほぼ見当がついているのですが.




随分と脱線しました.さて,今回は,切角銅板玉子焼器を目の前にしているのですから,松林家流生地ではなく,明石もんと同じ様にとろとろに作ってみました.

箸で持つのが困難な程とろとろの玉子焼を作るのに絶対欠かせないのが じん粉 です.要するに小麦粉のでんぷんです.まずはここから作ります.小麦粉を小量の塩と水でよくこね,しばらく寝かせた後,あらかじめ作っておいたダシ汁の中で泡立て器を使ってもみほぐしていきます.その後,漉し網を通せば,じん粉入りだし汁の出来上がり.それに適量の小麦粉と卵を足して,もっともベーシックな玉子焼の 生地 の完成.

[Akashiyaki Copper Plate]

ちなみに,漉しとった残りカスは 生麸 なので,これはこれで食べられます.




玉子焼,正確にいえば銅板で焼く場合,には 火力のこまめな調節 が非常に重要になります.特にたこ焼で,外はかりっと,中はとろっと作る為には,かなりの強い火力が必要となります.ですので,熱伝導率が高い銅板は非常に有利なのですが,ちょっとでも手を抜くとすぐに焦げてしまいます.

[Akashiyaki Copper Plate]

一度油をしっかりひき,火にかけて,煙が出る寸前でとめ,しばらく寝かせます.その後たこを穴に入れて再び火を入れ,生地を一気に流し込みます.

[Akashiyaki Copper Plate]

じん粉の威力はもの凄く,全く固まる気配を見せません.それでなくとも水分の比率がたこ焼より高いため,返しはかなりの困難な作業となります.最初に一気に強火で外枠を軽く作り,その後火を少しづつ弱めながら徐々に形を作って行くというのが王道パターンの様です.

[Akashiyaki Copper Plate]

つなぎとして,じん粉ではなく山芋が使われることの多いたこ焼に比べて,焼き,返すのが非常に困難な所以です.いくらやわらかい生地のたこ焼であっても,こんなに大変ではありません. ともあれ,火力を細かく調整しつつ,こげつかないように返しを手早く行い,形を整えていきます.

今回は,生地をとくダシとして,有名な金沢の「プロだし」を使いました.醤油の成分が少なからず入っているためか,生地が焼けてくると茶色く焦げて香ばしい香りがしてきます.しかし,たこ焼ならこれでいいんですけど,当初念頭に置いていた出来栄えとはちょっと異なり,これは残念.今度はちゃんとダシをとるところからやってみようと思います.

[Akashiyaki Copper Plate]

ともあれ,引き続き火力を調整しつつ返しを続け,形を整えて,とりあえずの出来上がり.

[Akashiyaki Copper Plate]



まずは何もつけずにそのまま試食.関西のたべものらしく,しっかりと味はついているもののしつこくはない,ほんのりとダシの香りと卵の甘味が出るのが理想ですが,今回はダシ作成を簡略化したせいで,ここはちょっと不本意.

しかし,食感はまずまず狙った通りにできました.箸で掴めるか掴めないかぎりぎりのやわらかさで,中はとろとろ.だし汁につけて頂くと,まずまずの味が楽しめました.

次回の課題は,だし汁の作成とその味の調整というところでしょう.

けれどもその前に,次は作り慣れた たこ焼 をこの銅板器で思う存分焼く,ということになりそうです.





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たこ焼きでここまで日記を書けるのはあなただけです。恐らく。。

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This page contains a single entry by Shaolin published on May 23, 2004 8:40 PM.

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