あの歴史的大一番からもう2日が経過しました。あー興奮し過ぎて疲れた。
Wimbledon 2008 - Final Highlights
去年の決勝 からまたまた1年。今年も3年連続で同じ顔合わせ。しかも去年とはナダルの強さは違う。 いやがおうでも盛り上がろうというものです。
第4セット、あの劇的なタイブレークをフェデラーがとってフルセットに突入するところで、リアルタイム観戦継続をあきらめ、翌朝、web や TV などの情報を全てを遮断した状態で (笑) 録画しておいた続きを観戦。そこからも長かったこと . . . .
R. Nadal def. R. Federer 6-4, 6-4, 6-7(5), 6-7(8), 9-7
ロジャー・フェデラー (Roger Federer) と ラファエル・ナダル (Rafael Nadal)。長らくランキング1位と2位を守ってきた2人による、3年連続の ウィンブルドン (The Championships) 男子シングルス決勝戦。
しかしなんという試合だったのでしょう。ここまでドラマティックで、ここまで死力が尽くされ、ここまで神業的ショットの連続で、ここまで感動的な試合は他にも数えるほどしかないでしょう。こんな試合をリアルタイムで TV 観戦する時代に生きていて、本当に幸せだと思いました。
また日没後の表彰式のカメラのフラッシュライトがなんと眩しく美しかったことか。
2週間前の全仏ではフェデラーを完膚なきまでに叩きのめして4連覇を達成し、ウィンブルドン前哨戦、芝のアルトアチャンピオンシップスでは近年追い上げの激しいランキング3位のジョコビッチを決勝で破って見事初優勝。その勢いのまま、みごと3年連続ウィンブルドンの決勝にあがってきたナダル。今年前半からサーブも非常に強力になり、ボールの威力に頼り比較的単調の感もあったラリー戦でもバリエーション豊かな攻めを見せるようになってきました。
かたやウィルス性単核症のせいもあってか、全豪オープンでは準決勝でジョコビッチにストレートで敗退、春のハードコートシーズン (インディアンウェルズ、マイアミ) でも優勝できず、全仏前のクレーコートシーズンにも 2度 (モンテカルロ、ハンブルグ) 決勝進出するも、どちらも決勝でやはりナダルに負けたフェデラー。そして全仏では1999年以来という惨敗でボコボコにされ。しかし芝のシーズンになるとさすがに調子を完全に戻し、ウィンブルドン前哨戦ハーレの大会で優勝するも、ナダルは出場しておらず。ウィンブルドンでは1セットも落とさず決勝進出。さすが欠点が皆無、史上最高のテニスプレーヤと誰もが認める完璧な試合内容。
昨年の決勝もすごい内容で十分すぎる名勝負でしたが、今年はそのはるか上をいくレベルの名勝負でした。誰もが驚いたナダル2セットアップ、そこから王者の意地を見せてフルセットへ。第4セットのタイブレークの一進一退の劇的な攻防。雨による2度の中断、日没サスペンデッド直前の試合終了。なにもかもがドラマティック。世界最高峰の抜きん出た二人が実力の全てを出し合ってぶつかると、こんなにも濃密な4時間48分間が生まれるということに、ただただ鳥肌。
オープン化以降の最高の名勝負として長く語り継がれてきた 1980年ウィンブルドン決勝、ビヨン・ボルグ (Bjorn Borg) 対 ジョン・マッケンロー (John McEnroe) の 1-6, 7-5, 6-3, 6-7(16), 8-6 という大激戦も最高にドラマティックな試合でしたが、今回の Rafael Nadal 対 Roger Federer の試合が それを越えたテニス史上最高の名勝負だ、という人が続出しているのも頷けます (アメリカのTV放送の解説を担当していたマッケンロー本人も “This is the greatest match I've ever seen” と連発していたそうです)。
Wimbledon 2008 - Nadal Interview Final
Wimbledon 2008 - Federer Interview Final
クレーコートシーズン真っ最中に訪れたランキング3位陥落の危機を、ジョコビッチとの2度の直接対決でしのいだナダル。今回の優勝により、フェデラーとのポイント差がぐっと縮まり、ハードコードシーズン (ロジャースカップ、シンシナティ、そして US オープン) の両者の成績いかんによっては1位と2位がついに交代する可能性がぐっと現実的になってきた現在のランキングポイント。今シーズン後半も目がはなせなくなってきました。
ちなみに、現時点までのナダル対フェデラーの対戦成績 は 12勝6敗でナダルのリード。
- Roger & Rafa: The Rivalry (ATPtennis.com, Jul. 6, 2008)
(現時点までの全直接対決18試合について、それぞれ簡単なレビューがまとめられています)
天然芝コート ではフェデラーの2勝 (2007年、2006年のウィンブルドン決勝) 1敗 (2008年のウィンブルドン決勝)。
ハードコート ではフェデラーの 3勝 (2007年、2006年のマスターズカップ準決勝、2005年マイアミ決勝) 2敗 (2006年ドバイ決勝、2004年マイアミ2回戦)。そのうちマスターズカップについては室内ハード (フェデラー2勝)、他は屋外ハード (ナダル 2勝1敗)。
今や開催大会が少なくなってきた (グランドスラムに準ずる大きな大会だと秋のマスターズシリーズパリだけ?) カーペットコート での対戦はなし。
クレーコート ではナダルの 9勝 (2008年、2007年、2006年の全仏決勝、2005年の全仏準決勝、2008年ハンブルグ決勝、2008年、2007年、2006年のモンテカルロ決勝、2006年ローマ決勝) 1敗 (2007年ハンブルグ決勝)。
ラファの 2008年ハードコードシーズン
となると気になるのがハードコートでの調子。今年のナダルのハードコートでの戦績はというと . . . .
- 2007年12月31日〜2008年1月7日:インド・チェンナイ
- 準優勝 (決勝でユーズニーに完敗)
とはいえ準決勝でモヤ兄貴と大激戦をした翌日なので仕方ないか - 1月14日〜28日:オーストラリアンオープン
- ベスト4 (準決勝にツォンガに完敗)
この時のツォンガは恐ろしく強かった。いかなる球もフラット系のものすごいカウンターで返しナダルを翻弄していた - 2月18日〜25日:オランダ・ロッテルダム
- 2回戦敗退 (セッピにフルセットで惜敗)
まだ調子が出てなかった頃か - 3月3日〜10日:UAE・ドバイ
- ベスト8 (準々決勝でロディックに敗退)
2年前には決勝でフェデラーを破り優勝した相性の良い大会ですが、この時のロディックは相当強かった - 3月13日〜24日:マスターズシリーズ インディアンウェルズ
- ベスト4 (準決勝でジョコビッチに完敗)
この試合を観た時は、ジョコビッチにランキング2位の座を明け渡す日も近いと思いました - 3月24日〜4月7日:マスターズシリーズ マイアミ
- 準優勝 (決勝でダビデンコに完敗)
ダビデンコ、ハードコートではやはり強い
良く解釈すると、この後のクレーコートシーズンから本来の調子を取り戻し、かつ数年に渡って取り組んできたプレースタイルの進化が一層本物になり、マスターズシリーズ モンテカルロを4連覇、マスターズシリーズ ハンブルグ初優勝、そしてついにウィンブルドン前哨戦とウィンブルドンで優勝したと考えると、ハードコートシーズンでも昨年や今年前半より更にグレードアップした試合をみせてくれそうです。
悪く解釈すると、一番球足の遅いクレーと、一番球足の早い芝では実力を完全に出しきれるものの、もっとも標準的なサーフェスであるハードコートでは、まだ実力ある選手に足元をすくわれる可能性が残っているということなのかもしれません。なにしろフットワークが全然違いますからねぇ、クレーとハードでは (天然芝でテニスなんてやったことないのでわかりまへん)。
ともあれ、2004年や2005年の頃の様に、フェデラーひとりだけが圧倒的に抜きん出て強すぎる (もちろんそのテニスそのものは余りにも素晴らしいのですが) という、観戦する側からすると少し物足りない状況ではなくなり、昨年後半にジョコビッチが本格的にナンバー3の座を盤石にしだした頃からがぜん面白い状況が整いつつあります。
ボルグ・コナーズ・マッケンロー・レンドルの時代 (1970年代中盤〜1980年代中盤) がプロテニス第1次ブームだとすると、やっと本当の意味で第2次ブームが訪れるのかもしれません。試合観戦、という意味において。なんだかんだいって、アマチュアのプレー人口は日本であってもコンスタントに多いですからねぇ。