Mysteries of “Cannonball Adderley Quintet In Chicago”
実際の盤を検証 (モノーラル盤)
ステレオ盤に続いて,今度は蒐集したモノーラル盤をみていくことにしましょう。
執筆時点で手元にあるのはやはり 4枚。もちろん全て MG-20449 です。 以下便宜上 [M1] [M2] [M3] [M4] と記します。
ステレオ盤の時と同様,ジャケットは 4枚共全く同じもので, 識別可能な相異点はありません。
レーベル
レーベルのデザインは今のところ 5種類を確認しています。 そのうち 4種類を一枚づつ所有しているというわけです。
これが [M1] で, 1958年頃から使われ出したデザインのレーベルです。
- 黒レーベル
- 銀色印刷
- 字体は太めのサンセリフ体
- 下部に Mercury ロゴをはさんで LONG PLAYING MICROGROOVE 表記
- 左に「MG-20449 Side 1」
- 溝あり
このタイプは,手持ちの盤では
MG-20396 が最も若いカタログ番号で、
それ以前の盤の 1st プレスでは,多くがレーベル左は何も印刷されておらず,
代わりに,レーベル下に「MG-20326 A」という風に印刷されています。
ステレオ盤の時と同様,
前後のリリースから考えると,このタイプが最も初期のレーベルである可能性が
高いと考えられます。
なお,このタイプは,1963年から1964年頃に赤レーベル (黒印刷) が
登場するよりずっと前に,
小さな楕円ロゴの別レーベル [M5] に駆逐されています。
続いて [M2] の盤のレーベルです。 [M1] のものと併存していたタイプです。
基本的なパターンはステレオ盤の [S1] と同じく,
- 黒レーベル ([S1] と同じ)
- 銀色印刷
- 大きな楕円ロゴ (下部に RECORDS 表記入り)
- 字体は太めのサンセリフ体
- 下部に「LONG PLAYING HIGH FIDELITY」
- 左に「MG-20449 Side 1」
- 溝あり
となっており,[S1] にくらべると楕円ロゴのサイズが大きくなっているのと,
レーベル上の「STEREO」が「A PRODUCT OF MERCURY RECORD CORPORATION」に
変化している以外はほぼ同じです。
このタイプも 1958年から1960年頃に使われただけで,
すぐに [M5] のタイプに置き換えられました。
これは [M3] の盤のレーベルです。
一見したところ [M1] と大きな違いはなさそうにも思えますが, ステレオ盤の [S3] と同じく, レーベルの紙の色が微妙に異なります。
- 濃灰色っぽいレーベル ([S3] と同じか,更に濃緑色がかっている?)
- 全体的に太めの丸っぽい自体に変更
- 左に「Side 1」,下に「MG-20449」
- 溝あり
最後にこれが [M4] の盤のレーベルです。
[M3] と同じく,レーベルの紙の色が微妙に異なる他, 字体にも [S4] の様な変化が見られ,[S4] との近似性を強く感じるデザインです。
- 濃灰色っぽいレーベル ([S3] と同じ)
- 全体的に狭めの字体に変更
- 左に「MG-20449-A Side 1」
- 溝なし (段差あり)
まだ所有には至っていませんが,とある方からの情報提供ということで, この [M5] の盤のレーベルも掲載しておきます (写真提供感謝!)。
基本的には [M2] と同じで, 楕円ロゴが小さいもの (下部に RECORD 表記なし) に変更されている程度です。 溝もあります。 [M2] の直系の後継デザインでもあります。
ちなみに,このデザインは 1961年頃 (MG-20600 以降) から頻繁に見られる様になる
タイプで,それ以前の盤ではほとんどお目にかかることはありません。
マトリクス刻印
さて,これらモノーラル盤のマトリクス刻印はどうなっているでしょうか?
ステレオ盤の時には,全盤のスキャンを掲載しましたが, ここでは割愛して表記だけにとどめます。
また,[M5] は実物を確認していないので,ここでは触れません。
A面:
MG 20449A MS1
FF
B面:
MG 20449B MS1
FF
赤色が刻印,水色が手書きです (以下同様)
この [M1] と [M2] は [S1] [S2] と同じパターンですから,
これが最初期のものと考えられます。
ステレオ盤 ([S1] と [S2],さらにもう 2枚現物を確認した盤) では
全て MS5 だったのに,今度は 2枚とも MS1。
単なる偶然とは思えないのですが... ともあれ次いってみましょう。
A面:
MGC 20449A MS3
BH II
B面:
MGC 20449B MS2
BH III
この [M3] は [S3] に呼応するパターンですね。
今回も目につくのが,MG と 20449 の空白の間に
C が挿入されているマトリクス刻印です。
手書き部分は若干異なり,II の他に BH という表記も増えています。 恐らく,前者がスタンパー番号かマザー番号を, 後者がエンジニアのイニシャルを,それぞれ表しているのではないかと思いますが, 現時点ではあくまで推測の域をでません。 同じ特徴を持った他の盤を多く見付けて比較検討するしかないでしょう。
A面:
MGC 20449A MS4
III-IIII
B面:
MGC 20449B MS2
BH III-III
最後に [M4] のものです。 あきらかに [M3] と同じタイプのマトリクスで, しかも更に後のものであることが伺えます。
今回の手書き部分は III-IIII という風に書かれています。 これは恐らく,マザー番号が III,スタンパー番号が IIII を表しているのではないかと思いますが,やはりこれも推測の域をでません。
インナースリーブ
不思議なもので,ステレオ盤では4枚中 3枚に付属していたインナースリーブが, 今回入手したモノーラル盤に関しては 1枚 [M4] にだけ. しかもなぜか Columbia レーベルのスリーブです . . . . あくまで,インナースリーブは最もあてにならない付属品ですので, まあよしとしましょう。
(2004.11.17:追加情報 → 次ページ先頭の欄参照)
比較試聴
さて,ステレオ盤の時と同じく, 比較試聴だけで全てを判断することは危険 だということをしっかり肝に命じつつ、 今まで記載してきた客観的事実と照し合せながら,比較試聴を行ってみましょう。
[M1] と [M2] は,全く同じマトリクス情報を持つだけあって, 共に実に気持ちの良いモノーラル録音です。 [S1] の時と同様,上も下も充分に伸び切って,全ての音源がはっきりと聴き分けられ かつガッツのある音に仕上っています。若干,3トラックマスターからカッティング マスターにダウンミキシングする際に位相が変になっている箇所も聴きとれますが (これは全ての盤に共通),全体的にはまあ良い方かと思いました。 もちろん,Mercury 録音の真価はこんなもんではありません。 Living Presence に限らず,もっと凄い音を出してくれるモノーラル盤はわんさかとあります。 あくまで,この元録音としては,という括弧つきということで。
[M3] もそんなに悪くはありません。 ステレオ盤程音質差が激しくはないようで,高音域はきちんと伸びており ハイハットの余韻も比較的綺麗に響いています。 ただ,若干高音を強調した感じの音にはなっている様です。 明らかに違う点は低音域で,Paul Chambers のベースの聴こえかたが かなり異なります。 [M1] や [M2] では聴かれた A面 2曲目イントロ部分のベースの太い響きが [M3] では随分後退してしまっています。続く Cannonball がテーマ部を奏でる バックのベースもあまりはっきりとは聴こえなくなっています。
[M4] も [M3] と同様で,音質の傾向自体はほとんど変わりません。
以上の比較試聴からは,今回の 4枚の中では [M1] 及び [M2] が最も初期に
プレスされた盤である可能性が高いと考えられます。
ステレオの時の SR から SRC になった途端に
音質ががらりと変わった程ではありませんが,
モノーラルでも MG と MGC の間で
やはり有意な差が認められたということからも,
両者が別工場でプレスされた (あるいは別エンジニアがカッティングを
行った) 可能性は高そうです。
また,現時点では未入手の [M5] タイプも頑張って探してみようと思います。
ところで,今回比較試聴した 4枚の盤に共通することですが, A面 1曲目のイントロ部最初の数小節で,ピッチがゆらいでいます。 これはステレオ盤には聴かれないものですから, 恐らくはモノーラル盤をカッティングするためのダウンミックスマスター作成の 時点で起こった事故 (例えば,オープンリールに手があたったとか?) がそのまま引き継がれているのではないかと思われます。