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A Few Facts About EmArcy Label, Pt.2 (Page 5 of 7)

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目次

EmArcy 36000 Series: Jacket Cover Variations and Transition

続いて、ジャケット の変遷について記します。もっとも知られているのは、ジャケット裏の印刷色についてでしょう。


EmArcy MG-36002 Back Cover
(“Blue-Back” Cover)

26000 シリーズ(10インチLP)の頃から続いていた ブルーバック(ジャケット裏が濃青の一色刷り)は、36000 シリーズ(12インチLP)でも続きます。実際には、1956年2月頃までの新譜まではブルーバックでのリリースが続いていました。


EmArcy MG-36057 Back Cover
(“Black-Back” Cover)

その後(上にも書いた、表ジャケットカラー化によるコスト制約などの事情からか)黒一色の印刷に切り替わり、レーベル終焉まで続きます。

ブルーバックがオリジナルの具体的な番号は、MG-36000〜MG-36047、および MG-36056 の49枚です。MG-36048〜MG-36055 の8枚(MG-36054 は未発表)および MG-36071 は、Mercury が買収した Keynote / National 音源の体系的リイシューシリーズ「The Jazz Greats」にあてられており、これら 8枚はカタログ番号の割当が早々と行われたものの、実際のリリースは1956年12月〜1957年1月頃まで行われませんでしたので、その頃にはブルーバックジャケットは廃止されていたということになります。


ジャケットの形状

ジャケットの作りは、そのほとんどがいわゆるA式、裏巻き(裏ジャケットの紙を厚手のボール紙に巻いて三辺を回り込み、表ジャケの紙を貼り付けるタイプ)で、表は貼付けでラミネートコーティングが施されています(中ドラマーに変更されたのち、1958年頃のリリースからラミネートコーティングが省略される盤が増えてきます)。

1958年12月〜1959年1月頃、EmArcy の自然消滅、Mercury への吸収が行われた時期からは、A式、表巻き(表ジャケットの紙を三辺に回り込み、裏ジャケの紙を貼り付けるタイプ)へと変わり、やはり表側がラミネートコーティングとなります(セカンドイシュー以降、ラミネートコーティングなしへと切り替わっていきます)。


EmArcy MG-36005 Back Cover Corner     EmArcy MG-36005 Front Cover Corner
(Early type: Laminated Front Cover, Back Cover wrapped around the top, bottom and spine)

EmArcy MG-36135 Back Cover Corner     EmArcy MG-36135 Front Cover Corner
(Late type: Laminated Front Cover wrapped around the top, bottom and spine)

表巻き、ラミネートコーティングありがオリジナルなのは、MG-36122、MG-36127、MG-36135、MG-36138、MG-36139、MG-36142〜MG-36150(MG-36149 は未発売)、MG-36162 となります。それ以外は、表がラミネートコーティングあり(1958年頃よりラミネートコーティングなし)、裏巻きジャケットとなります。

このジャケット表のラミネートコーティングですが、一部の EmArcy では、ラミネートコーティング内に気泡のようなものができ、ジャケット表が白濁したかのようになっているものがあります。これは、1956年10月〜12月頃に製造されたジャケットに特に顕著で、恐らくラミネートコーティングを貼付ける際に使われた接着剤が不良であった為と考えられます。この時期にオリジナル盤がリリースされたと推測される MG-36068、MG-36073、MG-36075、MG-36076 などは、現存するオリジナル盤のほとんどが、ジャケット表が不良の状態という、コレクターにとっては非常に悩ましい現実があります(この時期にセカンドイシューが行われたと思われる盤のジャケットも同様です)。


Mercury MG-20116 Front Cover Foginess
(EmArcy ではないですが、ラミネートコーティング直下の白濁が顕著な一例)

ジャケット上のレーベルロゴの変遷

ジャケット表や裏に印刷されている、EmArcy のロゴが変遷しているという事実は、意外に注目されていない点かもしれません。EmArcy は、比較的頻繁にジャケットのロゴデザインを変更していたため、このロゴの変遷を追うことにより、実際のリリース順(正確には、実際にジャケットが印刷された順序)を垣間みることができ、参考になります。

ただし、10インチLPの12インチ化の場合には、古いロゴがそのまま使われていたり、ジャケット表は古いロゴのままでジャケット裏により新しいロゴが使われていたり、といった例外も見受けられますので、これだけでリリース順を特定することはできません。やはりいつものように、レーベルや刻印の特徴、カタログや雑誌広告・記事とあわせて、総合的に判断する必要があります。

ここでは、ジャケット表のロゴに注目してその変遷を追っていきましょう。リリース順(正確には印刷順)が、いかにカタログ番号順どおりでなかったかが分かるかと思います。




EmArcy MG-26003 Logo on Front Cover
(Logo Type A: Big Drummer with LONG 33 1/3 PLAY)

26000シリーズ(10インチLP)開始直後、最も初期に現れるロゴがこれで、レーベルの “Big Drummer” をそのままモチーフにしたものとなります。ロゴの上に “LONG 33 1/3 PLAY” が追加され、下にカタログ番号が記されているのが一般的です。

このロゴが使われているのは 26000 シリーズ(10インチLP)のみで、 MG-26000、MG-26001、MG-26003、MG-26004、MG-26006〜MG-26012 の11枚です。




EmArcy MG-26013 Logo on Front Cover
(Logo Type B: Big Drummer with Large Oval)

次のパターンは、“Big Drummer” の上の “LONG 33 1/3 PLAY” が消され、ロゴ全体を楕円で囲むパターンです。

このロゴが使われているのは 26000 シリーズ(10インチLP)のみで、 MG-26005、MG-26013、MG-26014、MG-26016、MG-26017 の4枚だけです。




EmArcy MG-26019 Logo on Front Cover
(Logo Type C: EmArcy Oval Logo with Drummer)

次のパターンになると、楕円の中に “EmArcy” と表記され、その下にやや小振りになったドラマーが付加されているタイプになります。

このロゴが使われているのは、 10インチは MG-26002、MG-26015、MG-26019〜MG-26023、MG-26025〜MG-26028、MG-26030〜MG-26033、MG-26038、MG-26040〜MG-26043 の20枚、12インチは MG-36001 の1枚のみです。

MG-26032 は、当時よく売れたためなのか、このタイプCのほか、タイプEのロゴが印刷されたジャケットも確認されています(現在私の手元にあるのはこちらのタイプ)。タイプCの方が先に印刷されたと考えるのが妥当でしょうから、ジャケット的にはそちらがオリジナルということになります。ただし、このように同じジャケットでロゴだけ差し替えられた例というのは、他にはほとんど見受けられません(ジャケット全体が変更になり、その際にロゴも変更された、という例は多くあります)。




EmArcy MG-26024 Logo on Front Cover
(Logo Type D: EmArcy Records Oval Logo with Drummer)

続くパターンでは、楕円ロゴ内の “EmArcy” が、“EmArcy RECORDS” と変化しています。

このロゴが使われているのは、 10インチは MG-26018、MG-26024、MG-26034、MG-26035、MG-26037、MG-26039、MG-26044、MG-26045 の8枚、12インチは MG-36000、MG-36002 の2枚だけです。




EmArcy MG-26032 Logo on Front Cover
(Logo Type E: EmArcy Records Double Oval Logo with Drummer)

そして1955年3月〜4月頃から現れたこのタイプが、恐らく最もお馴染みのロゴでしょう。上のタイプDの楕円ロゴの外側が、二重線で描かれています。

このロゴが使われているのは、 10インチでは MG-26029、MG-26036、MG-26046〜MG-26048 の5枚(と MG-26032 のセカンドイシュー)、12インチは MG-36003〜MG-36018、MG-36022、MG-36023、MG-26025〜MG-36029、MG-36031〜MG-36033、MG-36036、MG-36038 の28枚です。




EmArcy MG-36024 Logo on Front Cover
(Logo Type F: EmArcy Drummer Logo in Double Oval, CUSTOM HIGH FIDELITY)

続いて 1955年10月頃、縁に “CUSTOM HIGH FIDELITY” と書かれた楕円に “EmArcy” とドラマーロゴが入ったロゴに変わります。本家 Mercury レーベルでもこの時期、似たデザインのロゴに変わっていました。

このロゴが使われているのは、12インチで MG-36019〜MG-36021、MG-36024、MG-36030、MG-36034、MG-36035、MG-36037、MG-36039〜MG-36047、MG-36056 の18枚です。




EmArcy MG-36057 Logo on Front Cover
(Logo Type G: EmArcy HIGH FIDELITY JAZZ on left, Mercury Oval Logo on right)

1956年2月頃、ちょうどブルーバックが終わり、黒印刷の裏ジャケットに変更されるタイミングで、ロゴも大幅に変更されます。左側に &lduo;EmArcy HIGH FIDELITY JAZZ”、右に “Mercury Records” 楕円ロゴとカタログ番号が配置されたものです。

このロゴが使われているのは、12インチで MG-36048〜MG-36055(MG-36054 は未発売)、MG-36057〜MG-36104(MG-36092、MG-36095 は未発売)、MG-36106〜MG-36117、MG-36120、MG-36123、MG-36124 の68枚と、EmArcy の全リリース中で最も多く使われたロゴということになります。

ただ、MG-36123、MG-36124 の2枚は、ジャケット裏では次のタイプHが使われており、ロゴ変更過渡期ということかもしれません。




EmArcy MG-36105 Logo on Front Cover
(Logo Type H: EmArcy HIGH FIDELITY JAZZ on left, Mercury REG. U.S. PAT. OFF. Oval Logo on right)

1958年4月頃に現れた新しいロゴは、全体を囲む長方形の枠が消滅し、長方形と楕円ロゴの組み合わせとなっています。

このロゴが使われているのは、12インチで MG-36105、MG-36119、MG-36125、MG-36126、MG-36130、MG-36131、MG-36132 の7枚です。上述の通り、MG-36123、MG-36124 の2枚は、ジャケット表はタイプGですが、裏にこのロゴが現れています。




EmArcy MG-36134 Logo on Front Cover
(Logo Type I: EmArcy HIGH FIDELITY on left, Mercury Oval Logo on right, ruled lines)

タイプHのあとほどなく現れた新しいロゴは、再び全体が長方形で囲まれたパターンですが、縦と横に罫線のようなものが追加されているのが特徴的です。

このロゴが使われているのは、12インチで MG-36116、MG-36118、MG-36121、MG-36128、MG-36129、MG-36133、MG-36134、MG-36136、MG-36137、MG-36138、MG-36140、MG-36141 の12枚です。




EmArcy MG-36122 Logo on Front Cover
(Logo Type J: CUSTOM HIGH FIDELITY on left, Mercury Oval Logo on right, ruled lines)

そして、1958年11月または12月リリースの MG-36122 のロゴから、ついに “EmArcy” の表記が消えます。裏ジャケットにはタイプIのロゴがあり、「EmArcy MG 36122」という表記もありますが、表ジャケットの最上部には「Mercury MG 36122」と印刷されており、ちょうど EmArcy レーベル自然消滅時期の最中にリリースされたことが伺えます。

このロゴが使われたのは MG-36122 たった1枚だけです。




EmArcy MG-36143 Logo on Front Cover
(Logo Type K: Mercury Oval Logo)

そして、1958年12月または1959年1月頃に、ついに EmArcy がロゴから消滅し、通常の Mercury 楕円ロゴのみとなります。

このロゴが使われたのは、MG-36127、MG-36135、MG-36139、MG-36142〜MG-36150(MG-36149 は未発売)の11枚です。


EmArcy MG-36143 Front Cover Bottom

裏ジャケットからも “EmArcy” の表記は消えます。ジャケットも、従来は表が張り付けで裏が巻きだったものが、先行していたステレオ盤同様、表が巻きで裏が張り付けに変わっています。EmArcy の名前は、かろうじて表ジャケット下の「HIGH FIDELITY」部分に現れるのみとなっています。




カンパニースリーブ

1956年頃から Mercury 傘下の LP リリースで一般的になってきた カンパニースリーブ ですが、EmArcy 専用のものは 2種類ほど確認されています。


EmArcy MG-36062 Inner Sleeve     EmArcy MG-36062 Inner Sleeve

1956年前半に使用が開始されたと思われるこのカンパニースリーブには、MG-36000〜MG-36065 のカタログが掲載されています。Mercury、および Wing(廉価レーベルではない方)でも、同じ時期に同様の青印刷のカンパニースリーブが使われていました。

つまり、1954年〜1955年にリリースされているはずの MG-36000〜MG-36040 あたりの盤で、このカンパニースリーブが付属しているものは、セカンドイシューの可能性が高いことになります(レコードやジャケット、スリーブの組み合わせは、必ずしも新品当時から一緒であるという保証がないため、あくまでも参考としてですが)。


EmArcy MG-36121 Inner Sleeve     EmArcy MG-36121 Inner Sleeve

1958年初頭から使用が開始されたと思われるこのカンパニースリーブには、 「FOR A NEW SOUND IN JAZZ IT'S EmArcy」と銘打たれた表側には MG-36042, MG-36047, MG-36056, MG-36058, MG-36060, MG-36063, MG-36065, MG-36067, MG-36070, MG-36074, MG-36082, MG-36086 が掲載され、その右側の「NEW RELEASES」(当時の新譜)として MG-36087, MG-36109, MG-36110, MG-36115, MG-36117, MG-36123, MG-36124, MG-36125, MG-36130 がラインアップされています。 この「NEW RELEASES」にラインアップされている盤の多くは、 各種雑誌の1958年3月頃のレビューに掲載されているのを確認できます。

「The Best In Jazz Can Be Heard On EMARCY」と書かれた裏面には、 MG-36005, MG-36034, MG-36048, MG-36049, MG-36050, MG-36051, MG-36052, MG-36053, MG-36055, MG-36069, MG-36071, MG-36073, MG-36076, MG-36078, MG-36080, MG-36084, MG-36085, MG-36089, MG-36094, MG-36097, MG-36098, MG-36100, MG-36108, MG-36111 が掲載されています。


その後、EmArcy 専用のカンパニースリーブは作られず、1959年頃から Mercury レーベルの統一カンパニースリーブが流用されます。




ここまでのまとめ

EmArcy 36000 シリーズ(12インチLP)- ジャケットの特徴
ブルーバック(裏ジャケットが濃青インク印刷)は、1956年初頭までに発売された盤に限られる
10インチはすべての盤(MG-26000〜MG-26048)がブルーバック
12インチは MG-36000〜MG-36047、MG-36056 の初盤がブルーバック
初期〜中期はすべてA式、裏巻き、表ラミネートコーティングタイプ。
 ただし1958年頃から、表ラミネートコーティングなしが増えてくる
Mercury 楕円ロゴ登場前後にA式、表巻き、表ラミネートコーティングタイプに変更
表巻き、表ラミネートコーティングがオリジナルなのは
 MG-36122、MG-36127、MG-36135、MG-36138、MG-36139、
 MG-36142〜MG-36150(MG-36149 は未発売)、MG-36162
ロゴの変遷
ジャケット表・裏に現れる EmArcy ロゴの変遷を追うと、おおよそのリリース順推測の参考になる
カンパニースリーブ
EmArcy 専用のカンパニースリーブは2種類のみ存在、それ以外の盤は Mercury のスリーブが使われていたことが多い



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