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A Few Facts About EmArcy Label, Pt.2 (Page 4 of 7)
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目次
EmArcy 36000 Series (12-inch LP) Variationsさて、ここからは、コレクターの皆さんが最も興味を持っているであろう、12インチLP(36000番台)です。 前ページ のシングル盤や10インチLPとは異なり、オリジナル盤判定は若干ややこしいですので、若干長めになってしまいますがご了承下さい。レーベルの変遷、ジャケットの変遷、マトリクスの変遷を概説したのち、最後に、現時点で最も正しいと考えられるオリジナル盤判定基準を一覧の形で記します(このページで記した内容と反する実例をお持ちの方は、是非ご一報下さい)。 本稿で何度も書いている通り、カタログ番号順と実際のリリース順は、必ずしも一致しないことに留意して下さい。特に EmArcy は、番号だけ先に割り振っておいてリリース順はバラバラだったり、特定の盤だけリリースが遅れて後から出る、ということが頻繁に起こっています。 なお、この時代の EmArcy レーベルにも非常に縁の深い Wing レーベル については、次回(後編)で詳しく解説する予定です。 EmArcy 36000 Series: Label Variations and Transitionまずは レーベル の変遷から記します。 実際に レーベルそのものが印刷された時系列での変化 は、以下の通りとなります。
(MG-36162 のみ例外です。これは後述します)。 (Blue EmArcy “Big Drummer”, “A High Fidelity Recording”)
「大ドラマー」(銀縁なし)がオリジナルの盤(MG-36000〜MG-360002)は、オリジナルはフラットエッジです。セカンドプレスではグルーヴガード盤になります。また、サードプレス以降は「小ドラマー」(銀縁なし)、「Mercury 楕円ロゴ」と移行していきます。銀縁なしで始まった盤は、セカンドプレス以降も銀縁ありは存在しません。
(Blue EmArcy “Big Drummer” with Silver Rim, “A High Fidelity Recording”) 「大ドラマー銀縁あり」がオリジナルの盤(MG-36003〜MG36012、ただし MG-36010 を除く)は、オリジナルはグルーヴガード盤です。セカンドプレス以降は「小ドラマー銀縁あり」「小ドラマー」(銀縁なし)、「Mercury 楕円ロゴ」と移行していきます。小ドラマー銀縁ありはあまり数がないようです。 (Blue EmArcy “Small Drummer” with Silver Rim, “A High Fidelity Recording”) 「小ドラマー銀縁あり」がオリジナルの盤(MG-36010 および MG-36013〜MG-36047、ただし MG-36028、MG-36029、MG-36040 を除く)は、オリジナルはグルーヴガード盤です。セカンドプレス以降は「小ドラマー」(銀縁なし)、「Mercury 楕円ロゴ」と移行していきます。 (Blue EmArcy “Small Drummer”, “A High Fidelity Recording”) (Blue EmArcy “Small Drummer”, “A Custom High Fidelity Recording”) 「小ドラマー」(銀縁なし)がオリジナルの盤(MG-36028、MG-36029、MG-36040、MG-36048〜MG-36104 および MG-36162、ただし MG-36054、MG-36092、MG-36095 は未発表)は、オリジナルはグルーヴガード盤です。続いて「Mercury 楕円ロゴ」へと移行します。 (Blue EmArcy “Medium Drummer”, “A Custom High Fidelity Recording”) 「中ドラマー」がオリジナルの盤(MG-36105〜MG-36141、ただし MG-36127、MG-36135、MG-36139 を除く)は、オリジナルはグルーヴガード盤です。続いて「Mercury 楕円ロゴ」へと移行します。その多くは、そのままのカタログ番号でプレスされず、Mercury 20000 番台へ移されてのセカンドイシューとなります。 (Blue Mercury “EmArcy Jazz” Oval Logo, “A Custom High Fidelity Recording”) 「Mercury 楕円ロゴ」(EmArcy Jazz)がオリジナルの盤(MG-36127、MG-36135、MG-36139、MG-36142〜MG-36148、MG-36150)は、オリジナルはグルーヴガード盤です。この多くも、のちに Mercury 20000 番台へと移されてセカンドイシューが行われます。 銀縁(Silver Rim)とはなんだったのかオリジナル盤で銀縁が登場するのは1955年2月頃から1955年12月あるいは1956年1月頃までにリリースされた盤に限られます。それまでは全て 自社工場プレス のフラットエッジ盤で、銀縁登場のタイミングから RCA Indy 工場プレス のグルーヴガード盤に変わります。そこで、レーベルの外周にわざわざ銀縁印刷を追加したのは、グルーヴガード盤に切り替わったことを強調するため、と考えるのが自然ではないかと考えます(盤の最外周が盛り上がっている=銀色に縁取ってみた、という感じで)。 銀縁を印刷するためには、銀色のインクをより多く必要とします。1956年以降銀縁が消滅したのは、すでにグルーヴガード盤が市場で一般的になったため、あえて強調する必要がなくなったこと、そして、コストの問題から余計なインク消費を削減するため、と考えられます。 Billboard 誌の 1956年1月21日号19ページ に、とても興味深い記事が掲載されています。「Mercury Will Dress Albums In Four Colors」というタイトルのその記事では、より市場にアピールするために、Mercury・EmArcy・Wing の LP アルバムジャケット表紙を、従来の単色印刷から、4色刷りに変更することを発表したと書かれています。同時に、単色刷りの場合のコスト、4色刷りの場合のコストについても細かく書かれており、コストは増大するが、その分たくさん売れば十分ペイできるはず、という Art Talmage 氏のコメントまで掲載されています。これらのことも、余計なインク消費を抑え、レーベル印刷代を節約しようとした理由のひとつではないか、と考えることができます(実際はどうだったのかは、当時それらの作業に携わっていた方々の裏がとれたわけではありませんので、あくまで推測ですが)。 銀縁(Silver Rim)ありが極端に少ない盤過去10年に渡り、中古レコード店での現物確認や、オンラインオークションに掲載される写真を飽きもせず大量にチェックし続けてきた結果、銀縁ありがオリジナルの盤の中には、銀縁ありに遭遇する確率が極端に低い盤があります。 もともと大して売れずに、銀縁ありの初盤が販売されただけで再発されなかったレコードは、現存する盤の全てが銀縁あり、ということになります(例えば MG-36019 など)。銀縁あり、のあとに銀縁なしでは再発されず、Mercury 楕円ロゴでの再発が確認されている盤もあります(例えば MG-36024 など)。しかし、それらの盤は、銀縁ありに遭遇する確率も低くはありません。 現在市場で流通している中古盤のなかで、銀縁ありを見つけることが非常に難しい(銀縁ありは存在しているが、なかなか遭遇できない)盤というのがあります。それらは、銀縁ありレーベルの印刷をやめた 1956年前半頃に初盤がリリースされたと思われるレコードに顕著です。またしても、カタログ番号順とリリース順の乖離が見られ、興味深いところです。 私が既に入手している盤、未入手の盤を含め、銀縁ありが確認できているけれども、滅多に銀縁ありにお目にかかれないのは、以下のような盤です。
また、私が過去10年間大量の盤を見てきたものの、未だに銀縁ありの盤に遭遇していない MG-36028、MG-36029、MG-36040 についても、銀縁ありが絶対に存在しない、という確証を得たわけではありません。 いずれにせよ、銀縁ありの存在が確認できているものは、それが間違いなくオリジナルの初盤なので、ロックやポピュラーの様に大量生産されていたわけではない1950年代のジャズLPでは、現存数は少ないのが実情です。 大ドラマーから小ドラマーに移行したのはなぜか大ドラマーの場合、レーベルの上半分がドラマーロゴで占められることになります。つまり、楽曲名とそのクレジット、参加ミュージシャン名一覧を印刷するスペースがレーベル下部のみに限られます。10インチ LP の場合は、収録楽曲自体が少ないのでそれでもなんとかなったのでしょうが、12インチでは楽曲も増え、印刷スペースに相当苦労している様が伺えます。そこで、1955年5月〜6月頃に、ドラマーロゴを小型化し、生まれたスペースをパーソネルなどの表記に有効活用しようとした、と考えられます。 小ドラマーから中ドラマーに移行したタイミング1957年6月頃に、小ドラマーから中ドラマーに変更されますが、このタイミングで、EmArcy のモノーラル盤のプレス工場が RCA Indy 工場 から再び 別工場 (恐らく MGM Bloomfield 工場)に移されます。つまり、レーベルデザイン変更は、プレス工場の変更にあわせたものであったと考えるのが自然でしょう。レーベル上のタイプセットも変わっていることから、同じタイミングでレーベル印刷工場も変更されたと考えられます。 中ドラマーから Mercury 楕円ロゴに移行したタイミング1958年3月に、Bob Shad が EmArcy のヘッドを退き、Down Beat 誌のエディタであった Jack Tracy がそのあとを引き継ぎます(Billboard 誌1958年2月24号2ページ)が、この頃から EmArcy としてのリリースはペースダウンしてきます。 また、1958年といえば、ステレオLPリリース開始の年ですが、すでにクラシックでは1955年よりステレオ録音本格開始、ジャズ・ポピュラーでも1955年より一部で実験的録音開始(1956年〜1957年頃より主に西海岸録音で本格開始)、ステレオLPリリース前にもオープンリールでステレオ録音をリリースしていたなど、ステレオ録音およびステレオLPに並々ならぬ力を注いでいた Mercury は、各傍系レーベルごとにステレオ盤を出すよりは Mercury から出す方がよりアピールできると考えたのか、EmArcy のステレオ盤も Mercury レーベルから SR-80000 番台(Mercury “EmArcy Jazz” ライン)としてリリースされます。その流れで従来のモノーラル盤も、1958年12月〜1959年初め頃には Mercury レーベルの EmArcy Jazz シリーズという位置づけに変わった、と考えられます。 36000番台が楕円ロゴに移行したちょうどその頃、プレス工場が再び変更になり、Mercury 傘下のほとんどの LP レコードが Richmond 工場(盤の特徴から、別工場でのプレスも存在していたと考えられます。現在調査中です)でのプレスとなります。レーベルが変更された背景には、このプレス工場変更も関係していたとも考えられます。 第一次 EmArcy 終焉と MG-36162Bob Shad のあとを引き継いだ Jack Tracy も、1959年6月22日をもって Chess レコードへと移籍しました(Billboard 誌1959年6月8日号4ページ)。ご存知の通り、その後 Argo レーベルでのジャズ録音で活躍することになります。よって、1959年後半あたりで、オリジナルの EmArcy の新規リリースは終焉を迎えます。戦後直後に誕生したレーベルの中では圧倒的な存在感を示し、ビッグマイナーレーベル、あるいは新興メジャーレーベルとして活躍してきた Mercury でしたが、Bob Shad に続き Jack Tracy も失った上に、会社のポリシーの変更のために傍系レーベルを整理したのか、大ヒットが見込めない Jazz に専門傍系レーベルを維持することを断念したと思われます。 そしてカタログ番号的には EmArcy 36000 番台の最後となる MG-36162 (1959年3月録音)がリリースされたのが 1959年8月でした。すでに EmArcy レーベルそのものは自然消滅し、36000 番台ではあるものの Mercury レーベルからのリリースとなった MG-36162 でしたが、この最後の盤だけどういうわけか小ドラマーが使われています。恐らく、カタログ番号的に最後の盤なので、それを見送るようにあえて昔のレーベルデザインを使ったのではないかと考えられます。プレス工場も、ステレオ盤と同じ、RCA Indy プラントであるのが興味深いです。 なお、MG-36162 / SR-80045 が新譜紹介コーナー掲載されているのは Billboard 誌の1959年8月31日号ですが、同じ号にやはり新譜として MG-36127 / SR-80019 (Max Roach 4 Plays Charlie Parker) と MG-36147 / SR-80022 (Double Shot Of Joe Saye) も掲載されています。MG-36127 は、番号的には中ドラマーでしかるべきなのですが、やはり「実際のリリース順はカタログ番号順とは必ずしも一致しない」典型例ということで、この時期にリリースされていることから、Mercury 楕円ロゴレーベルであったことの証明といえるでしょう。同様に、中ドラマーレーベルの存在が確認されていない MG-36135 と MG-36139 も、1959年に入ってからのリリース、ということになりそうです。 ここまでのまとめ
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