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A Few Facts About EmArcy Label, Pt.2 (Page 6 of 7)
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目次
EmArcy 36000 Series: Catalogue & Brouchures前編 でも紹介した、当時リリースされたパンフレットについて、再度ここで触れてみましょう。 前編でも載せた、最初のパンフレット。MG-26000〜MG-26045、MG-36000〜MG-36002、EP-1-6000〜EP-1-6088(EP-1-6026 のみ未掲載)が掲載されているものです。 今までの広告・レビュー類、レーベルパターン、ジャケットやロゴの特徴からも、このパンフレットが1954年12月末から1955年1月に発行されたものであることが再確認できました。
前編でも書いた通り、ここに掲載されている盤は全て
「(1) 大ドラマー銀縁なしレーベル」
「(2) フラットエッジ盤」
「(3) ブルーバック」
「(4) RCA Indy プレス以前 (自社工場プレス)」
の特徴を持つ盤ばかりです。
そして続く1955年6月発行のパンフレット。MG-26000〜MG-26048、MG-36000〜MG-36012(MG-36010 のみ未掲載)、EP-1-6000〜EP-1-6125(EP-1-6026、EP-1-6103、EP-1-6114〜EP-1-6117 が未掲載)が掲載されているものです。
前編でも書いた通り、最初のパンフレットに載っていた盤以外、
つまり今回のパンフレットで新規掲載された盤は全て
「(1) 大ドラマー銀縁ありレーベル」
「(2) グルーヴガード盤」
「(3) ブルーバック」
「(4) RCA Indy プレス」
の特徴を持つ盤ばかりです。
つまり、それらの盤については、1955年1月〜1955年6月にリリース開始されたことが再確認されました。
EmArcy 36000 Series: Deadwax Matrix Variationsレコードの出自を克明に記す、マトリクス刻印 のパターンの時系列での変遷は、「YMG 刻印、自社プレス」「YMG 刻印、RCA Indy プレス、MF」「MG 刻印、RCA Indy プレス、MF」「MG 刻印、RCA Indy プレス、MS」「手書き、(恐らく)MGM Bloomfield プレス」「手書きまたは一直線 MG 刻印、Richmond プレス」となります。 傍系レーベルも含め、Mercury 全体でいうと1951年〜1954年頃のほとんどの盤で見受けられる、自社工場プレスのパターンがこれです(こちらも参照)。中くらいの大きさの刻印で YMG で始まるマトリクスとなります。盤はフラットエッジです。 EmArcy では、MG-26000〜MG-26045、MG-36000〜MG-36002 のオリジナル盤がこのパターンになります。 このタイプのプレスは、いかにも当時のレコードらしく、レンジを欲張らないものの力強い再生音を聴かせるものです。しかし前述した通り、プレス品質に問題があり、盤の表面が白濁したように見え、サーフェスノイズが多めの盤が目立つのが残念です。 1955年初頭に現れたパターンで、RCA Indy 工場(RCA Victor Indianapolis 工場)プレスの特徴である「MF1」(1 がラッカー番号)「A1」という部分(A がマザー番号、1がスタンパー番号)と、「I」という部分(RCA Indy 工場プレスの証)があります(こちらも参照)。初期はこのように YMG で始まるマトリクスです。盤はグルーヴガードとなります。 EmArcy では MG-36003 にはじまり、カタログ番号的には MG-36038 で最後に確認されるパターンとなります。ただし、前述した通り、カタログ番号順とリリース順は一致しませんので、この間であっても YMG でない盤は多数あります。また、MG-36037 のように、A面だけ YMG、B面は次の MG、というパターンも存在します。 YMG 刻印の自社工場プレスと同様、レンジを欲張らないものの、力強い再生音を聴かせてくれます。高品質で知られた Indy 工場になったことにより、サーフェスノイズも少なく、当時のオリジナル盤らしい音が聴けます。ただ、この時代の YMG 刻印プレスについては、高音域が妙に強調されているきらいがあり、かなりうるさく感じることも事実です。のちにオリジナルマスターからストレートリイシューされた再発LP/CDの帯域分布と聴き比べるとそれは瞭然です。 この高音域が強調されたような音について、RIAA カーブではないのでは、という意見が聞かれることがありますが、この時期は間違いなく RIAA カーブです(Mercury は、1945年から1953年まで、一貫して AES カーブを採用していましたので、もし AES カーブであるとしたら、逆に高域が減衰しているはずです)。むしろ、当時の家庭用再生機器にあわせて高音域を強調したのかも、という推測の方が的を得ているように思えます。 1955年後半に現れたパターンで、マトリクス刻印が小さくなり、先頭が YMG から MG に変わります。ラッカー番号、マザー番号、スタンパー番号の特徴は上と同じです。 1956年末頃から、「MF」の部分が「MS」に変更されます。前者は「Miller cutterhead at Fine Sound」の略(Mercury の主にクラシックでレコーディングを担当していた C.R. Fine のことで、Reeves Sound Studio から独立してから Fine Sound Studio を構えて Mercury のあらゆる録音・カッティングを行っていた。Miller は、当時使っていたカッティングマシーンのカッターヘッドのメーカー名)、後者は「Mercury Sound Studio」の略(Mercury がニューヨークに構えた自社のミキシング・カッティングスタジオ)を表します。この省略形の意味するところについては、故 C.R. Fine 氏の息子、Tom Fine さんに教えて頂きました。 カッティング技術、プレス技術ともにもっとも安定しているのがこの MG 刻印、Indy 工場プレスの時期といっていいでしょう。YMG で聴かれた不自然な高音域強調もなく、当時としては十分な帯域レンジを確保、鮮度も良く、もっとも安心して当時の音を楽しめるものです。 ただ、元となるカッティングマスターテープが不良ではどうしようもありません。よく知られているのは MG-36025 (Joe Gordon) と MG-36036 (Brown=Roach) で、10インチLP用マスターからトランスファーする際にテープレコーダーのアジマスずれでもあったのか、オリジナル盤の再生音はかなりひどいものです(ただし、10インチLP に含まれていなかった追加トラックについては、いい音がしています)。 1958年よりリリース開始されたステレオ盤(SR-80000 番台)の初期もこのパターンで、「MS」の部分は「FR」となります。これは「Fine Recording」を意味し、やはり C.R. Fine 氏のスタジオでカッティングされ RCA Indy 工場でプレスされたものです。 この時代のステレオ盤の製造品質がもっとも優れていたのは、Living Presence シリーズの人気ぶりからも伺えます。録音スタッフとテクニックが優れていたクラシックの Living Presence シリーズでは、もう鳥肌ものの再生音が聴ける盤が目白押しです。EmArcy や Mercury のジャズ・ポピュラーでは、主に西海岸録音のビッグバンドものに超絶録音が多く、コンボ録音では当たり外れが大きいという感じです。 中ドラマーに移行したタイミングで、(恐らく)MGM Bloomfield 工場プレスに変更されます。マザー番号ないしスタンパー番号を表す「A」「B」…の刻印部分を除き、全て手書きマトリクスとなります(こちらも参照)。 このパターンは MG-36105 に始まります。 自社工場時代と類似傾向の、レンジを欲張らないカッティングで、かつ向上したプレス品質とあいまって、これも安心して聴けます。ただし、Indy 工場プレスの鮮烈な音と聴き比べると、当時としてもやや時代遅れな再生音ではあるかもしれません。 1959年頃から、Mercury の多くのプレスが(1958年5月に US Decca から買収した)Richmond 工場に移行します(クラシックだけは引き続き RCA Indy 工場プレスを続け、1960年〜1961年頃に Richmond に移行します)。この時期のマトリクス刻印は最初期は手書きのもの(Richmond ではなく別工場の可能性もあります。現在調査中)も見られますが、ほどなく縦長の字母で、一直線に刻印されたものとなります(こちらも参照)。マトリクス末尾のラッカー番号部分は「MS」(Mercury Sound) ではじまり、のちに「M」(Mercury)、更に後年「MR」(Mercury/Richmond) に変更されていきます。 このタイプの刻印が見られる EmArcy 盤はすべて、1959年以降にプレスされた再発ということになります(よって、そのほぼ全てが Mercury 楕円ロゴレーベルです)。 このプレス工場は、のちに長らく使われるもので、Indy プレスほどではありませんが、安定した品質を誇ります。1960年代に入ると、カッティングマスターの段階ですでに妙なイコライジングやエコーが付加されていたりと、プレス品質とは別の問題も見られる様になりますが、これは Mercury に限った話でなく、全米の大手レーベルで共通してみられたものでした。 |