瀬谷さんはあっという間に分かってしまいましたが (笑) 78回転 の方でかかっていたのは、 ウィリー・ブライアント (Willie Bryant) の 「Mary Had A Little Lamb」 という曲でした。この演奏、この SP、歴史的名演でもメガレア盤でもないけれども、ホント大好きなんです。
Cross Patch c/w Mary Had A Little Lamb / Willie Bryant and his Orchestra
(Bluebird [US] B-6435)
2005年11月23日、車ではるばるつくばへと向かい、瀬谷さん主催のお馴染み 「第180回ジャズSPレコードを聴く会」 に参加した時のこと (当日のプログラムもリンク先で見られます)。もちろん、そこでかけられた18曲はどれも興味深い内容でしたが、SP 初心者の私は、1936年6月3日録音、ジャイブっぽいテイストをたたえたビッグバンドによるゴキゲンなダンスナンバー1曲に心奪われました。「メリーさんの羊」ですよ旦那! 当日一緒に参加した連れ (音楽に興味はあるし耳はいいけど、音楽に全然詳しくもないし古い音源を好んで聴くはずもない) ですらかなりゴキゲンで気に入った様子でした。
もう、これはなんとしても本盤を入手するべし。そう心に誓ったものの、なかなか見つかりませんでした。同じ日に録音されたもう1枚 (Bluebird B-6436) はあっさりと見つかり入手できたものの、Bluebird B-6435 が見つからない。
1ヶ月たち、半年たち、1年たち、まだ見つからない。うちであの演奏をもう一度聴くことはかなわんのかのう。あるいはあきらめて素直に Classics レーベルから出ている CD を買うかのう。いやいや、やはり CD なら瀬谷さんが絡んではる「New York In The ’30s」 (Audio Park [J] APCD-6027) にしようかのう。とかなんとか思ったりしたものの、いやいや、SP 見つけるまでは CD はお預けだ、と意味のない意地を張ってみたり。
で、もうあきらめかけていたのですが、この前やっとこさ見つけることができ、無事落札できたのでした。はぁ〜、これでんがな。お馴染みのメロディ、お馴染みの歌詞、軽快のりのりスウィンギーに進むダンサンブルな演奏、朗々と歌い上げるトランペット (これって Taft Jordan でしょうか? ディスコグラフィーがないもんで . . . )。もうウキウキと3分間強のプチダンスパーティとなりました。A面の「Cross Patch」もブリブリバリトンで始まる同じくゴキゲンなダンスナンバーで更にプチダンスパーティー。
I’m Grateful To You c/w I Like Bananas / Willie Bryant and his Orchestra
(Bluebird [US] B-6436)
同じセッションで録音された Bluebird B-6436 の2曲ですが、A面はゆったりとしたダンスチューン、B面は Willie Bryant と Jack Butler の掛け合いも楽しいコテコテのジャイブという、興味深いカップリングの 1枚です。個人的にはやっぱり B面の「I Like Bananas (Because They Have No Bones)」の方が圧倒的に好みですね (笑)
Willie Bryant (vo, dir) and His Orchestra:
Dick Clarke (tp), Taft Jordan (tp), Jack Butler (tp, vo),
John Haughton (tb), George Matthews (tb),
Glyn Paque (as), Stanley Payne (as, bars),
Johnny Russell (ts), Charles Frazier (ts, fl),
Ram Ramirez (p), Arnold Adams (g), Bass Hill (b), Cozy Cole (ds).
Recorded in New York City on June 3, 1936.
102003-1 Mary Had A Little Lamb Bluebird B-6435
102004-1 I Like Bananas (Because They Have No Bones) Bluebird B-6436
102005-1 Cross Patch Bluebird B-6435
102006-1 I'm Grateful To You Bluebird B-6436
テディ・ウィルソン (Teddy Wilson)、 ベン・ウェブスター (Ben Webster)、 ベニー・カーター (Benny Carter)、 コージー・コール (Cozy Cole) といった錚々たるメンバーも在籍していたんですって、このウィリー・ブライアントのオーケストラ。 シリアスなジャズでは決してありませんが、時にスウィンギーに、時にジャイブっぽく、時にノベルティっぽい茶目っ気をふりまき、決して長くはなかった活動期間を通じて数々のゴキゲンな録音を残してくれました。
うーん、やっぱり CD 買わないといけません。全部 SP で揃えるなんてことはきっと私には無理でしょうから . . . そう思いつつ、Amazon.co.jp 上で試聴できる他の楽曲のサワりを楽しみながら、あと 1枚か 2枚くらい気に入った曲はやっぱり SP で . . . と思いをふくらませているのでありました。
瀬谷さんが CD 復刻に関わられた「New York In The ’30s」 (「Mary Had A Little Lamb」と「Cross Patch」が収録されています) のレビューは こちら でどうぞ。
New York In The ’30s : 1934-1936 / Various Artists
(Audio Park [J] APCD-6027)
入手おめでとうございます。
私もこの「メリーさんの羊」大好きです。とにかくアンサンブルとペット・ソロが格好良いですね。
他にも以下のような録音があります。
Teddy Wilson (Brunswick 7673) May 14, 1936
Tommy Dorsey (Victor 25341) May 20, 1936
Fletcher Henderson (Victor) SPとしては未発売 May 23, 1936
Bob Crosby (Decca 836) June 16, 1936
Putney Dandridge (Vocalion 3287) August 3, 1936
※ Willie Bryant の録音は June 3, 1936 です。
でも、ウィリー・ブライアントが一番かな?
予想以上に多くのバンドが、しかもほぼ同時期に録音してたんですね。びっくりです。
この時期、この曲が一気に吹き込まれることになったきっかけでもあったのでしょうかね?
この曲は、多分1936年4月か5月の出版と思います。
この曲も当時の流行歌で、曲が出版されると先を争って録音したといいます。
1930年前後のヒット・オブ・ザ・ウィークに収録されているような、今でいうスタンダード曲は、
同じ日や毎日のように録音されていました。「メリーさんの羊」は少ない方だと思います。
> 1930年前後のヒット・オブ・ザ・ウィークに収録されているような、今でいうスタンダード曲は、
> 同じ日や毎日のように録音されていました。「メリーさんの羊」は少ない方だと思います。
なるほど。当時のティン・パン・アレーではそんな光景が毎日の様に繰り広げられていたのかもしれませんね。
ところでこの「メリーさんの羊」。
歌詞はもちろん Nursery Rhymes (いわゆるわらべうた? Mother Goose?) のものを基本的には踏襲しているとして、
Willie Bryant Orchestra 及び瀬谷さんがあげて下さった 1936年録音の Symes-Malneck 作曲バージョンは、
世間一般で知られている例のメロディとは全然違いますよね。
いろいろ探してみると、1935年 UB Iwerks 製のアニメ「Mary’s Little Lamb」なんてのも見つかりました。
これも別メロディ (というかいろんな曲のメロディを組み合わせたっぽい?) で、
オープニングに「Musical Score by Carl Stalling」と書かれています。
http://www.youtube.com/watch?v=4PcR5S6TkiY
もう少し新しいところでは Paul McCartney & The Wings のバージョンも知られていますし、
Stevie Ray Vaughan のブルースバージョンなんかも有名ですね。
他にもいろんなメロディをつけた「メリーさんの羊」があるのかもしれませんね。
この辺、調べてみるとかなり奥が深そうな予感ですが、はてはて。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mary_had_a_little_lamb
> 1936年録音の Symes-Malneck 作曲バージョン
このメロディをご存知ない方向けに、
瀬谷さんもあげて下さった Tommy Dorsey バージョン (Victor 25341) の
リンクをはっておきます。RealPlayer でフルコーラス再生可能です。
http://www.jazz-on-line.com/ram/VIC25341-A.ram
このバージョン、初めて聴きましたが、
確かに Willie Bryant バージョンの方が圧倒的にゴキゲンですね (笑)
む、この Jazz Old Time on line というサイト、なかなか凄い。
「メリーさんの羊」、あっさり 5バージョンも見つかってしまった:
http://www.jazz-on-line.com/pageinterrogation.php?keyword=Mary%20Had%20A%20Little%20Lamb
Willie Bryant バージョンもフルコーラスで聴けるではあーりませんか。
http://www.museeq.com/mp3/BLU102003-1.mp3
瀬谷さんが挙げて下さった、
Putney Dandridge (Vocalion 3287) August 3, 1936
も:
http://www.jazz-on-line.com/ram/ARC19646.ram
Teddy Wilson (Brunswick 7673) May 14, 1936
も:
http://www.museeq.com/mp3/BRUC1376.mp3
更に、1940年の Three Peppers (Decca 8508) バージョンも
(これまた全然メロディが違う!!):
http://www.museeq.com/mp3/DEC67668.mp3
メリーさんの羊がいっぱい!!
いやー、おかげでいろいろ勉強になりました (笑)
えーい、おまけだおまけ (笑)
Willie Bryant バージョン (Bluebird B-6435)、A面の「Cross Patch」:
http://www.museeq.com/mp3/BLU102005-1.mp3
Fats Waller バージョン (Victor 25315) もしっとり味があっていいですなぁ:
http://www.museeq.com/mp3/VIC101191.mp3
Louis Prima バージョン (Brunswick 7680) は個人的にはちょっと落ちるかな?
けどこのヴォーカルは相変わらず楽しいですね:
http://www.museeq.com/mp3/112085103.mp3
Charlie Barnet バージョン (ARC ME60713) はややバタ臭いアレンジに聞こえるような…:
http://www.museeq.com/mp3/ARC19243-1.mp3
いかんいかん、仕事せねば…