2025/07/02

TOPPING P50 Linear PSU (for Schiit Mimir)

Introduction, Pt. 2

知人の代理で購入した Schiit Mimir DAC についての続編です。

This post is a follow-up to my earlier article about the Schiit Mimir DAC I bought for a friend.

前回記事 の終わり で、次のように書きました。

At the end of the previous article I wrote the following:

以上の実験結果を知人に伝えたのですが、「モバイルバッテリの凄さは十分すぎるほど分かったが、時々充電しないといけないのはやはり面倒くさい」という返事でした。

I passed these test results on to my friend, but his reply was, “I totally get how good a power bank is, yet having to recharge it regularly – even if it’s only occasionally – is still a pain”.

そこで、次善策として、USB-C 5 V DC を取り出せるリニア電源ユニットを探してみることにしました。これならば、バッテリ駆動に近い結果が得られ、かつ充電の面倒臭さから解放されますので。

So as a fallback plan, I started looking for a linear power supply that can deliver 5V DC over USB-C. It should get us close to battery-powered performance without the hassle of regular recharging.

Schiit Audio Mimir Balanced Mesh™ DAC
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2025/06/26

Schiit Audio Mimir Balanced Mesh™ DAC

Introduction

つい先日、音楽好きな知人のお宅を訪問する機会がありました。主に LP(特に 1940〜50 年代のジャズやソウル/R&Bのオリジナル盤)や 45 回転シングル盤、78 回転盤(こちらもジャズやソウル/R&Bがメイン)を愛聴されていて、CD は積極的には聴かず、PC オーディオやストリーミングにもまったく興味がない、という方です。

The other day I had a chance to visit a friend who’s a hardcore music lover. His daily spins are mostly LPs – original jazz, soul and R&B pressings mainly from the ’40s to ’50s – plus 45 rpm singles and even 78 rpms of the same genres. CDs rarely make it onto his system, and PC-based audio or streaming? Zero interest.

Billie Holiday、Johnny Hodges、Willie Smith、Aretha Franklin、Helen Merrill、Dinah Washington、Solomon Burke などを特に愛好されており、自慢のオリジナル盤 LP や SP 盤をいろいろ聴かせていただきました。

He’s especially fond of artists like Billie Holiday, Johnny Hodges, Willie Smith, Aretha Franklin, Helen Merrill, Dinah Washington, and Solomon Burke, and he treated me to a parade of prized and treasured LPs and 78 rpm records of original pressings.

Some of his collection – Jazz, Soul, Blues, etc.

(その方のコレクションの一部)

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2025/06/24

David Bowie in Jazz (Wagram Music 3387412)

2003年頃から活動しているフランスの Wagram Music レーベル。

数えきれないほどのコンピレーション CD をリリースしてきたこのレーベルですが、2016年より “In Jazz” もリリースしています。これは、著名アーティストの楽曲をジャズミュージシャンが思い思いにカヴァーした演奏を集めたオムニバス CD シリーズです。

テーマに沿って新規録音された音源…、というわけではなく、各アーティストの既存アルバムからカヴァー曲を集めて1枚にまとめあげたもののようです。しかし、いざ聴いてみると不思議な統一感と程度なバラエティが共存しており、どのリリースもかなり楽しめます。

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2025/01/15

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 25

EQカーブの歴史ディスク録音の歴史を、私が学ぶ過程を記録した本シリーズ。前回 Pt.24 では、録音チェーンおよび再生環境における周波数応答特性や位相特性が変化しうるパターンについて調べ、可変イコライザ等の使用による音作りが(特にポピュラー音楽系で)多く行われていることを改めて学びました。また、各種CDリイシュー音源の比較により、当時のシングルマスター、当時のLPマスター、マルチトラックマスターからのリマスター、などを比較することで、ディスク録音イコライザを通過する前の音の違いが確認できることも紹介しました。

This series have documented my process of learning the history of EQ curves and disc recording. In the previous Pt.24, I examined the patterns in which frequency response characteristics and phase characteristics can be changed in the recording chain and reproducing environment, and I learned again that the sound creation (especially in popular music) is often done through the use of variable equalizers and the like. I also introduced the comparison of various CD reissues to confirm the differences in sound between single masters of the time, LP masters of the time, remastered from multi-track masters, etc., before passing through the disc recording equalizer.

最終回 となる今回 Pt.25 は、2年以上に及び調べ学んできた膨大な内容を総括した 要約(復習)です。諸説多きディスク録音EQカーブについて、現時点で分かっていることを整理し、現時点での私の理解に基づき、最後に結論めいたものを記しています。また、少しでも読みやすくするため、仮想キャラ2名によるカジュアルな対話形式を挿入してみました(笑)

This Pt.25, which will be the final part, is a summary of the vast amount of information that I have learned and researched over the past two years. I will then summarize what is currently known — and some tentative summary and conclusion based on my current understanding of many thories — about the EQ curves of disc recordings. Also, in order to make it as easy to read as possible, I have inserted casual dialogues between two virtual characters 🙂

The Measure of Your Phonograph’s Equalization (Dubbings D-101, 1953)

source: The Measure of Your Phonograph’s Equalization (Dubbings D-101, 1953)
from my own collection

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2024/12/06

曲名とアーティスト名と収録アルバム名が全て一緒のってどれくらいある?

たまには(?)軽いネタを。

今から10年以上前に、クルマで移動中、たまたまカーオーディオのディスプレイがこうなりました。

“Happy End” by Happy End, on the album “Happy End”

“Happy End” by Happy End, on the album “Happy End”

アルバム「はっぴいえんど」収録の楽曲「はっぴいえんど」、演奏は はっぴぃえんど

曲名、アーティスト名、収録アルバム名の3者が完全一致 した珍しい例ですね。

それから、ことあるごとに、曲名、アーティスト名、収録アルバム名が完全一致する例を見つけてはメモしていました。これはそのまとめです。

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2024/11/26

How Records Were/Are Manufactured (6)

NOTE to non-Japanese readers:
This article — a deep dive into the history of Mercury’s injection-molded styrene LP records — is written only in Japanese, except the conclusion and summary part (also written in English). Or you may read the entire page with the help of the “Translate to English” feature on many modern web browsers, although I’m not sure if my entire Japanese sentences are translated into English correctly and properly.

第1回第2回第3回第4回第5回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

Shelley Products 社によって1940年代末に市場に投入され、一時期は Columbia が開発・実用化・普及に向けて積極的に投資していたスチレンの射出成形法は、LP盤製造では結局は主流とはならず、米国で45回転盤用としてのみ浸透したことを学びました。

また、21世紀に入って、サステナビリティの観点から再び射出成形法が見直され、スチレンではなくリサイクルインフラが整ったPET盤が製造販売されていることを知りました。

最終回となる今回は、もともとレコード製造方法や原材料の歴史を調べるきっかけとなった、Mercury の廉価スチレン製LP盤 について、さまざまな角度から調査してみました。

改めて、今回の一連の調査のきっかけを与えてくださった @zmuku さんに感謝いたします。

プレス工場を特定できる決定的な情報はまだ得られていませんが、レーベルやジャケ裏に印刷されている3本線マークの由来と意味について、非常に妥当な仮説を立てることができた気がします。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (5)

第1回第2回第3回第4回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

5回目となる今回は、1964年の Burt Bacharach = Hal David 両氏へのインタビュー記事に登場する射出成形スチレンシングル盤への不満という面白いエピソードのほか、英国の射出成形ヴァイナル盤研究開発を捉えた興味深い動画の紹介、同じく射出成形ヴァイナル盤製造を1970年代に行っていた日本コロムビアの学術論文、最後に21世紀になって登場した「エコフレンドリーな」射出成形PET盤について、それぞれみていきます。

レコード業界における射出成形による製造法の役割が、長期的なコスト削減および生産効率向上、という目的から、持続可能なレコード文化存続へ、とシフトするさまを現在進行形でみているんだなぁ、という思いを強くした学びでした。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (4)

第1回第2回第3回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

4回目となる今回は、1954年当時の射出成形 vs 圧縮成形の様子を解説した記事をかわきりに、1950年代末には結局LP盤のほとんどが圧縮成形プレスで製造されていたこと、逆に射出成形スチレン盤は7インチシングル盤として米国で広く普及したこと、その他1960年代のさまざまなエピソードをみていきます。

21世紀の現在、新しい文脈から射出成形12インチLP盤が再登場していますが、当時の技術レベル(や当時のレーベルの経営的思惑)からは、射出成形LP盤は主流になれなかったのだろう、そんな風に思わされました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (3)

第1回 および 第2回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

3回目となる今回は、射出成形技術が初めてレコードに使用された1947年から、米巨大レーベルが射出成形に大きな投資を行うことを表明した1950年、さらに1951年〜1953年の朝鮮戦争によるレコード製造原材料不足の時期を、当時の記事などでたどっていくことにします。

当時はありふれた大量生産品であったレコードという製品を作るにあたり、レーベルやプレス工場といった企業にとって、技術面もさることながら、コストに対する意識生産可能速度 が最も重要であった、という至極当たり前のことを、改めて強く認識することとなりました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (2)

前編 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

「射出成形盤はいつ頃から製造されたか」、「米国における圧縮成形 vs 射出成形のバトルはどのようなものだったか」、「圧縮成形のスチレン盤は存在したか」、そして「Mercury の例の廉価盤はなにか」などをみていくわけですが、2回目となる今回は、RCA Victor が1957年と1976年に社内技術紀要に掲載した2つの解説論文をたよりに、レコード製造技術の概要を改めてみていきます。

RCA Victor は、米国レコード業界を牽引する立場でもあり、長年に渡りレコード製造技術の自社開発を積極的に行っていましたし、またそれらの成果を学術論文や社内技術紀要などに比較的積極的に公開していたため、このような資料が残っていることには感謝しかありません。

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