The Feeling Is Mutual / Helen Merrill

Helen Merrill‘s popularity has been incredibly huge here in Japan – even most of ordinary people have ever listened to her voice so many times (via TV commercials or BGM), and her first album (on EmArcy) has been regarded as one of the best masterpiece female Jazz vocal albums ever – first pressing copy of MG-36006 sometimes goes to incredible final bid over 1000 USD at auctions (if it’s in mintish condition), since so many Jazz LP collectors in Japan wish to own the LP – Gosh!

ここ日本での ヘレン・メリル (Helen Merrill) の人気は (欧米からみると) 想像を絶する程なのでしょう。特にジャズに興味がない人ですら、テレビのコマーシャルや番組の BGM として彼女の声に親しんでいますし、EmArcy のファーストアルバムは、女性ジャズヴォーカルの傑作の1枚として大変な人気です。オークションなどでは、その MG-36006 のファーストプレスが、(状態が完璧な盤であれば) 1000ドルオーバー (ひえぇぇぇ) で落札されたりします。常軌を逸したその最終価格はまちがいなく、物凄い数の日本人ジャズコレクターが、あのアルバムを所有したいと思っているからに他なりません。

The album is actually the masterpiece. Her fascinating voice sets the entire mood – tense, beautiful, monochrome and at the same time very warm. Quincy Jones’ appropriate arrangements enhance her artistry, and Clifford Brown’s perfect performance doubles the total quality. But I don’t want to listen to this album hunderds of times, just because I don’t want to feel enough – I do want to make much of tremendous “shock” I had when I listened to this album for the first time.

もちろん、このアルバムは文句なしに大名盤です。彼女の素晴らしい (緊張感に溢れ、美しく、モノクロームの如き魅力があり、同時に暖かみすら感じさせる) 声が全体のムードを支配し、クインシー・ジョーンズ (Quincy Jones) の的確なアレンジメントが彼女の魅力を一層引き立て、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) の完璧な演奏によりその魅力が更に倍増しているのですから。ですが、私はこのアルバムを何百回も聴きたくはありません。それは、このアルバムに飽きてしまいたくないからです。そう、このアルバムを初めて聴いた時のあの「衝撃」を出来るだけ長くとどめておきたいからです。

As for me, the most frequently played album by Helen Merrill is the following one. Interestingly, I feel this album has another kind of fascination, which EmArcy’s first album doesn’t have.

そんな私が、最も頻繁にターンテーブルに載せる Helen Merrill のアルバムは以下の盤です。興味深いことに、このアルバムには EmArcy のファーストアルバムにはない、また別の魅力がある様に感じます。

[Milestone MSP-9003 Front Cover] [Milestone MSP-9003 Back Cover]

The Feeling Is Mutual / Helen Merrill
(Milestone [US] MSP-9003)

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This album, recorded in 1965, is definitely her another masterpiece – or I could say it’s her best album in the 1960s. BTW I bought this album just because there were my favourite musicians on this album – Thad Jones, Jim Hall and Pete “La Roca” Sims (see also: Jazz Impressions Of Japan for Jim Hall, and Turkish Women At The Bath for Pete LaRoca).

1965年録音の本アルバムですが、文句なしに名盤級の内容です。彼女の 1960年代録音の中で屈指の内容と言ってもいいでしょう。ところで私が本アルバムを購入した理由というのは、私の大好きなミュージシャンが参加しているからでした。サド・ジョーンズ (Thad Jones)ジム・ホール (Jim Hall) そして ピート・ラローカ (Pete “La Roca” Sims) といった辺り。Jim Hall は「Jazz Impressions Of Japan」、Pete LaRoca は「Turkish Women At The Bath」のエントリもご覧下さい。

Thad Jones, as well as Clark Terry, is a master of cornet/flugelhorn – he has a distinctive sound of nobody else can do. Jim Hall does unique chord progressions and fascinating sound presentation like he always do. Pete LaRoca backs Merrill with very delicate, percussive (and sometimes even poly-rhythmic) approach. Without such marvelous artists, this album cannot be complete. And with such impressive performance, Merrill’s another perspectives (other than that EmArcy’s album) is enhanced and emphasised on this album.

Thad Jones は、クラーク・テリー (Clark Terry) 同様、コルネット/フリューゲルホーンのスタイリストで、彼以外には出せない魅力ある音色が特徴。独特のコードプログレッションと音色が特徴の Jim Hall は、いつもの様に見事なバッキングとソロを聴かせます。そして Pete LaRoca は、デリケートかつパーカッシブで (時にはポリリズミックなテイストも交えつつの) ドラミングで実に見事なバッキングをしています。これらのアーティストなしでは、このアルバムは成立しないといっていい程、多大な貢献をしています。しかもそれが、EmArcy の例のアルバムに代表されるメリルの魅力とはまた違った、多面的な魅力を引き出すことに成功しているのです。

[Milestone MSP-9003 Side-A] [Milestone MSP-9003 Side-B]

Yet another player Dick Katz plays an important role throughout this album – he is an arranger on this session, and plays so impressive piano as if he presents another stream of harmonies. His piano surely contributes further diversity and dimensions of harmonies, and this is just what makes this album so special. What a unique-sounding performance of A-2 “It Don’t Mean A Thing” ! Just wonderful. I believe, if you listen to this album over hundreds of times, you will not get bored. You’ll find new things every time you listen to this album.

更にもう一人の演奏者 ディック・カッツ (Dick Katz) が、このアルバムで最も重要な人物です。彼は、本作でのアレンジャーでもあり、アルバム全体にハーモニーの多様性を与えるピアノ演奏を披露しています。彼のピアノが、ハーモニーの多様性や複層的な響きの中心にあることは明らかで、まさにこれが本作を特別な魅力で満たしているとも言えます。A-2 “It Don’t Mean A Thing” の独特の響きといったら! 何百回聴こうと、聴き尽くすことは不可能でしょう。絶対に飽きないアルバム。

My favourite number is B-4 “Deep In A Dream” – Helen Merrill and Jim Hall’s collaboration to elaborately construct the mood by the duo which is so fascinating.

個人的なベストテイクはラストの B-4 “Deep In A Dream”Jim Hall とデュオで、じっくりと曲のムードを作り上げていく様は見事という他ありません。

Helen Merrill’s another album on Milestone label will be featured on this site in the near future – stay tuned.

メリルがもう一枚 Milestone レーベルに残したアルバムについては、また機会を改めて紹介したいと思います。

A-1: You’re My Thrill
A-2: It Don’t Mean A Thing
A-3: Here’s That Rainy Day
A-4: Baltimore Oriole
A-5: Don’t Explain

B-1: What Is This Thing Called Love?
B-2: The Winter Of My Discontent
B-3: Day Dream
B-4: Deep In A Dream

A-2, A-5, B-1, B-3:
Helen Merrill (vo),
Thad Jones (flh or cornet), Dick Katz (p, arr),
Jim Hall (g), Ron Carter (b), Pete LaRoca Sims (ds).
Recorded in New York City on June 2, 1965.

A-1, A-3, A-4, B-2, B-4:
Helen Merrill (vo),
Thad Jones (flh or cornet on A-4, B-2), Dick Katz (arr, p on A-1, A-3, A-4, B-2),
Jim Hall (g on A-4, B-2, B-4), Ron Carter (b on A-1, A-4, B-2), Arnie Wise (ds on A-4, B-2).
Recorded in New York City, June 1965.

Produced by Dick Katz.
Supervised by George Avakian.
Ray Hall, Recording Engineer.
Elvin Campbell, Re-recording Engineer.

12 thoughts on “The Feeling Is Mutual / Helen Merrill

  1. メリルのデビューSPがあることを思い出し、久しぶりに聴いてみました。
    1953年のニューヨーク録音で、The More I See You / My Funny Valentine の組み合わせ、レーベルと番号は Roost 575 です。
    両曲とも超スローテンポで、伴奏はギターのジミー・レイニーとベースのレッド・ミッチェルだけ。
    デビューにしては超地味な録音ですね。普通は片面がスローなら、もう一曲はミディアムあたりをもってくると思うのですが。
    録音はといえば、時代とは思いますがエコーチェンバーのかかり具合を試しているような感じです。ニューヨークのため息というよりも、浴室のため息といったところです。
    デビューには珍盤が多いですね。

  2. Shaolinさん
    あっ、私に聴かせたかったけどかなわなかったうちの一枚ですね。
    いや、これ、良さそうですね。メリルですから、見つけたら買ってみます。
    瀬谷さん(はじめまして)
    > メリルのデビューSPがあることを思い出し、久しぶりに聴いてみました。
    あ~そんなものをお持ちとは、うらやましいです。
    (現状で、うちではSPは聴けませんが)
    でも「浴室のため息」って・・・(笑)

  3. 瀬谷さん:
    当時の Roost って (CD とかでしか聴いたことないですが) エコーチェンバーを使った録音が多かったんですかね。
    そういえば、もう一枚、Earl Hines バンドでの録音があるみたいですね。詳しくは知らないのですが「A Cigarette For Company」、1952年12月15日録音、と helenmerrill.com に載ってました。もちろん聴いたことはありませんが、録音年月日的にはこちらがデビュー盤ということになるのでしょうか。

  4. Refugee さん:
    そうなんです、これと次作の「A Shade Of Difference」は、企画的にやや難がある(?)日本録音が多い1960年代の録音では群を抜いた出来だと思います (次作についてはまたここで紹介する予定です)。
    A-2 のイントロ、La Roca の不思議なスティックさばきのあと、Thad Jones、Jim Hall、Dick Katz がメロディを一音づつリレーしながらあのメロディを奏でる。そこに Dick Katz が面白い響きの和音をパンパンと重ねていくさまがとても刺激的です。メリルさんはいつものあの調子で歌っている訳ですが、アレンジメントが多彩で、全体的には彼女の別の魅力がうまく出せていると思います。
    なお本盤にはモノーラル盤 (MLP-1003) もあるみたいですが、聴いたことはありません。ただ、この盤はステレオで聴く方が圧倒的に楽しいんじゃないかなぁ、と思います。

  5. >当時の Roost って (CD とかでしか聴いたことないですが) エコーチェンバーを使った録音が多かったんですかね。
    そんなことはないと思いますが、1953年録音というのはあまり持っていないので、断言は出来ません。しかし、このメリル盤は極端ですよ。途中で深くかけたり、エンディングではもっと深くかけたり、エコーチェンバーを導入し、嬉しくて遊んでいるようです(笑)
    >そういえば、もう一枚、Earl Hines バンドでの録音があるみたいですね。
    こちらが初録音で、Roostはメリル名義のデビュー盤ですね。
    Refugeeさん、はじめまして。
    SPは重いので止めた方がいいですよ(笑) また、今回のように、ハスキーヴォイスを期待していたら、「浴室のため息」のような例も多いですから。

  6. いまCDラックをパラパラと探してみたら Bud Powell の 1953年録音 (w/ G. Duvivier, A. Taylor) がありました。
    これはそんなにひどくはないですね。ただ数曲で音がモワモワしている感じがします。
    > 「浴室のため息」
    それはそれで、どんなものか聴いてみたい気がします (笑)
    ところで例の「ニューヨークのため息」って、一体誰が言い出したんでしょうかね。
    不思議なことに、「(the) sigh of New York」で検索しても、2サイトしか見つかりませんでした …
    もしかしたらこの言い回しは日本発祥なんでしょうか?

  7. >いまCDラックをパラパラと探してみたら Bud Powell の 1953年録音 (w/ G. Duvivier, A. Taylor) がありました。
    >これはそんなにひどくはないですね。ただ数曲で音がモワモワしている感じがします。
    Bud Powell が 1953年録音でしたか。何枚かあるはずなので、今晩にでも聴いてみます。
    >ところで例の「ニューヨークのため息」って、一体誰が言い出したんでしょうかね。
    日本発祥は間違いないと思います。評論家の先生かジャケ帯のキャッチあたりでしょうか?
    >それはそれで、どんなものか聴いてみたい気がします (笑)
    もうすっかり落ち着きました。是非聴きに来てください。
    LPだけは持参してください。お聴かせするようなものはほとんどありませんので(汗)

  8. 瀬谷さん:
    以前から遊びに伺うと何度も話があったことですし、今度こそ是非。
    今月か来月あたりでスケジュールを調整してみようと思います。
    また別途メール致します。
    > LPだけは持参してください
    いや、持っていかない方がいいかもしれませんね。
    もう、たっぷりと、SP の世界を堪能させて頂くべきかと (笑)
    むしろ、うちにある数少ない SP のうち何枚か持っていって、
    瀬谷さん宅のシステムで聴かせてもらえればと思います。

  9. 私の持っているRoostのPowell は1947年録音でした。音はあまり良くありません。エコーはないものの少しこもったというか詰った感じです。53年録音の方はSPで出ているのでしょうか?
    他のRoost もあまり良い録音とはいえないようです。Powell 盤と同じような傾向でした。ただし、Herbie Steward の3枚は素晴らしい録音です。なお、レーベル名はRoost ではなく、Royal Roost が正式名です。
    スケジュールを調整してメールください。持参するのはSPの方が良いかも知れませんね。

  10. > 53年録音の方はSPで出ているのでしょうか?
    いやわかんないです。ただ、CD に収録されていたものはスクラッチが聞こえていたので、もしかしたら 78回転マスターディスクなのかな、と思いまして。

  11. 「ニューヨークのため息」は、1962年にメリルが2度目の来日をした時に当時のプロモーターが使った宣伝文句のようです。
    Powell の53年録音の方は、ディスコではSPでの発売はないとなっています。スクラッチが聞こえたのは47年のマックス・ローチが参加したセッションでしょうか?

  12. 瀬谷さん、更なる情報ありがとうございます。
    プロモーターの宣伝文句、なるほど、納得です。
    > スクラッチが聞こえたのは47年のマックス・ローチが参加したセッションでしょうか?
    いえ、あの時聴いたのは CD の 9曲目〜16曲目ですので、1953年のセッションです。ディスク録音なのか、はたまた盤起こしなのか??

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