. . . this article deals with The Little Willies’ newest album, as well as original performances they covered on the album. Currently available only in Japanese . . .
Norah Jones を含む5人のメンバーが、カントリーの渋い名曲 (と数曲のオリジナル曲) を今風にアレンジして好評の Little Willies。ちょうど、Norah のセカンドアルバム “Feels Like Home” のテイストをベースに更にカントリー寄りにアプローチしてみせたサウンド (Norah の片腕 Lee Alexander のお蔭でしょうか) は、改めて好感が持てるものと言えます。Norah が2曲でゲスト参加している、 Joel Harrison の 2003年リリースのアルバム “Free Country” (ACT [Germany] 9319-2) での、ジャンルを越えた自由闊達な再構築 (*1) (それがあのアルバムの良さなんですけどね) とは異なり、本アルバムのカヴァー曲は基本的に原曲のムードとテンポを遵守しており (とはいえ完全コピーではありません)、そこに「あの」現代的な響き〜透明感のあるアコースティックなサウンド〜を付加する、という方向性がみてとれます。
(*1):
とはいっても、Norah Jones 参加の2曲 “I Walk The Line” と “Tennessee Waltz” では、やはりあのスローテンポでムーディなアレンジメントが施されており、この 2曲については Norah のソロアルバムと同じテイストで楽しむことが出来ます。残りの楽曲は本当に面白い。ジャズっぽく、ロックっぽく、ときにはニューウェーブ的なニュアンスも交えながら、あらゆる曲がバラエティ豊かに再構築されていく様はスリリングでさえあります。
ここでは、このアルバムでカヴァーされた数々の曲の、オリジナルバージョンを探訪してみましょう。 といいますか、私がよくこうやって、あるアルバムをきっかけに、いろんな音楽に触れ、嗜好を広げようとするのですが、今回はそれをリアルタイムで本 web に書き記しておこうと思ったのです。
まずは12曲目、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう名曲 “Night Life” から。
ブルースとカントリーとのクロスオーバーとでも言うべき、1963年リリースのこの名曲は、もちろん Willie Nelson のペンによるもの (*2)。かつてはあの Hank Williams と親交が深かった Ray Price のヴォーカルは、当然ながら節々にカントリーっぽい歌い回しや語尾のヴィブラートが聴かれるものの、それがブルージーなムードと完璧にとけあっているこの名演は本当に素晴らしいの一言。もはやカントリーという枠を越えています。Sam Cooke の “Night Beat” すら彷彿とさせる程のアレンジメントには脱帽です。しかしここで全体のムードを決定づけているのはオルガンではなくスライドギター。
この曲は B面でありながら、当時のカントリーチャート 28位まで上昇したそうで、この曲をきっかけに Willie Nelson のソングライティングに対する評価が更にあがったとのこと。ちなみに A面の甘いバラード “Make The World Go Away” (どことなく Clyde Otis と組んだ Brook Benton 辺りのムードを彷彿とさせる、甘いストリングスと女性コーラスが絡む展開は、個人的にはあまり得意じゃないかも) は、カントリーチャート 2位にまで上昇したんだとか。
(*2):
この曲、通常は作詞作曲者として Willie Nelson, Walter Breeland & Paul Buskirk とクレジットされているのですが、どういうわけか本盤のレーベルでは P. Buskirk – W. Breeland – W. Buskirk – M. Matthews となっています。W. Buskirk というのは Paul Buskirk の兄弟でベーシスト/ソングライター Willie Buskirk なんでしょうが、M. Matthews というのは . . . ? もしかしたら、Willie Nelson の最初の奥さん、Martha Matthews のことなんでしょうかね?
この辺の、クレジットが混乱している事情について何か御存じの方がおられましたら、御教授下さい。
余談ですが、Willie Nelson 本人の当時の歌唱は、Rhino レーベル から 1990年に出た CD、“Nite Life – Greatest Hits & Rare Tracks (1959-1971)” で聴くことができます (オリジナルリリースは 1959年、“Paul Buskirk & His Little Men, featuring Hugh Nelson” 名義)。意外なことに、こちらではあまりブルージーな感触を前面に出さずに、さらりと歌われています (デモ録音っぽい感じといいますか)。この曲に限っては、Ray Price のバージョンの方が、圧倒的に素晴らしい出来の様に思えますが、どうでしょうかね? もちろん、作曲者本人の当時の演奏が聴けるのが貴重であることには間違いありません。
では、Ray Price のある意味鬼気迫るオリジナルバージョンに比べると、Little Willies のバージョンはどうでしょう? 全体的なアレンジやテンポの設定はオリジナルに準じるものですが、やはり Norah Jones のヴォーカルとピアノが、全体のムードを支配しており、別の魅力を引き出しています。Ray Price バージョンが深夜の薄汚れたクラブでブルージーに歌われるエモーショナルな演奏だとすれば、Little Willies バージョンはもう少し小洒落たバーでグラスを傾けながらしっとりと聴ける、という感じでしょうか。
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Night Life といえば、メアリー・ルー・ウイリアムスの曲しか思い浮かびませんでした。しかし、同名異曲って多いですね。
ビックスで有名なSingin’ The Blues も2曲ありますね。2曲ともフレッチャー・ヘンダーソンが録音しています。
同名異曲特集なんて面白いかも知れませんね。
> 同名異曲特集
これは面白そうですね。音楽ジャンルも横断しまくりになるでしょうし、
私の好みにはピッタリです (笑)
同名異曲といえば、岡村さんがよく「Stardust」の話をされてましたね。
「Stardust」と「Star Dust」と、それぞれ何曲もあるとかないとか。
結局 5曲くらいあるんでしたっけ…
はじめまして!
トラックバックありがとうございます。
こちらからもトラックバックをしたのですが何故かエラーが
出てしまいます。後ほど再チャレンジしてみますね。
とても充実したエントリーばかりで勉強になりました。
これからも宜しくお願いします。
MOVEMENTさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
こちらの access.log をチェックしてみると、確かに MOVEMENTさんからの trackback を 403 ではじいてしまっていました。
該当 IP アドレスをはじく設定にはしていませんし、keyword blacklist にも該当しないはずなので、
どうして拙 MT が 403 にしてしまっているのか、ちょっと調べてみます。