Sonny Rollins Live At The Village Gate, July 27-30, 1962

某所でつい最近から出回り出した ソニー・ロリンズ (Sonny Rollins) の音源が凄すぎです。1962年7月27日〜30日、NYC の The Village Gate で録音され、その中から3曲だけアルバム「Our Man In Jazz」に3曲収録されたライブ録音のコンプリート音源です。

 
The Village Gate
 

1963年にリリースされたオリジナルは3曲。ジム・ホール (Jim Hall) とのピアノレスカルテットを解消したのち、あの ドン・チェリー (Don Cherry) とカルテットを組み、フリー的なアプローチに身を投じていた時期にあたります。このカルテットが残した音源は1962年7月〜1963年2月という非常に短期間に限られ、貴重なものです。

曲の途中で録音が止められたもの、途中からしか録音されてないものも含めて、恐らくマスターテープそのまんま。音質も極上、演奏ももちろん最高(この時期のロリンズは好き嫌いもあるかもしれませんが)。

 
(正規リリースの3曲が収録されたアルバム)
 
 
 

流出した音源は全部で7時間弱分。27日1st/2ndセットから、30日の1st/2ndセットまで、計4日分。正規で出た “Doxy” と “Oleo” は複数テイク(どれも長尺)あり、他には “Home, Sweet Home” のフリーな長尺演奏、“Stay As Sweet As You Are” と “Alexander’s Ragtime Band” をメドレーで自由闊達に長尺演奏するバージョン、その他タイトルが不明の長尺インプロヴィゼーションがてんこ盛りです。

15分なんてのは当たり前で、多くが20分前後の演奏。30日2ndセットの “Oleo” は、なんと36分オーバー。あの「East Broadway Rundown」に連なるフリーっぽい長尺演奏の初期の形が、ちょうどこの Village Gate 頃から現れ出した、というところでしょうか。しかし当時のお客さんは、このロリンズカルテットをどう受け止めたんでしょうね。かなりびっくりしたのではないでしょうか。

 
Don Cherry (cor), Sonny Rollins (ts), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds).
Recorded live at the Village Gate, NYC on July 27-30, 1962.
 

全セットが完全収録されているわけではありません。途中で唐突に録音が終わっている曲、途中から唐突に録音が始まる曲、終わってからクラブ内のおしゃべりやノイズがずーっと録音されてる曲も結構あります。そういうわけで、このまま正規リリース希望!とは言えないのも事実です。

長尺中心の演奏で録音技師もてんてこ舞いだったのか、あるいは余りのフリーで長い演奏で、レコード化をイメージしながら悩んでいたのか、はたまた用意した録音テープの長さによる制約なのか、正確には分かりませんが、想像をたくましくさせられます。

担当した録音エンジニアとしては、ライブの各セットをきちんとコンプリートで録音しようという意図よりは、4日間適当にあれこれ録音してみて、その中から良さそうな曲を選んでアルバム化しようとしてたという辺りなんでしょうね。

比較試聴してみると、オリジナル「Our Man In Jazz」収録の A-1 “Oleo” は27日1stセット、B-1 “Dearly Beloved” と B-2 “Doxy” は28日1stセットからセレクト、ということが判明しました。B-2 のみオリジナルフル演奏で、A-1 は冒頭40秒ほど(とあとどこか1-2分くらい)カットされてる模様。B-1 は大幅にハサミが入れられていて、LP では 8分強ですが元演奏はなんと18分オーバーというものです。

 

しかし、どういった経緯で今回のこの音源が流出したのかは依然謎のままです。正規リリースされたものと全く同じ、きちんとしたステレオミキシングが全編で行われていますし、音質もライブを収録した大元のマスターテープからコピーしたものと思われる程です。テープ倉庫の調査を手伝っていた助手か誰かが勝手にコピーした、という辺りなんでしょうかね。。。

 


 

ドン・チェリーとの相性も、今回改めて通しで聞いてみると、意外と悪くない感じ、むしろかなりスリリングで聞き応え満点に思えます。私も、若い頃初めて「Our Man In Jazz」を聴いた時とは印象が微妙に変わったかもしれません。それは、今回のコンプリート音源を聴いてみたせいなのか、私の音楽的嗜好の変化によるものなのかは分かりませんが。

やみくもにフリーなのではなく、聴きやすいフリー、とでもいいましょうか。非常に生真面目に正常進化した60年代疾走ロリンズ、的といえます。フレージングはバップイディオムに則った上で原曲を大胆に崩し、ドン・チェリーとの丁々発止の元、自由にインプロヴァイズしています。かなり聞き応え満点でイイです。

 

1950年代後半の雲隠れ直前の完璧なバッパーっぷりの群を抜いた素晴らしさは微塵も揺るぎませんが、1960年代のミスター・ロリンズの演奏ももっと再評価されてしかるべき、という思いを新たにしました(自戒を込めて)。特にこの短命に終わったドン・チェリーとのカルテットは、まともな音質でリリースされたのがこのヴィレッジゲートでのライブしかありませんでしたから、今回(アンダーグラウンドとはいえ)残り音源の存在が明るみにでたのは、再評価を促す意味でも本当に喜ばしいです。

年期の入ったジャズファンであればあるほど、正規にリリースされたアルバム単位で評価をしがちです。こうやって改めて未発表音源を聴いてみると、1950年代後半から1960年代後半まで、ミスター・ロリンズの演奏自体は、実はそんなに本質的変貌を遂げたわけでも、想像力がスランプに陥っていたわけでもないことがはっきりと分かります。あっちこっちにハサミを入れたという RCA Victor の担当プロデューサへの不満が、ミスター・ロリンズへの演奏の不満へとすり替わってしまったのでは、気の毒というものでしょう。

 


 

1962年7月〜1963年2月という短命に終わり、まともに残った音源が少ない、この時期のロリンズ&チェリーカルテット。他に聴くことができるのは、1963年1月15日コペンハーゲンでのコンサート音源、1963年1月19日パリでのコンサート音源、1963年1月29日シュトゥットガルトでのコンサート音源、などがあります。残念ながら音質はブートレグ並みにかなり悪いものも多いですが、内容は一級品です。

 
 


 

直接関係ないのですが、28日3rdセット終了直後に「And don’t forget, next Tuesday, Thelonious Monk」というアナウンスが聞きとれます。次の火曜日とは7月31日。もしかしたら「1962年8月、ないし9月初頭」録音とされてきた “Thelonious Monk Live At The Village Gate” (Xanadu 202) は7月31日の可能性もある、ということですね。


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