The Mercury New Orleans Sessions 1950 & 1953

今年発売されたばかりの、この 2枚組 CD。なんといってもジャケットがイカしてます。 ボロボロになった SP アルバム を模した装丁で、最初に手にとった時には不良品かと勘違いしましたよ . . .

This double CD album, just released in this year, has very funny artwork here – take a look, it looks like a heavily worn-out 78rpm album binder! When I saw this artwork for the first time, I thought this copy is one of substandard products . . .

[Bear Family BCD-16804-BH Cover]

The Mercury New Orleans Sessions 1950 & 1953
(Bear Family [G] BCD-16804-BH)

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( . . . and the rest of the English edition of this article will be available in the near future I hope . . . )

この CD は、Mercury レーベル に残されたニューオーリンズ R&B 録音の集大成となるものです。

全47曲 (別テイクも含む) だけしか録音されていないのは、Mercury がシカゴを本拠地とするレーベルで、ニューオーリンズでは全く活動をしていなかったからでしょう (その代わりシカゴ以外でも、ニューヨークやロサンゼルスには A&R が常駐していて大量の録音をしていましたし、カントリー向けにはナッシュビルやフロリダで多数の録音をしていました)。

そんな Mercury でニューオーリンズ R&B 録音が実現したのは、ニューオーリンズでラジオ部品屋を経営していた ウィリアム・アレン (William B. Allen) の働きかけによるものだったそうです。アレンさんがマーキュリーにニューオーリンズ録音を強く勧めた結果、南部担当 A&R の マレー・ナッシュ (Murray Nash) が実際にニューオーリンズに赴き、アレンさんと一緒にミュージシャンをあたって契約をしていったとのこと。

ジョージ・ミラー (George Miller)、アルマ・ロリポップ (Alma Mondy, Alma Lollypop)、レイ・ジョンソン (Ray Johnson) などなど、マイナーながら聴き応えのある楽曲が並びますが、この一連の録音のハイライトとなるのは、文句無しに プロフェッサー・ロングヘアー (Professor Longhair) の最初期録音でしょう (録音時の名義は Roy Byrd)。全 9曲 13テイクが録音されたものの、当時は SP 2枚で 5曲 (うち 1枚が、2種類のカップリングでリリースされたため) しか陽の目を見なかったのですが、アメリカ全土での知名度がまだまだ低かったこの時期に、極上の楽曲、そして極上のコンディションで録音が行われていたことに感謝するしかありません。

1970年代に入ると、全米での知名度もぐんとあがり、伝説のニューオーリンズピアニストとして高い人気を博しましたが、それに先立つこと30年、声の張りも素晴らしく演奏のドス黒さも全開の本録音は、まるで別人ではないかと錯覚させられる程のド迫力です。特に、後に何度も演奏された代表曲「Bald Head」の本セッション版は、まさにこの曲の決定版とも言える素晴らしい出来です。テンポはあまり早くとらず、ゆったりとかつどっしりとロールするリズムに乗せて、御大のピアノとヴォーカルが抜群のノリで迫ってきます。

有名な Atlantic 録音に比べるとバンドサウンド全体としての完成度はまだ低いかもしれませんが、それでもなかなかのものです。なお、この「Bald Head」は当時、ビルボード誌の R&B チャートで最高 5位までいったそうです。

当時 SP でリリースされたのは次の 2枚 (3種類) だそうですが、まだ入手できていません。 結構いい値段するんやろうなぁ . . .

  • Bald Head c/w Hey Now Baby (Mercury 8175)
  • Her Mind Is Gone c/w Hadacol Bounce (Mercury 8184, 1st release)
  • Her Mind Is Gone c/w Oh Well (Mercury 8184, 2nd release)

余談ですが、これらのセッション (のうち 1953年録音を除く) は、過去のディスコグラフィーでは 1949年 8月〜9月の録音とされていましたが、本 CD のライナーノーツでは 1950年 2月/6月/7月と修正されています。これは、上述のマレー・ナッシュさんへのインタビューや、当時の音楽雑誌のリリース情報などを資料として検証、修正されたとのことです。

本 CD に収録されている音源で、現在 SP を所有しているのはたった 1枚、George Miller & His Mid-Driffs の 「Boogie’s The Thing c/w Bat-Lee Swing(Mercury 8183) のみです。あまりニューオーリンズ臭さを感じないのが不思議な演奏ですが、A面はノリノリのブギにコテコテテナーが絡み、B面は リー・アレン (Lee Allen) と リロイ・“バットマン”・ランキン (Leroy “Batman” Rankin) のダブルテナーでブリブリ迫るミドルテンポで、けっこうスルメ的魅力に溢れた盤です。コテコテブリブリホンカー好き にはお薦めしたい 1枚。

[Mercury 8183 Side-A] [Mercury 8183 Side-B]

Boogie’s The Thing c/w Bat-Lee Swing / George Miller and his Mid-Driffs
(Mercury [US] 8183)

70ページもある付属のブックレットも、ミュージシャンの紹介、サイドストーリー、貴重な写真などが満載で必読なのですが、George Miller バンドがクラブで演奏している写真に目が止まりました。まんなかで歌っている黒人女性シンガーの名前を確認すると Anna Marie Woolridge とあります。要するに、のちの アビー・リンカーン (Abbey Lincoln) ってことですね (Anna Marie Woolridge が本名の様です)。へぇ〜、こういうところで歌ってたとは全然知りませんでした . . .

[George Miller w/ Abbey Lincoln]
George Miller (left) and his Mid-Driffs featuring Anna Marie ‘Abbey Lincoln’ Woolridge (centre)

3 thoughts on “The Mercury New Orleans Sessions 1950 & 1953

  1. 模造ダメージ・ジャケの銘品がまた増えましたネ!
    板起こしですか? 
    お手持ちのSPと比べるとやはり迫力に欠けますでしょうか?

  2. > 板起こしですか? 
    具体的にどの曲がメタルマスターから?アセテート盤から?通常の盤から?音がおこされたのかは分からないですが、
    このテのジャンルにしては、かなり音はマシだと思います。
    一部あきらかに盤起こし的な音質の曲もありますが、大半の楽曲は良好な部類に属すると思います。
    > お手持ちのSPと比べるとやはり迫力に欠けますでしょうか?
    これはさすがに SP に軍配があがりました (笑)

  3. この手のジャケは好きですねぇ。
    正方形のLP時代にはなかった発想ですね。
    横長のCDケースになり、SPアルバム的デザインが復活といったところでしょうか。
    板起こしの件ですが、以前、どこかのブログで私のmodern sax stylistsを紹介していました。
    そこには、原盤が入手出来なかったのか、市販されたSPを使っているようだと書かれていました。 よって、音も悪いが仕方がないですって。 復刻は難しいです。ハイ

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