2011年10月19日。この日のことは一生忘れないでしょう。
すべての始まりは一昨年の2009年11月、 愛用するフォノイコライザー Musical Surroundings Phonomena のバッテリーの寿命がきたため、交換バッテリーキットを アメリカから取り寄せて交換した ことでした。2004年に海外から中古で購入した Musical Surroundings Phonomena + BPS (Battery Power Supply) は日本の代理店がないため、販売会社である Musical Surroundings 社に了承を得たのち、開発者・製作者である Michael Yee さんに直接問い合わせ、交換用バッテリーキットを購入、郵送してもらったのでした。
もともとの仕様は8セルパック x 2 だったのですが、現在の仕様では 7セル + 8セルになっているとのことで、以前書いたように 交換自体は無事終了しました。しかし、バッテリー充電モードとバッテリー駆動モードの切り替えがスムーズに行われなかったり、満充電されているはずなのに、すぐに充電モードに切り替わったりと、真価を発揮できないままだましだまし使っていました。
その間にも Michael Yee さんに何度もメールで相談にのってもらったりしていました。てはじめにバッテリーユニットの基盤の最新リビジョンをご好意で譲ってもらいました(もとは Rev. 3、送っていただいたのは Rev. 5 でした)が、それでも症状は改善せず。ですので、ここ2年間は、せっかくバッテリーユニットがつながっているのに、バッテリー駆動ではない状態で使っていました。それでも十分満足のいく再生音なのですが、バッテリーユニット駆動の音を知ってしまっている以上、なにか物足りなさを感じていたのも事実です。
(左が元々ついていた Rev. 3 の基盤。右が送って頂いた Rev. 5 の基盤)
大変辛抱強く、そして献身的にメール上で相談に乗ってくださる Michael Yee さん。わたしも愛用する製品とあって、なんとか本来の状態で使用してあげたい。そんな思いで Michael さんとやりとりするうち、直接会ったことがあるわけでもないのに、とても親しい友人になったような気がしました(これは Michael さんの人柄の賜物だと思います)。年があけ2011年。3月の震災の時にもまっさきにメールを下さいました。(後日談:2013年11月に Michael さんが来日した時に、会うことができました。)
しかし Phonomena バッテリーユニットの不具合はいまだ解決に至りませんでした。また、もとからついていた Rev. 3 基盤がついに死去してしまうハプニングも重なりました。その際は、緊急避難的に、またまたご好意で AC アダプター(バッテリーユニットを介さず直接単体で使うためのもの)を送ってもらったりしました。
そんなこんなで2011年4月、Michael さんが、ついに根本的な解決策を見つけた、とメールを下さいました。
手元でテストを繰り返した結果、バッテリーユニットが正常に動作しない原因をやっと特定した。バッテリーのサイズを7セルに揃え、基盤上の抵抗を2つ交換することになる。これで解決できると思われるけれども、本体をこちらに送ってもらわないといけない。
そこで、代わりに、うちのラボで余っている SuperNova を Kohji さんに進呈してもいいのだけれども、興味はありますか? ここにあるのは初代 SuperNova で、フォノ入力3系統だけれども、これをちょいちょいと改造して、フォノ入力2系統 + ライン入力1系統のSuperNova II 相当にすることもできる。どうします?
夢にまでみた Musical Surroundings SuperNova II。。。身に余る光栄。。。
それはもう、一も二もなく速攻でお返事致しましたとも。
多忙な Michael さんからの連絡を辛抱強く待ち続けること半年、9月下旬に「やっと作業が完了した。来週には届くように送るので」と連絡を頂きました。さあ、いよいよです。愛する Phonomena のお兄さん格、Michael さんの手によるフォノイコの最高グレード、SuperNova II がやってくる。その前にアンプのパワー管を換えておこう。ついこの前、パラシングル駆動の300Bのうち、左チャンネルの1本が寿命で、本来の状態ではないことに気づいたところなので。。。
で、価格や評価を参考にしつつ品定めを行い、カナダの業者から Shuguang 300B-98B のマッチドペア x 2、計4本を購入しました。 今のレートだと1本あたり1万円前後 + 送料ですから、とてもリーズナブルです。
慎重に前のトライオード純正300Bを外し、300B-98B を装着。裏返しで電源投入、基盤上にテスターをあててバイアス調整を行い、さて 4本とも適正値にそろえられたと思ったその瞬間。。。
300Bのカソードにつながっている 10Ωの抵抗が焼損し、部屋は煙と焼けた臭いで充満。。。
焼損した抵抗は、寿命がきていた300Bに接続されていたものなので、恐らく、300B が死んでいたのに気付かず数時間使っているうちに抵抗に負荷がかかり、新しい球をつないで通電したときに死去したのではないかと思われます。アンプの製造メーカーにメールで問い合わせたところ、Shuguang の 300B の初期不良の可能性も捨てきれない、とのご意見でしたが。。。
その後、カナダの業者に返品手続きをとり、代わりに JJ 300B を送ってもらうようメールでやりとりしました。
その直後に Michael さんから SuperNova II 到着。。。せっかくご対面したのに、アンプが壊れていて聴けないという不幸。。。
で、9月末日に、やっとこさ JJ 300B が到着。これを携えて アンプの製造メーカー に持ち込み、修理を依頼。
修理が済み、受け取ったのが10月18日。いつものように、丁寧な応対、丁寧な作業、良心的な修理料金で、感謝致します。
で、やっとこさ、10月19日にはじめて音出しをしてみたのでした。
まずは、従来からの Phonomena (バッテリーユニット非使用の状態)で、修理からあがり球が替わったアンプの音からチェック。まだエージングが十分とはいえませんが、基本的にトライオード純正の球と同系統の音で、より低音域が豊かになった印象があります。音源によってはじゃっかん下が出過ぎでふくらむ時があるので、スピーカーのセッティングなどを少し見直す必要はあるでしょうか。
ともあれ約2ヶ月ぶりの音。ずっと PC やカーオーディオやヘッドフォン経由 iPhone などで我慢してきただけあって、格別です。。。
そして、Phonomena を外し、SuperNova II につなぎ換えて、いざ試聴。
このフォノイコはユニークで、完全デュアルモノーラル構成(バッテリーユニット内も、左チャンネル用と右チャンネル用のバッテリに完全に分かれています)。また上述の通り、2系統のフォノ入力を備え、Phonomena と同様に、インピーダンス(30Ω〜100,000Ω)とゲイン(40dB〜60dB)、およびキャパシタンス(200pF or 300pF)をディップスイッチで細かく微調整できます。新旧とりまぜさまざまなカートリッジを使い分ける身としては、これは本当に助かる必須機能です。
(2系統のフォノ入力と1系統のライン入力。インピーダンスとゲイン設定のディップスイッチが並ぶ)
(元は初代SuperNovaだったものを改造してII相当にしているため、ライン入力部分に「Phono 3」と印刷されています)
2系統のフォノ入力のほか、ライン入力を1つ備えています(初代 SuperNova はフォノ入力3系統でした)。内蔵するアッティネーターを使い、3系統のセレクタとしてパワーアンプに直接接続することも可能です。もちろん、アッティネータを介さず、固定出力をダイレクトにプリアンプやプリメインアンプに流すことも可能です。更にユニークなことに、アッティネーターは11段階、しかも Mute、-17dB〜0dB という極端に限定されたものです。これは Michael Yee さんの ”Most Audio systems have far too much gain.” “The limited attenuator has a major advantage over a passive attenuator. A passive attenuator typically has significant output impedance creating sensitivity to the particular type of output cable.” という設計思想によるものです。
(SuperNova II とバッテリーユニットのフロントビュー)
(本来 SuperNova II には足がついていますが、この個体には付属していません)
(また余りの足が見つかったら、送って下さるとのことです 笑)
このアッティネーターをうちのシステムでどう活用していくかはおいおい考えるとして、とりあえずはダイレクト出力でアンプに接続してみます。
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うちのリスニングルーム(ふつうの和室)、うちの現システム、とくに現スピーカー(4312BMkII)では、その恐るべき真価を十二分に享受できていないことは、レコードの針が最初の無音部に降りた瞬間に分かりました。
恐るべき静寂性。恐ろしく緻密で、恐ろしくクリアで、恐ろしく空気感が感じられ、それでいて無機質ではない、あの十二分に透明感あふれる Phonomena から更にヴェールを2枚ほど剥がしたかのような音の感触。鳥肌がたちまくりでした。
もっとちゃんとしたセッティングで、もっとちゃんとしたリスニングルームで、もっとちゃんとしたコンポーネントと組み合わせたら、いったいどんなすごいことになるんでしょうか、というレベル。私が自宅で音楽を普通に楽しむのには正直あまりにもオーバースペックかもしれません。
アンプの球のエージングを進め、プレーヤーやスピーカーのセッティングを見直し、とりあえず現状のシステムでも SuperNova II の真価を少しでも多く感じ取れるようにしなければ、と思いました。
Michael Yee さん。本当にありがとうございます。あなたの生み出すすべての製品を心から愛しています。7年前にフォノイコをグレードアップしようと思い立ったときに、偶然 web で Phonomena のことを知り、日本未発売の製品でしたが、並行輸入でなんとか新古品を手に入れてからというもの、レコード再生の時には常にそこにあり、絶対的な信頼を寄せるコンポーネントでした。そして今、その Phonomena のコンセプトをより突き詰めてこれ以上ないレベルに至らんとする SuperNova II で、鳥肌がたちました。Phonomena を手に入れ、初めて音を聴いた時と同じ感動でした。
日本では、正規代理店の 株式会社ステラ から販売されており、ステラダイレクト(オンラインショップ)他から購入可能です。
「Damping Motor Vibrations with Sorbothane」に続く . . .
ご無沙汰しております。いつもありがとうございます。gyrodecのスピンドルのオイル補充について教えて頂きたく存じます。
オイルを補充する場合には現在使用しているオイルを一度綺麗に抜き取り、拭き取った方が良いのでしょうか?その場合の手順はどのようにするのが正しいでしょうか?吹き取りなどが必要ない場合はそのまま補充してしまっても問題ないのでしょうか?どのように対応するのが一番良いでしょうか?私的には拭き取り、抜き取りの手順が必要と感じているのですが、なかなか綺麗に除去するのは難しそうですね。ご教示お願いいたします。
実は、完全に拭き取ったことはないです(笑)過去20年間では軽微な補充がメインで、たまに不織布などで吸い取らせてから補充したことが数回ある程度です。なにせ、自動車のエンジンとは違って、たいした回転数ではないので、スラッジが大量発生するわけでもありませんし(笑)
ご返答ありがとうございました。ご回答をいただいたので、早速スピンドルオイルを補充しようと思います。底から、2mm程度の量を入れるように書いてあったと思うので、早速そのようにしてみたいと思います。なんせ、オプションターンテーブルとターンテーブルシートを使用しているので結構重量が掛かるのでは?心配しておりました。まずは細めの注油が必要ですよね。下手な考え休むに似たりでした。ありがとうございました。電源を新しくしたいと思っているのですが、この円安傾向でそれもハードルが高くなってしまいました。中古でもいいのです、手に入ればと思ってみてはいるのですが、なかなか巡り会いません。ebyもごくたまに見かけますが、新品と変わらない値段です。(泣)