もうあれから2週間も経ってしまいました。 先日最終回を迎えた 音楽夢くらぶ (NHK)。 その3月16日放送分に HIS が出演してから。
楽曲と演奏のあまりの素晴らしさに TV の前で涙を流してから、もう 2週間も経ってしまいました。
![[幸せハッピー]](https://microgroove.jp/img/TOCT4878_F.jpg)
Oh, My Love〜ラジオから愛のうた〜 c/w 幸せハッピー / 坂本冬美
(東芝 EMI TOCT-4878)
昨年、坂本冬美名義でリリースされたこのマキシシングルが、実質的な HIS の活動復活第1弾となりました。 2曲とも、作詞が忌野清志郎、作曲編曲が細野晴臣、リードヴォーカルが坂本冬美という組み合わせで、 ベクトルの全く異なる3人の個性が絶妙にバランスした素晴らしい歌謡曲に仕上がっていますが、 どういうわけか、ミキシングがいまいちで音が若干割れているのが気になりますし、 本盤のアレンジも、細野さんとしては珍しく、かなりやっつけ仕事風で、若干雑さが目立っているのが残念です。 曲自体はとてもいいのですが…
ところが、上述の TV 出演です。1st アルバム「日本の人」からの「パープルヘイズ音頭」と「500マイル」の 2曲も、アルバム同様完璧なアレンジで素晴らしい演奏を聴かせてくれましたが、最後に演奏された「幸せハッピー」が最高に素晴らしかった。ここで号泣。コシミハルさんのアコーディオン、徳武弘文さんのギターなど、バックのミュージシャンも豪華そのもの。
しかも番組前半では薬師丸ひろ子さんが懐かしの名曲を歌ってくれるという素晴らしいおまけつき。
なんてことのない日常をほんわかした視点から切り取った歌詞で心ゆさぶり、「500マイル」でも聴かせる圧倒的な存在感のヴォーカル。完全無敵なヘタウマ とはまさに忌野清志郎さんの為にある言葉でしょう。一方で Timers や初期の RC サクセションの様なアナーキーな側面も有しているこの愛すべきおじさんは、本当に日本の音楽界の宝です。
なんだかんだいって問答無用の 圧倒的な歌唱力、しかも「演歌」というジャンルに留まらない貪欲さをみせる活躍が素晴らしい坂本冬美さん。とにかく楽しそうなのがいい。
そして、これだけハイクオリティーな「歌謡曲」に仕立てられているのは細野晴臣さんがきっちりアレンジしているからこそ。しかもこの TV 放送では、細野さんの感動的なベース演奏まで観られる/聴けるとあって、30分番組の後半12〜3分だけの出番でしたが、1秒たりとも見逃せないものでした。シングルではその魅力があまり伝わらなかった「幸せハッピー」が、このスタジオライブで最高の演奏となったことに感謝の気持ちでいっぱいです。
![[日本の人]](https://microgroove.jp/img/TOCT11103_F.jpg)
![[日本の人]](https://microgroove.jp/img/TOCT11103_B.jpg)
日本の人 / HIS
(東芝 EMI TOCT-11103)
改めて、1991年、いや、平成3年リリースのこのアルバムの偉大さに感服します。このアルバムでは「恋のチュンガ」と「日本の人」を除いて、全体的に忌野さん色が強く、細野さんのファンからは若干物足りなさを感じられることもあるみたいですが、それにしてもこの完璧な作りには畏れおののくばかりです。
誰もが大名曲として絶賛する「日本の人」 (細野さんのインスト「中国の人」に忌野さんの歌詞がのったもの) といい。
忌野ワールド大全開の楽しい「渡り鳥」や大爆笑エロエロソング「スキー・スキー」といい。
アナザー忌野ワールド全開のおセンチな「500マイル」「セラピー」といい。
全曲を通底して完璧に作りこまれたアレンジメントといい。
打ち込み音が多いのにも関わらずアコースティックな響きが非常に印象的な秀逸なミキシングといい。
サビだけに力を注いだ挙げ句に、それ以外の部分がどうでもいい心に残らないつまらない旋律をうねうねと上下する最近の J-POP とは違い、ヴァースから、イントロから、最後の最後まで、一切捨てメロディーが存在しない完璧な作曲といい。
これこそ「平成の歌謡曲」ですね。日本の歌謡曲もまだまだ捨てたものじゃない。
本当に出るのかどうなのか分かりませんが、是非とも15年振りにニューアルバムを作って頂きたい。
2006年2月25日に大坂城ホールで開催された 「[新]ナニワサリバンショー」 が、4月15日 BS2 でオンエアーされるそうです。 このイベントで HIS は 5曲を披露。そのうち何曲が BS2 で流れるのか分かりませんが、今からかなり楽しみです。
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- [新]ナニワサリバンショー (2006/04/17)
HIS 出演の音楽夢くらぶ 放送からずっと、どれだけこの日を待ち望んでいたことか。 2006年2月25日、大坂城ホールでの [新]ナニワサリバンショー の放送。 やっとこさ、4月15日が、NHK BS2 にてライブ映像が放送される日が、やってきました。 4時間半の一大イヴェントを1時間半の放送枠に収めるわけですから、相当編集されてしまうのは仕方ありません。特に若手のバンドなどは、演奏シーンが2〜30秒映って終わり、なんてのもありました。この辺りは、実際にコンサートに行っていない私にとってはちょっと不満でしたし、一番期待に胸を膨らませていた HIS 出演シーンは、5曲中 2曲しか放送されなかった (放送されなかったのは「ラジオから愛の歌」「POMPOM蒸気」「幸せハッピー」)。 がー、残り3曲も聴きたかったぞ。がっくし。 とはいっても、これは忌野さんがメインのライブですからね。とにかく忌野さん、最初から飛ばしまくりでカッチョエー。JB や Otis Redding のライブ (更に Beatles の Sgt. Peppers’… ) をオマージュした演出や歌唱、アレンジも最高だし (僕が唯一行ったことのある忌野さんのライブは、あの Booker T & The MGs とジョイントだった、1992年4月、大阪厚生年金会館でのものでした)。 そして最後の数曲での、チャボさんとの共演。これはディープな RC/忌野/仲井戸マニアでない私ですら、ウルウルきましたよ。感動的な場面、そして感動的な演奏でした。 [新]ナニワサリバンショー (at funky802.com) 新ナニワサリバンショーに行って来たぞ… - 忌野清志郎 フジテレビアーカイブス完全版 (その1) (2009/07/23)
2009年7月17日〜18日、8時間にも渡って、忌野清志郎 フジテレビアーカイブス 完全版 という奇跡的な番組が フジテレビ NEXT チャンネルで放送されました。 フジテレビが所蔵する演奏シーンを、余計な解説や編集も抜きで、ただひたすら時系列に放送してくれるというもので、放送当時に見た懐かしい演奏から、初めて目にする貴重なものまで、圧倒的な放送でした。 無理なお願いにも関わらず長時間録画してくれた takuo さん、ホントにありがとうございます。おかげで観ることができました。 (どうでもいい前書き) 時に屈折しジメジメと後ろ向きな表現者、時にパンクな不良を演じたパフォーマー、時にあっけらかんと純朴に愛を信じ。結局キャリア全体を通じて、いつも背伸びすることなく自分にどこまでも正直な等身大の生身の表現者で。 日本語による歌詞を天才的なセンスで紡ぎ出す才能に溢れ、唯一無二の声の持ち主で、サザン・ソウルやファンク、1960年代ロックやフォークのエッセンスを絶妙にかつ自然にブレンドする能力に長け、、、 書き出したらきりがないですが、個人的に最も強く感銘を受けた忌野さんの特質は、 歌詞やメロディ、アレンジ、唱法などが完全に不可分 という点です。 ごく一時期の、ごく一部の例外はあるにはあるものの、基本的にどの曲も、いつ歌っていても、常にアレンジ、歌い方、キー、更にはテンポまでもが、常に ほぼ 同一であったというのは、これだけ長いキャリアを持つシンガー・ミュージシャンとしては奇跡的なことかもしれません。 バンドの編成などにより若干の変化はあるものの、基本となるアレンジはいつもほぼ一緒。なのにどのパフォーマンスも「こなれた」「ヤレた」感じが全くない。 普通、何百回も何千回も演奏し、歌ってきたら、歌手・演奏者として「飽き」てしまうように思うんですよ。それで、軽く歌ってしまったりとか、アレンジもラフになってきてしまったりとか、あるいは飽きないように全然違うテンポで全然違うアレンジにしなおしてみたりとか。 そういうことをほとんどやってこなかったのに、どのパフォーマンスもほとんどが素晴らしい。リスナーとしてファンとしてもう完全に耳タコになっている「スローバラード」「雨上がりの夜空に」「トランジスタラジオ」あたりであっても、何十年も前のリリース時から昨年の「完全復活祭」の時まで、一貫してほぼ同一アレンジ・テンポ・キー・唱法。それなのに、ほとんどのパフォーマンスが素晴らしい。 限りなくインプロビゼーションがゼロなのに、ソロ・トリオ・カルテット・オーケストラ等どのフォーマットでも演奏がほとんど同じなのに、すべてが素晴らしいと感じられてしまう セロニアス・モンク (Thelonious Monk) の隠れ(?)名曲「クレプスキュール・ウィズ・ネリー」(Crepuscule with Nellie) という曲があります。 上に書いた忌野さんの特質に感服するたびに、演奏する姿勢や音楽に対する姿勢というか、そういうものまで含めて、いつもモンクの「クレプスキュール・ウィズ・ネリー」のことを思い出してしまうのです。 1981年 2月16日「夜のヒットスタジオ」 / RC サクセション トランジスタ・ラジオ RC サクセションとしての「夜のヒットスタジオ」初出演時の演奏。 さぞ番組内で他の出演者から浮いていたことでしょう。 後半、セーラー服を着たスクールメイツが突然現れてダンスし始めるのですが、この陳腐な演出が時代を感じさせます。 - 忌野清志郎 フジテレビアーカイブス完全版 (その2) (2009/08/05)
少し間があいてしまいましたが、前回の「その1」に引き続き、 2009年7月17日〜18日、フジテレビ NEXT チャンネルで 8時間にも渡って放送された 忌野清志郎 フジテレビアーカイブス 完全版 という番組の後半部分レビューです。 渾身のナッシュビル三部作が不発に終わり、怒涛のインディーズ時代 に突入するわけですが、今回の放送で最も貴重 (再放送されにくい) な部分は、個人的にはこの時代ではないかと思います。音楽的にも非常に充実していた時期で、見応え、聞き応え満点です。 また、2003年のアルバム「KING」から RC 時代を彷彿とさせ、かつ以前より熟成された完成型王道忌野ロックに回帰していきますが、そこに至る前にたくさんの冒険・遊び・尖った演奏をしていたからこそ、晩年の円熟味を増した歌唱・演奏・ステージに至ることが出来たんだと思います。 その前に余談ですが、ブルース・インターアクションズ から2002年12月10日に発売された季刊誌「ロック画報 (10) RCサクセションに捧ぐ」が復刊されたようです。1972年頃、オリジナルメンバ3人時代による凄まじい演奏の未発表ライブが付録 CD に収録されていることと、オリジナルメンバの 破廉ケンチ さん (1977年頃?に脱退) が、忌野さんと共に応じたインタビューが非常に貴重です。再度売り切れる前に是非お求めあれ。。。 ロック画報 第10号 (特集: RCサクセションに捧ぐ) この本を Amazon.co.jp で買う 1997年 6月 6日「Live ’97 ニュース JAPAN: YOL~300秒の肖像~」 / PONTA BOX w/ 忌野清志郎 スペシャルメドレー からすの赤ちゃん ロックン仁義 争いの河 Love - R.I.P. Kiyoshiro Imawano, Godfather of Japan Music Scene (2009/05/02)
ATP マスターズ1000 ローマ大会準決勝第1試合 (フェデラー対ジョコビッチ) をテレビ観戦中に耳にしたこの訃報。あまりの衝撃に呆然としてしまっています。。。 まだまだ元気に活動していただきたかったのに。まだまだアホでエロでファンキーでクールでピュアで大人げない音楽を聴かせてほしかったのに。 忌野清志郎 さん、いくらなんでも、まだ早すぎますよ。。。 あのアルバムがどうの、あの時のライブ演奏がどうの、あのユニットがどうの、あのテレビ出演の時がどうの、あのドキュメンタリーがどうの、とか、そういうことを今書いていられる精神的状況ではないです。そんなことを思い出しただけで泣いてしまいそうやから。。。 (翌日。ちょっと落ち着いてきたので下にあれこれ貼っておきました。) (幸せハッピー / HIS) (夜空の誓い / H.I.S.) (タイマーズのテーマ〜FM東京〜デイドリーム・ビリーバー〜イモ〜リプリーズ / The Timers) (あこがれの北朝鮮 / with 泉谷しげる) (君が僕を知ってる / Kiyoshiro & Chabo) (2時間35分 / RC - 大人ノ科學マガジン – 蓄音機 (2004/12/18)
レコード愛好家の間で噂の 学研 大人の科学マガジン の 06号「レコード盤録再蓄音機」を遅ればせながら購入しました。 かなりチープな作りとはいえ、実際にパーツを組み立て、音声やら歌やらを録音し再生できること自体はとても素朴で楽しく、ベルリナーが発明した原理を実際に体験できるということは面白いのは勿論なのですが。 私がより感心したのは付属のブックレット。エジソン〜ベルリナーから始まる音の記録とその機械の歴史はもちろんのこと、付属のソノシート作成の際のカッティング工場の様子、そしてもちろんラッカー〜マスター〜マザー〜スタンパーの話まで仔細に書かれており、しかもその文面の節々に「これは相当造詣のある人が監修にあたっているんやろうな」と思わせる香りが漂っています。レコードコレクターやオーディオマニアではない人が読んでも楽しめる様に平易に書かれている反面、マニアが突っ込みをいれそうな箇所では、それらしきこともちゃんと匂わせている。これは凄い。カッティング工場での各工程の写真も非常に興味深いですし、ちゃんとマスタリング/カッティングエンジニアへのインタビューも忘れておらず、あの小鐡徹さんまでひっぱりだしています。 いやはや、これは予想外に面白い号だった様です。実によく構成されていて、レコードというもの/テクノロジーに少しでも興味のある人には文句なしにお勧めです。そこらへんのしょぼいオーディオ雑誌を年間購読するよりも、この号を一冊買って遊び倒して読みつくす方が、どれだけオーディオファイル入門として役に立つことか。 わたし個人的には、知っている話ばかりではありましたが、こういう内容を写真/図版入りで一般人向けに平易に解説していて、しかも付録で実体験できるようになっている、というこの企画には、大変感銘を受けました。… - The Stairs’ Four Maxi Singles (2006/08/22)
As I mentioned in the past article, I love The Stairs and Edgar Jones (aka Edgar Summertyme) so much. The Stairs released four maxi singles in 1991-1992, as well as their only album. The maxi singles contains innevitable tracks which cannot be heard on the album. Also, they contains cover versions of very scarce 1960s
はじめまして。TBありがとうございます。
HISの素晴らしいレヴューを楽しませていただきました。新ナニサリがなければ評価は決して高くなかっただろうし、それどころか忘れ去られてしまう可能性もあったユニットです。
そんなこともあり、私もニュー・アルバムは期待したいですね。
Blue さん、コメントありがとうございます。
ところで「音楽夢くらぶ」の冒頭に、1991年当時のスタジオライブと思しき演奏シーン (夜空の誓い) が写っていましたよね。この時って何曲演奏したんでしょうね。是非完全版で観てみたいものです。