Jazz Winds From A New Direction / Hank Garland

時は1960年7月4日、場所はロードアイランド州ニューポートのとある邸宅。ここで興味深いレコーディングが行われ、レコード化されたのでした。

It was on July 4, 1960 at a certain beautiful mansion in Newport, Rhode Island, where and when an interesting recording session was made for vinyl release.

[RCA Victor LPM-2302 Front Cover]      [RCA Victor LPM-2302 Back Cover]

After The Riot At Newport / The Nashville All-Stars
(RCA Victor [US] LPM-2302)
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AFTER THE RIOT AT NEWPORT

ナッシュビルで活躍する名うてのセッションミュージシャンで構成されたグループ、ナッシュビル・オールスターズ (The Nashville All-Stars) は、1960年のニューポートジャズフェスティバルに出演する予定でした。しかし、7月初旬にニューポートで起こった暴動のため、全日程を消化できぬまま、コンサートは途中でキャンセルされてしまい、このバンドがステージに立つことはありませんでした。その代わり、このバンドをニューポートに連れてきたレコード会社がフェスティバル期間中に借りていた邸宅にて、興味深いライブレコーディングが行われました。ジョージ・ウェイン (George Wein) によるライナーノーツから一部を引用します:

. . . 残りのコンサートがキャンセルになったことが明らかになって、ベン・ロスナー (Ben Rosner) の脳裏に名案がうかんだのであった。すなわち、邸宅の芝地でパーティを開催し、その際にこのミュージシャン達にジャムセッションをやってもらう、そしてそれをレコーディングする、というものである。こうしてぽかぽか陽気の月曜日午後に、このレコードに収録されている演奏が録音されたのであった。偶然というべきか、ここに収録された楽曲のうち重要な 2曲は、今回のライブ出演のために書き下ろされたものであった。チェット・アトキンス (Chet Atkins) が作曲した “Nashville To Newport” と、ブーツ・ランドルフ (Boots Randolph) とハンク・ガーランド (Hank Garland) が本セッションの前夜に共作した “Riot-Chous” がそれである。後者は、本セッションの前日に起こった大暴動の直後に作られたものである。

A group of talented session musicians, under the name of The Nashville All-Stars, was to appear on the stage of 1960 Newport Jazz Festival. However, because of the riots at Newport in early July 1960, the remainder of the concert was cancelled, and the Nashville All-Stars did not appear on stage. Instead, an interesting jam session was recorded at a beautiful mansion where RCA Victor Records (responsible for bringing these Nashville musicians to Newport) rented. Here is an excerpt of the original liner-notes by George Wein which describes the story behind the recording:

. . . When it became obvious that the reminder of the concert was canceled, Ben Rosner thought it a good idea to have a party on the lawn and record the musicians at a jam session. The music on this disc is what transpired that sunny Monday afternoon. Incidentally, but importantly, two selections in the album were composed for the occasion. Chet Atkins penned “Nashville to Newport”, and Boots Randolph with Hank Garland extemporized “Riot-Chous” the night before the session – right after the big riot.

ここで演奏しているミュージシャンのほとんどは、ナッシュビルのカントリー界隈では神と崇め奉られる程の腕利きミュージシャンばかりで、信じられない程のレコーディング頻度で数々のミュージシャンのバックをつとめていました。エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley)エヴァリー・ブラザーズ (Everly Brothers)ロイ・オービソン (Roy Orbison) といったビッグネームのスタジオセッションの常連でもありました。まさにこの時代のナッシュビルサウンドの「顔」とも言える面々です。その彼らが、仕事が終わると夜な夜なナッシュビルのクラブで「ジャズの」ジャムセッションを繰り広げていたといいます。果してそれはどんなものなのか? このアルバムには、そんな興味深い演奏が収録されているわけです。

Most members of the Nashville All-Stars here, are legendary, widely accepted and famous studio musicians of Country & Western field in Nashville. They appeared on lots of various recording sessions in Nashville, as well as they performed so many times as backing musicians of such big names as Elvis Presley, Everly Brothers and Roy Orbison. This album captures very interesting performances – what will happen if such talented C&W musicians play Jazz seriously? Actually they also have a great love for Jazz, as well as their profession of C&W music. According to the liner notes, In after hours they find their way to a little club in Nashville where they switch styles and start “swinging,” far into the early hours of the morning . . .

( . . . and the rest of the English edition of this article will be available in the near future I hope . . . )




C&W MUSICIANS WITH A GREAT LOVE FOR JAZZ

[RCA Victor LPM-2302 Side-A]      [RCA Victor LPM-2302 Side-B]

あくまでわたし個人の印象ですが、純粋なジャズアルバムとして聴いた場合、残念ながら1ランク2ランク下がると言わざるを得ません。幾多のジャズ名盤といわれるアルバムに比べてしまうと、ですが。

カントリーサウンドのドラムスタイルを作り上げたといって過言ではない伝説の名手 バディ・ハーマン (Buddy Herman) も、ストレートアヘッドなアップテンポスウィンガー B-1 “’S Wonderful” では、1拍目のバスドラをつい多用してしまったりと、どたばたとしたドラミングになってしまっているのがほほえましいです。

偉大なるベーススタイリスト ボブ・ムーア (Bob Moore) (ロイ・オービソンの “Oh, Pretty Woman” やサイモン&ガーファンクルの “Bridge Over Troubled Water” を始め、数え切れない程のセッションで素晴らしい演奏を残されてきた) も、アコースティックベースでの 4ビートはさすがに不慣れなのか、後乗りでリズムをキープするので精一杯という感じです。

のちに自身の “Yakety Sax” を大ヒットさせ、幾多のポップ / ロックミュージシャンとも競演した ブーツ・ランドルフ (Boots Randolph) のコテコテ系サックスは非常に面白いフレージングですし、なにをやってもジャズをやっても、結局はなんでもこの人のサウンドになってしまう、さすがの名プレーヤー チェット・アトキンス (Chet Atkins) のソロ(A-2 “Nashville To Newport”B-3 “Frankie And Johnny” で聴けます)は、ジャズとカントリーの秀逸なクロスオーバーといえる程の興味深い出来です。特に B-3 “Frankie And Johnny” でのギターソロは、ぎりぎりジャズに聴こえなくもないけれども、やっぱり冷静に聴くとちっともジャズではない (笑) という、珠玉の名演!! ブレントン・バンクス (Brenton Banks) のヴァイオリンとピアノは、意外に (?) まっとうで、ジャズとして結構イケます。

ところが、です。ここに参加しているミュージシャンのうち 2人は、もう本アルバムそのまんまの状態で、ジャズとしても素晴らしい演奏をされている。しかも、カントリーミュージシャンの余興とかそういうレベルを越えて、極上のジャズ演奏を聴かせてくれるのです。

ひとりはあの ゲイリー・バートン (Gary Burton) で、ここでは弱冠17歳の時のプレイ (恐らく最初期のレコーディングでしょう) が聴かれますが、あまりスウィンギーに過ぎず、あまりメタリックに過ぎず、溌剌とかつ丁寧に一音一音を敷き詰めるそのプレイは、のちの大活躍を彷彿とさせるものです。

そしてもうひとりが、今回の記事の主役 ハンク・ガーランド (Hank Garland)。チェット・アトキンスと並び、ナッシュビルサウンドの屋台骨を支えてきた名手ですが、そのフレージングといい、ハーモニーといい、音色といい、バッキングの仕方といい、完璧なスタイリストです。完璧なジャズギターです。しかも極上のジャズギター。そのプレイは バーニー・ケッセル (Barney Kesesl) 辺りを彷彿とさせ、チャーリー・クリスチャン (Charlie Christian) 系の王道をいくものです。カントリーを演奏している時でもジャズのフィーリングを感じさせる最高のスタイリストであり、同時にジャズをやらせてもカントリーの良さとブルースのフレーバーをちりばめた最高級のプレイが可能なギタリストだなんて、それはもうとんでもない事件だったに違いありません。本アルバムでは、ピアノトリオの 1曲を除いて全曲でフィーチャーされていますが、バッキングの時もソロの時も存在感たっぷりの演奏を聴かせてくれます。曲によってはせっかくのソロなのに若干オフマイク気味のミックスなのが残念ですが . . .

A-1: Relaxin’ (Jimmy Guinn)
A-2: Nashville To Newport (Chet Atkins)
A-3: Opus De Funk (Horace Silver)
 
B-1: ‘S Wonderful (G & I Gershwin)
B-2: ‘Round Midnight (Thelonious Monk)
B-3: Frankie And Johnny (P.D.)
B-4: Riot-Chous (Boots Randolph – Hank Garland)
 
Boots Randolph (as on A-1, A-3, ts on A-2, B-4),
Chet Atkins (g on A-2, B-3), Hank Garland (g except B-2, B-3),
Brenton Banks (p on A-1, B-1, B-2, vln on A-3, B-4), Floyd Cramer (p on A-2, A-3, B-3, B-4),
Gary Burton (vib except B-2, B-3), Bob Moore (b), Buddy Herman (ds).
 
Recorded in Newport, RI on July 4, 1960.




SUGAR FOOT RAG

さて、このハンク・ガーランド。ナッシュビルを代表するセッションギタリストとなる前にはどんな活動をされていたのでしょう? Web で見付けた 詳細なバイオグラフィー (元々は Guitar Magazine 誌の 1981年1月号に掲載されたものだそうです) によると、1930年生まれの彼がプロへの第一歩を踏み出したのは 1945年のこと、カントリーミュージシャンの登竜門である Grand Ole Opry のメンバー、ポール・ハワード (Paul Howard) と楽器店でたまたま遭遇したことがきっかけで、Grand Ole Opry で演奏するようになったそうです。ただし 15歳という年齢のため、8週間だけ演奏に参加したのち一旦地元へ戻り、16歳になってから再びナッシュビルにおもむき本格的にプロ活動を始めたそうです。この頃、アーネスト・タブ (Ernest Tubb) バンドのギタリスト ビリー・バード (Billy Byrd) の影響を受けて、本格的にジャズへの興味を強めていったとのこと。そのビリー・バードは、ナッシュビルのベテランギタリスト ハロルド・ブラッドリー (Harold Bradley) とチャーリークリスチャンのナンバーをジャムったりして腕を磨いてきた人物でした。

ジャズへの思いは強くなる一方でしたが、当時のナッシュビルではジャズでは食っていけるはずもなく、ボブ・フォスター (Bob Foster) 率いる カウボーイ・コパス (Cowboy Copas) というバンドに所属し、スタジオミュージシャンとして多くのレコーディングに参加していたハンク・ガーランド。当時は ジャンゴ・ラインハルト (Django Reinhardt) にゾッコンだったそうで、毎日の様にジャンゴのレコードを聴き、そのプレイを研究していたんだとか。彼にジャンゴを聴くように勧めたのは盟友チェット・アトキンスだったそうです。

そして 1949年、コパスを脱退してフリーのスタジオミュージシャンとして活動を開始。その中から生まれたのが、彼の名前を一躍有名にした自作曲 Sugarfoot Rag でした。この曲はもともと Decca レーベルに吹き込まれた レッド・フォーリー (Red Foley) のミリオンセラー “Chattanoogie Shoe Shine Boy” (1949年11月8日録音) の B面で、もともとはインストゥルメンタルであったものに歌詞をつけたバージョンでしたが、ハンク・ガーランドの名がレーベルにクレジットされ、19歳になったばかりの彼の名前が一気に注目されることとなったのでした。これをきっかけに、セッションミュージシャンとしての仕事の他に、自己名義でのソロ録音もこなしていくようになります。

[Country Music Hall Of Fame]

Country Music Fall Of Fame / Red Foley
(MCA [US] MCAD-10084)

彼自身のリーダー録音も、1949年〜1951年にかけて、同じく Decca レーベル に残され、当時は 8枚の SP としてリリースされました。現在では CD にまとめられており、容易に聴くことが可能です。カントリーという枠を越えたスウィングっぷりが素晴らしく、また実にバリエーション豊かでチャレンジ精神旺盛なギターが堪能できるという、極上の録音集で、ジャズギターファンにも文句なくお薦めできます。特に “Sugarfoot Rag” (インストバージョン)、“Sugarfoot Boogie” (ジャンゴばりのギターソロが凄すぎる)、“Hilbilly Express” (ギターの万華鏡)、“Baby Guitar” (ジャズギタリストでこんなに弾ける人は果しているのか?!) あたりは格好良すぎて失神してしまいそうな程の出来です。

[Hank Garland And His Sugar Footers]

Hank Garland And His Sugar Footers
(Bear Family [G] BCD-15551)

さまざまなレーベルでセッションギタリストとして大忙しの中、1953年〜1954年には Dot レーベル にもリーダー録音を SP 5枚分残しています。現時点までに入手することが出来たハンク・ガーランドの SP は 2枚だけ、Decca 46382 (1951年録音) と Dot 15089 (1953年録音) です。上述の通り、どちらも最高にスウィングした、極上のギタープレイを堪能できる好演です。バックはトミー・ジャクソン (Tommy Jackson)、オーエン・ブラッドリー (Owen Bradley)、ハロルド・ブラッドリー (Harold Ray Bradley)、アーネスト・ニュートン (Ernest Newton) といったナッシュビルの盟友たちで固められています。

[Decca 46382 Side-A]      [Decca 46382 Side-B]

Hilbilly Express c/w E-String Rag / Hank Garland
(Decca [US] 46382)
[Dot 15089 Side-A]      [Dot 15089 Side-B]

Steel Guitar Rag c/w Moonlight On The Colorado / Hank “Sugarfoot” Garland
(Dot [US] 15089)

その後も数多くのセッションでギターを弾きまくり、エルビス・プレスリーの全米大ヒットによるロカビリー / ロックのムーブメント (多くのカントリーミュージシャンにとっては冬の時代) の中にあっても、ハンク・ガーランドは数々のロカビリー録音で起用され続け、ナッシュビルで毎日のようにレコーディングされたカントリー、ロック、ポップスのどこかに、彼のギターが必ず入っているといっていい程引っ張りだこだったようです。

私のメインの守備範囲である Mercury レーベル にもサイドマンとして多くの録音を残しているようです。例えば、あの パティ・ペイジ (Patti Page) が 1961年にナッシュビルで録音したアルバム “Patti Page Sings Country And Western Golden Hits” (Mercury MG-20615 / SR-60615) でもノークレジットながらハンク・ガーランドがフィーチャーされており、“Just Because” の中ではギターソロ中にパティ・ペイジが「Go Hank!」と言うパートがあったりします。そのほか、ナッシュビル録音のカントリー、ロカビリー系の録音ではかなりの割合で演奏しているようですので、これからも注意して探していきたいと思います。いまうちにあるアルバムで探してみたら、“Guitar’s Greatest Hits / Tom and Jerry” (Mercury MG-20626 / SR-60626) なんてのがありました。二人のリーダー、トム・トムリンソンとジェリー・ケネディーというギタリストのバックを、通称「ナッシュビル・ギャング」ががっちり固めている、というインストアルバムです。買った当初は安直なカントリーインストかしら〜 (まぁ実際そんな感じのサウンドなんですが)、という感じであっさりと聞き流していましたが (笑)、近いうちに改めて聴き込んでみることにしましょう。




KISS ME QUICK, LITTLE SISTER

そうやってナッシュビルで日夜録音されたハンク・ガーランド (を含む彼ら ナッシュビル・ギャング) のサイドマンとしての活躍は、現在いろんな CD で聴くことが出来ますが、何はともあれ エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) の 1960年代前半までのナッシュビル録音は外せないでしょう。

特に、エルヴィス入隊直前にして初ナッシュビル録音である 1958年6月10日〜11日 のセッションや、 1960年代全セッション中屈指の名演が生まれた 1961年6月25日〜26日 のセッションなどは代表的なものと言えるのでは。 前者の “A Big Hunk O’ Love” 、後者の “Little Sister” “His Latest Flame” などにおける空前絶後の格好よさ (!!) は必聴です。全てのロカビリーの雛型といって過言ではない、伝説の1954年〜1955年サンセッション以外は、ややもすると軽視されるきらいもありますが、映画に専念してしまう直前の1960年代前半までもあなどれません。いやはや食わず嫌いは良くありませんね、かつての自分に対する反省を込めて . . .

[Complete 1950s Masters]      [Essential 1960s Masters]

left: The King Of Rock ‘N Roll – The Complete 50’s Masters
right: From Nashville To Memphis – The Essential 60’s Masters

余談ですが、その “His Latest Flame”、初めて聴いた時に、メインのメロディがもうそのまんま スミス (The Smiths) の大名盤 Meat Is Murder A面2曲目の “Rusholme Ruffians” にソックリだなぁ〜、と思ったのですが (もちろん逆ですね)、そういえば 1986年ロンドンでのライブ盤 Rank の中で、そのまんま “(Marie’s The Name) His Latest Flame”“Rusholme Ruffians” がメドレーで演奏されていましたね。さすがジョニー・マー。

[All Songs by Morrissey and Marr, except His Latest Flame by Pomus, Shuman]

[Rank / The Smiths]

Rank / The Smiths
(Rough Trade [UK] ROUGH 126)



THE UNFORGETTABLE GUITAR

そして彼らナッシュビル・ギャングが RCA Victor の誘いを受けて、1960年ニューポートジャズフェスティバルに出演することになり . . . ということで話が戻ります。ハンク・ガーランドはコロンビアとソロアーティストとして契約、まずボブ・ムーアとバディ・ハーマンとのトリオ編成で、ポップぽい内容のファーストリーダーアルバム Velvet Guitar” (Columbia/Harmony HS-11028) を録音。1960年ニューポートでのライブ録音の直後には SESAC レーベルに Subtle Swing” (Sesac SN-2301/2) という、ゲイリー・バートンを加えたクインテット録音を行います (のちに “The Unforgettable Guitar Of Hank Garland” (Columbia CL-2913) として再発)。そしてほぼ同時期の 1960年 8月23日、当時全米中のジャズファンのど肝を抜いたと言われる決定的名盤を録音しました。愛車 (?) の MG MG-A に乗り込んで御満悦の笑顔を見せるジャケットも好印象です。

[Columbia CL-1572 Front Cover]      [Columbia CL-1572 Back Cover]

Jazz Winds From A New Direction / Hank Garland
(Columbia [US] CL-1572)

ふたたび余談ですが、このジャケットを模したと思われる微笑ましい写真 (1973年撮影) が、ギタリスト・エンジニア・プロデューサである ランディ・ドーマン (Randy Dorman) さんの web で見られます。ただしハンク・ガーランド御大は助手席に座っていますし、車も MG-B ですが . . .

それはさておき、なんの予備知識もなしにこのアルバムを初めて聴いた人は、このジャズギタリストはいったいぜんたい誰なんだ?! とびっくりしたに違いありません。ジョー・ベンジャミン (Joe Benjamin)ジョー・モレロ (Joe Morello) という最高のメンバーを従えて、ハンク・ガーランドとゲイリー・バートンは、それまでジャズとは縁がないと思われていたナッシュビルから極上のモダンジャズを披露します (ゲイリー・バートンは元来カントリーミュージシャンではありませんし、ナッシュビル出身でもありませんが)。ニューポートライブ録音でも披露したスローバラード “Relaxin’” ではジョー・パス風な優しいトーンでメロディをつむぎだし、同じくライブ盤でも聴かれたアップテンポの自作曲 “Riot-Chous” では、文字通りチャーリー・クリスチャン系のスリリングなアドリブを連発。A面の “Move” でもゲイリー・バートンのヴァイブとの絡みは最高です。

[Hank Garland and Gary Burton at the session]

このアルバムに感激し、何度も聴き込み、そしてプロのジャズギタリストを目指した若者のひとりが、あの ジョージ・ベンソン (George Benson) だったそうです。

[Columbia CL-1572 Side-A]      [Columbia CL-1572 Side-B]

本アルバム唯一の難点はそのミキシングです。特に肝心のハンク・ガーランドのギターがエコーがかっていて、まっとうにソリッドなレコーディングになっていたらと思うと残念でなりません。ただし、私が所有しているのはモノーラル盤ですので、未聴のステレオ盤 (CS-8372) ではどのようなミキシングになっているのかは分からないのですが . . .

A-1: All The Things You Are
A-2: Three-Four, The Blues
A-3: Move
A-4: Always

B-1: Riot-Chous
B-2: Relaxing

Hank Garland (g), Gary Burton (vib), Joe Benjamin (b), Joe Morello (ds).

Recorded at Bradley’s Studio, Nashville, TN on August 23, 1960.
Produced by Grady Martin for Don Law.




DON’T GIVE UP

プロとして活動しはじめてから15年、やっと念願のジャズアルバム (それも内容的に素晴らしい、本人もきっと満足できたであろうアルバム) を録音し、全米のジャズファン、全米のジャズミュージシャンにその名を知られようとしていた矢先に、悲劇は起こりました。1961年秋に 自動車事故 を起こしてしまったのです。また交通事故ですか?! 一体アメリカではどれだけ多くのミュージシャンが交通事故に巻き込まれてきたことでしょう。

昏睡状態が数ヵ月続いたのち、意識が回復、なんとか一命はとりとめたものの、後遺症の余りの重さに、もはや以前の様に演奏することは不可能となり、あまりにあっけなくプロギタリストとしてのキャリアに終止符が打たれてしまいました。それでも彼は何年もかけて辛抱強くリハビリを続け、ギターを弾けるようになるまで回復しましたが、スタジオでレコーディングするようなことはもう二度とありませんでした。

2004年12月27日、74歳でこの世を去りましたが、彼の残した遺産は、これからもずっと音楽ファンやミュージシャン達に愛され続けることでしょう。

[Hank Garland, R.I.P.]



References & Special Thanks:

 

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11 thoughts on “Jazz Winds From A New Direction / Hank Garland

  1. すごいですねェ〜ってShaolinさんが。
    ホント、本書けます/書いてます?/私、買いますYO!/サインして下さいネ!
    カントリー食わず嫌いしちゃいけないなと、萩原健太さん読んでも思ってたのですがJAZZ寄りのカントリーってのは入りやすそうです。
    どれから試そう・・・

  2. ホント、Shaolin さんったらイッタイ何者??
    というかんじです。
    凄すぎます。
    ポピュラー音楽の世界を縦横無尽にスイスイ〜と楽しげに泳いでいる姿が実に楽しそうで、そこがほんとうに素晴らしい。
    次はどんな展開が待っているのでしょうか? 楽しみです!!
    ひぃ〜さんへ
    萩原健太がいけるなら是非カントリーロックからはいってみませんか?

  3. > ポピュラー音楽の世界を縦横無尽にスイスイ〜と楽しげに泳いでいる姿
    というのを意図したわけではなかったんですが (笑) 歴史的に後付けのジャンル区分なんてぶち壊してしまえ、もっと柔軟にあれこれ楽しみましょうよ〜、というのはいつも思っています。
    レコードコレクターズ誌が最近ロック系をベースにどんどん深く「沈んで」いってるのも個人的にはつまんないなーと思ったりして、数年前から買わなくなっちゃいました。中村とうようさんが編集長だった頃の、世の中の全てのポピュラー音楽を縦横無尽に楽しむ姿勢が懐かしいです、ってその頃のレココレはのちにバックナンバーで揃えたわけですが…

  4. >>歴史的に後付けのジャンル区分なんてぶち壊してしまえ、もっと柔軟にあれこれ楽しみましょうよ〜、というのはいつも思っています。
    世の中には色んな音楽があって、色んな人がいて、色んな聴き方があるのですが、私はShaolin さんの姿勢って良いなァと思うんですよね。
    「特定のジャンルにこだわらない」ことにこだわっているあたりに共感しているのではないかと今回改めて思いました。
    何しろ自分が楽しくなければいけませんよねッ(笑)

  5. > 「特定のジャンルにこだわらない」ことにこだわっている
    一本とられました。うまいこと仰りますね!!
    > 何しろ自分が楽しくなければいけませんよねッ(笑)
    いやもうこれに尽きると。
    これからもじゃんじゃん勝手きままに楽しんでいきましょう (笑)

  6. shaolinさん、こんばんわ。いやあ・・・このハンク・ガーランドstory、素晴らしいですね。パティ・ペイジのバッキングにも参加していたようですね。僕などプレスリー絡みのことさえ、全く知りませんでした(笑)
    ハンク・ガーランドについては、以前、shaolinさんが「ハンクと言えば誰を思い出す?」記事の時、このギタリストを挙げた記憶があり、その後、紹介盤のJazz Winds~(columbia:CS8372)を入手しました。ハンクのギターの音色は・・・ステレオ盤でも、shaolinさんがおっしゃるように「ちょっとエコー」がかかったような多分、ギターアンプでいうリバーブをかけたような音色ですね。その分、ソフィスティケイティドされたジャズっぽさもあるかもしれません。でも、たしかにもうちょっと「芯のある強い」音色で聴いてみたいギタリストですね。それと、Riot-Chousではジョー・モレロ(左チャンネル側)の軽やかなドラムソロも聴かれるのですが・・・そのソロ途中に、モレロの音が唐突に右チャンネルに「動いたり」します(笑)ステレオ録音初期?では時々、こんなオバカなミキシングをする場合があるようですが・・・しらけますね(笑)
    そこを除けば、実にいいギター、ヴィブラフォン、ベース、ドラムスのカルテット演奏ですね。ホントに巧いギタリストだあ!

  7. bassclefさん、やはり既に入手されていましたか (笑)
    ご友人に聴かされてひどく感激された、と以前うちのコメントで書かれていたので、きっと探されたんだろうなぁとは思っていました。
    > たしかにもうちょっと「芯のある強い」音色で聴いてみたい
    これがですねぇ、自己名義のカントリー録音は、みんな芯のある強い音色なんですよ (笑) もう僕にとっては Jazz Winds… より圧倒的にこっちです。
    ジャズとしての Garland に興味のある方にカントリーを強力にお薦めすることは避けておきますが (笑)、上で紹介しています Bear Family 盤の Hank Garland and his Sugar Footers、Amazon US では全曲それぞれ30秒ほど試聴できますので、未聴であれば是非お試しあれ…

  8. 久しぶりに、 Youtube でハンクガーランドを検索したら、Hank Garland story
    というドラマが投稿されていました。
    字幕なしの英語なので、内容はよくわかりませんが、検索したところ、Crazy という
    2,3年前の映画で、ハンクガーランドをモデルにした(といわれている)ものだそう
    です。
    前半を見ただけですが、セッションシーンなど、こんな感じだったんだと感心しま
    した。まあ、英語がよくわかりませんし、時代考証がどこまで正確かわかりませんが。

  9. 情報ありがとうございます。初めて観ました。
    これは必見ですね。是非全編通しでみようと思います。

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