Part 1 (Bethlehem, Fantasy, Pacific Jazz) に続きましては、今度は少しばかり古めの奴をいってみましょう。1941年〜1955年のカタログ 4種類です。
Contents / 目次
ROOST RECORDS CATALOG (1955?)
まず最初は Roost (または Royal Roost、 ルースト) のシンプルなカタログパンフレットです。横13.2cm、縦28.1cm の1枚もので、少々味気ない片面だけの印刷ですが、このカタログがオリジナルオーナーのところに郵送された時に三つ折りにされたようです。SP やシングルが一切掲載されていないこと、1955年録音とされる LP-2202 (Tony Aless) が掲載されていることなどから、1955年頃に印刷されたものではないかと思われます。
10インチLP は LP-401 (Bud Powell Trio) から LP-424 (Johnny Smith In A Sentimental Mood) まで 24枚が、、12インチLP は LP-1201 (Roost Fifth Anniversary Albums)、LP-1203 (The Battle Of Birdland / Sonny Stitt, Eddie Davis)、LP-2201 (Johnny Smith Plays Jimmy Van Heusen)、LP-2202 (Tony Aless and his Long Island Suite) の 4枚が、EP は EP-301 (Stan Getz Plays Vol.1) から EP-312 (Jazz At Storyville, Vol.1 / Stan Getz Quintet) まで 12枚が、それぞれリストアップされています。
本カタログには価格は掲載されていませんが、前回の Modern Music のレター を参照すると、12インチLP が $3.98、10インチLP が $2.98、EP が $1.49 だったと思われます。
ATLANTIC RECORDS COMPLETE CATALOG (1954?)
続いては Atlantic (アトランティック) レーベルのカタログです。横36.4cm、縦21.1cm の四つ折りタイプで、表紙込みで全8ページとなっています。この中に掲載されている新しめの盤のうち、録音年月日がはっきりしているものを探してみると、1040 (Joe Turner) が 1954年2月15日録音とのことですので、1954年頃に印刷されたものと考えてまちがいないでしょう。
当時のメジャーレーベル / セミメジャーレーベルのカタログでよく見られた様に、このアトランティックのカタログも、当時売れていたアーティストのリスティングを独立して掲載しています。このカタログでは Ruth Brown (ルース・ブラウン)、Joe Turner (ジョー・ターナー)、The Clovers (クローバーズ)、The Drifters (ドリフターズ)、La Vern Baker (ラヴァーン・ベイカー)、Ray Charles (レイ・チャールズ) といったアーティストが独立したコーナーを与えられています。さすがはアトランティックといったラインアップですね。
これとは別に Atlantic Gospel Series として 3001〜3005、882, 883, 890, 903, 928, 929 がラインアップされています。最初は全ジャンル通し番号でリリースされていたものの、1950年代中盤あたりで独立した 3000番台が与えられた、ということなんでしょうかね。
最後に番号順のリスティングがずらずらっと掲載されています。Jazz & Piano Series として 661 (Eddie Condon) から 678 (Erroll Garner) が掲載されていますが、そのほとんどが Erroll Garner のタイトルばかりなのは驚きです (他に Joe Bushkin や Billy Taylor も数枚入っていました)。
あとは 854 (Tiny Grimes) から 1042 (Arnett Cobb) までがどっと番号順にリストアップされています。やはりアトランティックレーベルの面目躍如というべきか、R&B 系、ゴスペル系がメインで、ジャズっぽいのはパラパラと混じっている (Sarah Vaughan や Dizzy Gillespie など) という感じのラインアップです。Willis Jackson や Arnett Cobb、Tab Smith 辺りもどちらかというとコテコテ系でしょうしね。
お気づきでしょうが、このカタログには SP 及び 45回転 シングル盤 しか掲載されていません。 基本は SP 用のカタログといった趣きで、「*」で印がつけられたものは 45回転シングルでもリリースされている旨表示されている、という感じです。 値段も掲載されていませんが、恐らくは SP、45回転シングル共に $1.00 あるいは $0.89 といった値付けだったのでしょう。
この 1954年当時、アトランティックの LP 用カタログは別途作られていたのでしょうか。今のところ手元にないので分かりません。
BLUE NOTE RECORDS COMPLETE CATALOG (1944?)
ここからぐっと古くなって 1944年頃に印刷されたと思われる Blue Note (ブルーノート) レーベルのカタログです。掲載されている盤のうち、最も録音が新しいものは BN-39 (Meade Lux Lewis) で 1944年 8月22日録音です。1944年頃ということは当然 SP のみのカタログですし、いわゆるモダン系は一切掲載されているはずもありません。表紙の「The Finest In Hot Jazz」というフレーズが泣かせますね。横40.6cm、縦20.6cm の四つ折り、表紙込みで全8ページです。
12インチSP ($1.50) は BN-1 (Meade Lux Lewis) から BN-41 (Sidney De Paris) までの41枚が、10インチSP ($1.00) は BN-501 (J.C. Higginbotham / Frank Newton) から BN-504 (Teddy Bunn) までの 4枚がリストアップされています。
最も注目すべきは、掲載されている全てのタイトルについて、詳しいパーソネルが記載されている ことでしょう。あるいみブルーノートらしいともいえる、こういった熱意とこだわりが、この 1944年製のカタログからもみてとれます。10インチ SP がメジャーであった当時のジャズ録音ですが、より長時間の録音が可能な 12インチ SP をメインシリーズに据えていたこともそのひとつといってよいでしょう。
BLUE NOTE RECORDS CATALOG (1941?)
今回の最後は、おなじく Blue Note (ブルーノート) レーベルのカタログですが、上のものよりさらに古く 1941年頃の印刷と思われるものです。横27.6cm、縦17.8cm の二つ折りで、表紙込みで全4ページ、かなり薄手のわらばん紙?ざらばん紙?っぽい紙質です。表紙に写っている Edmond Hall Quartet (エドモンド・ホール・カルテット) の写真がいいですね。一番右のギターは Charlie Christian (チャーリー・クリスチャン) です。
価格は 1944年版カタログと同じで 12インチ SP が $1.50、10インチ SP が $1.00 となっています。12インチは、最新リリースとして表紙にフィーチャーされている BN-18 (Edmond Hall Quartet) までの全18枚、10インチは BN-504 (Teddy Bunn) までの全4枚が掲載されています。つまり 10インチは 1944年版と同じ 4枚しか載っていません。当時は12インチに力を入れていたということが、カタログからも伺えます。
もちろん、私はこの辺の盤は今のところ 1枚も入手するに至っていません。瀬谷さんの以下のページを拝見しながら、ヨダレを垂らすのが関の山といいましょうか (笑) ともあれ以下は必見です。
- レーベル A to Z : Blue Note
- ブルーノート研究
- Collection : Blue Note 12-inch Series
- Collection : Blue Note 10-inch Series
» . . . 「Old Record Catalogues, Pt.3」に続く . . . »
結局あれから自宅サーバのハードディスクは完全におなくなりになりました…とほほ。
あともう12時間早く新しいハードディスクへの移行作業ができていれば。
おかげで復旧作業は今までかかり、27日未明から28日夜までのファイルが一部失われてしまいました。
ただ、不幸中の幸いというか、ここのサイトについては、6月27日〜28日にひぃ〜さん、瀬谷さん、bassclef さんに書いて頂いたコメントだけがロストして、あとは無傷でした。同じサーバの他のウェブサイト、データベース、メール、その他開発用のもろもろのファイルなども、なんとか無事でした。
24時間365日連続稼働のサーバでは、ハードディスクは消耗品ですから仕方ないのですが、かといってたかが自宅サーバなので RAID 導入とかおおげさなこともしたくなく、古式ゆかしく別ハードディスクに毎晩差分 dump をとっている程度で…
ともあれ被害が最小限ですんで助かりました。
以下、ブラウザキャッシュに残っていたコメントを分かる範囲内で書き下しておきます:
SPの頃のBlue Noteもレーベルデザイン色々あるのですねぇ〜
Blue Noteの録音というとイコールRVGとなってますが、この頃の妙に生々しい録音も捨て
がたいですよね。
ATLANTICのデザインはいいですね。うちでもアップしたスリーブもそうですがモダンですw
Shaolinのまねして日本版SPのレコ・カタログアップしようかな。結構笑えますよ〜
あ〜ジャズSPレコードを聴く会やられるのですね!
瀬谷さん絶対行きます!待ち遠しいなっ!
Posted by: ひぃ〜 at June 27, 2007 6:24 PM
Shaolinさん敬称コピペし忘れてました。
スミマセン。
Shaolinさんはいろんな意味で先輩なので・・・へへ
Posted by: ひぃ〜 at June 27, 2007 6:50 PM
テニスから帰宅したら、自宅サーバのハードディスクがトラぶってて、復旧に手間がかかりました。
bad blocks が少し出てきてるので、早いこと新しい HDD 調達して入れ替えないと…
> 日本版SPのレコ・カタログアップしようかな。結構笑えますよ〜
ぜひぜひお願いします。
関係ないですが、一枚、ずっと探してる日本盤SPがあるんですよ。
日本人のフツーの流行歌なんですが、なぜかSPで欲しくなっちゃって (笑)
Posted by: Shaolin at June 28, 2007 12:29 PM
昨夜から書き込みが出来ませんでしたね。
アトランティックは、らしくないデザインですね。
もっと黒っぽいデザインかなと。
この中で一番持ってないのがアトランティックでした。
コンドン、アート・ペッパーが参加したポールキャッツ、ボイド・レイバーンなど、10枚もないような…。
ひぃ〜さん、9月16日にやります。是非、お出でください。20周年記念の特製CD、リキ入れて作ります。
7月2日に詳細を発表します。
Posted by: 瀬谷 at June 28, 2007 12:31 PM
> 昨夜から書き込みが出来ませんでしたね
すみません、昨晩はお酒飲みながらウィンブルドンTV観戦に夢中で気づいてなかったみたいです (笑)
今朝も起きてすぐにテニスコートに向かったもんで…
ああ情けなや。
しかしHDDが完全に死ぬ前にきちんと直しておかないとやばいな。
差分バックアップは毎日とってるので大丈夫ではあるんですが…
Posted by: Shaolin at June 28, 2007 12:46 PM
shaolinさん、「ヴィンテージ・レコード・カタログ」第2弾?うれしく拝見しました。
Roost編、興味深いですね。この推定1955年頃だと・・・やはりまだ10インチLPが主力で、12インチLPがようやく出始めた・・・という感じですかね。その12インチ盤、4タイトルを見ると、スティット/エディ・デイヴィスやトニー・アレスなどは、どうやら「12インチ用の新録音」かもしれませんね(これらについては、10インチは出てないと思うので)
そういえば、Prestigeにおいては、マイルスの・・・Dig(だったかな?)が、12インチ用の第1号録音だった?何かで読んだような記憶があります。
RoostのEP盤については、ちょうどこのカタログ写真の載っているEP-301,302,304,305,306を ゲッツ絡みで
入手しました。残念ながらRoostのEP盤は、VictorやClefに比べると音質はかなり落ちるようです。
まあでも、ジャケットのイラストどれもBurt Goldblattなんで、眺めているだけで、幸せなんです(笑)
Posted by: bassclef at June 28, 2007 8:27 PM
> その12インチ盤、4タイトルを見ると、スティット/エディ・デイヴィスやトニー・アレスなどは、
> どうやら「12インチ用の新録音」かもしれませんね
そんな感じみたいですね。ちょうど Roost の録音って 1954年に空白があるみたいですので、
まさに1955年から12インチに移行だったんでしょうね。
> ジャケットのイラストどれもBurt Goldblattなんで、眺めているだけで、幸せなんです(笑)
分かりますその気持ち (笑)
EP は SP やシングル、LP に比べると音質的にどうしても不利ですけど、その分ステキな
ミニジャケットがついてきますからね。
Posted by: Shaolin at June 28, 2007 9:53 PM
あ、最後の瀬谷さんの
「Roost は SP でもあんまり音よくないです」
云々といったコメントだけが残ってない… すんません。
そして寝たのは朝の5時前。現在起床。眠い。
Shaolinさん、大変でしたね。お疲れ様でした。
Old Record Catalogues に登場したレーベルを紹介してみました。Collections の「西海岸のレーベル」をご覧ください。
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/Collection/Collection17.htm
いいですねぇ。
Pacific Jazz、Fantasy、Lighthouse/Contemporary、
Garaxy、Coronet、GNP、Trend、Skylark….
Good Time Jazz は Label AtoZ の方に載せられていますね:
http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~jazzsp/lab/AtoZGTJ.htm
そして bassclef さんのところで話題になっていた Nocturne まで。
Pacific Jazz の Mulligan は欲しいなぁ。
以前某オンラインオークションで異常な高騰をみせてましたが (あれはさすがに高すぎ?)
> LP のようにジャケットがないのは残念ですが
最近は SP のレーベルを見るだけで満足するようになってきました (笑)
むしろいろいろと想像力が働く?
第2弾がこんなに早く見れるとはイイですねェ。
ブルーノートはもう、ただブルーノートであるところで、ぐっときてしまいますが、アトランティックの表紙が意外なくらい(?)グラフィカルで素晴らしいです。
これも額に入れて飾りたいですよ。
サーバの復旧作業お疲れさまです。
しかし、ご自宅サーバだったとは!!
勢いでRoost/Royal Roost も紹介してみました。
瀬谷さん、ありがとうございます。
目の保養になりました (笑)
それにしても、レーベル印刷色に意外とバラつきがあるんですね…
以前私が載せた盤
http://microgroove.jp/archives/2006/10/indiana_bud_powell.html
と比べると、ずいぶん色合いが違う様にも感じます。
もちろん、スキャナでとった画像か、デジカメでとった画像かによっても違いは出てくるでしょうからなんとも言えませんが、瀬谷さんの一連の盤でもこれだけ色のゆらぎがあるとは….
そうなんですね。私もデジカメで撮りながら思いました。
よく見ると、色の鮮やかなラベルは活字も太いですね。多分、1st、2nd とは関係ないと思いますが、不思議です。
あと、偶然かも知れませんが、サンプル盤がありません。作らなかったのでしょうか?
> 色の鮮やかなラベルは活字も太いですね。
> 多分、1st、2nd とは関係ないと思いますが、不思議です。
あ、ほんとですね。
ってことは、少なくともレーベルを印刷した会社はそれぞれ別のところってことですね。
アメリカのレーベルマニアとかに見せたら、どのレーベルはどこの会社で印刷されたものだ、
と一発であててくれるそうです (笑)
その辺が分かってくれば、レーベル印刷会社の違いから、プレス工場の違いとか、そういう話にもつながってくるかもしれませんね。
Capitol なんかも、東海岸プレスと西海岸プレスで、レーベルのタイポグラフィが全然違いますね。
ひょっとしたら、519番までが初期のオリジナル、520番からは新しい色、活字変更後のオリジナルかも知れません。
ということは、512番のGetz は2nd の可能性があります。
519番まではラベル下に半円のライセンスの活字がありますが、512番にはありません。
ちょうど某オンラインオークションに 512 が出てました。
http://peugeot405.org/tmp/Roost512.jpg
511 までと同じく、Royal なしの Roost ですね。
この写真では微妙に分かりづらいですが、色は後期と似た薄めのようにも見えます。
はてはて。
色のことはありますが、512番までRoost であることが確認されたので、訂正しておきました。
Roost については調べたことがなかったので、勉強になります。
某オンラインオークションの 512、スリーブはSavoy のようですね。