Diversity of “Plays Monk”, Pt. 5: ASA Trio

Pt. 3 (Bobby Broom) の時に

ギターでモンクの楽曲にがっちり取り組んでいるアルバムは、私の知っている限り3枚ありますが

と書きました。

それは ボビー・ブルーム(Bobby Broom)(2009)、ピーター・バーンスタイン(Peter Bernstein)(2008)、ジョシュア・ブレイクストーン(Joshua Breakstone)(1997) がそれぞれ出した ギタートリオ によるアルバムを意図していた(現時点ではジョシュア・ブレイクストーンの盤のみ未聴)のですが、他にもアコースティックギターソロ(!)や電化ヴァイオリン入り(!)、ピアノとのデュオ、などなど、様々な編成でギターがフィーチャーされているものがいろいろあります。それらも今後紹介する予定です。

今回もそんな1枚で、なんと ハモンドオルガン入り です。これは期待も膨らむというもの。

Plays Monk

ASA Trio Plays The Music of Thelonious Monk (Sunny/Sky 727)

Amazon.com (MP3) | Amazon.co.jp (MP3)


アイスランド のオルガントリオ ASA Trio によるファーストアルバムで、公式サイト によると、バンド結成は2005年のとあるアクシデントがきっかけだったとのこと。

アイスランドの首都レイキャビク(Reykjavík)で2005年に行われたジャズフェスティバルで、たまたま出演者にキャンセルがあり、穴埋めのためにその場にいたバンドの中から急遽3人がステージに上がって演奏したんだとか。観客にも好評で、本人たちも大変しっくりきたので、バンドとして活動するようになったとのことです。バンド名は、メンバーの名前のイニシャルをつなげたもの(Andres Thor, Scott McLemore, Agnar Már Magnússon)。

そのトラで出演したステージでハイライトとなったのが、モンクの「Bemsha Swing」だったそうです。以後、モンクの楽曲を演奏することは、バンドにとって重要な軸となり、デビューアルバムもこうやってモンク曲集となりました。

ただ、21世紀のバンドらしく(?)、デビューアルバムより前にもオンラインでのディジタルリリースは行われており、それらは無料で配布されています(後述)。今回のデビューアルバムについても、オンラインで全曲フル試聴可能ですし、メインはダウンロードによる販売です(ダウンロードのみは $8、ダウンロード+CD郵送が $14)。ダウンロードといっても、お馴染み BandCamp 上での販売ですから、FLAC/ALAC/Ogg Vorbis/MP3(CBR)/MP3(VBR) から選べ、音質的な配慮も大変良心的です。

この BandCamp や CDBaby、Amazon や iTunes のように、大手レーベルに所属しないミュージシャンやアマチュアが自ら音源を販売し、売上げのより多くが自らに還元されるという仕組みが、今後はもっと広がっていくことでしょう。

 
 
 

さて、アルバム全体の印象はというと、ハモンド入りというイメージからは想像できないほど、ゆったり、ほっこりした演奏が中心 となっています。ミドルテンポ中心の選曲によるところもありますし、全体的にリズムをそんなに強調しないジャズ的にオーソドックスなアレンジに終始していることもあります。だからといって退屈させられることが全くないのは、このバンドの魅力の一つと言えるかもしれません。ドラムスもハモンドオルガンも、トーンを抑え気味に後ろから爽やかにムードを規定し、その上でギターがやさしくフロントに立つといった風情が逆に新鮮に感じられます。

そんな中、アップテンポでロックやソウルの影響をたたえたアレンジで新鮮な解釈を聴かせるのが「Criss-Cross」と「Green Chimneys」で、こちらは三者のストレートアヘッドなぶつかり合いが聞き応え満点です。

ラストの「Straight, No Chaser」では、なんと 7拍子 で原曲のファニーさを表現、なかなか興味深い演奏となっています。

 

もうひとつ特筆すべきなのは、意外なほどモンク臭がしない ということ。モンクの楽曲を完全に無視してブリブリ・バキバキ演奏しまくり遠くに行ってしまった演奏ではなく、モンクべったりオマージュ感満載な演奏でもなく。モンクの曲らしい魅力は最低限残した上で、あまりモンクっぽい雰囲気が漂っていない、というこのスタイルも、本バンドの特徴といえるのかも。

とてもリラックスしていて、緊張感を強いられない、けど興味深い、という演奏スタイルと、緊張感のかたまりで出来ているモンクの楽曲(もちろんモンク本人の演奏も)。この組み合わせ、つまらないと受け取るか、意外とイケると受け取るかはあなた次第。私は後者ととりました。

Agnar Már Magnússon (org),
Andres Thor (g),
Scott McLemore (ds).

Recorded at Studio 12, RÚV, Iceland
on May 25, 2010.

Recording Engineer: Egill Jóhannson
Mixing Engineer: Kjartan Kjartanson
Mastering Engineer: Styrmir Hauksson at Hljóðriti
 
 
 

ASA Trio が本デビューアルバムの前にダウンロードオンリーで(無料)リリースしたアルバムは2枚あり、2008年の「Live at Domo」が、本バンドの可能性を最もうまく表現できていると感じられました。

オリジナル曲の他、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)、レッド・ホット・チリペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)、フィオナ・アップル(Fiona Apple)、レディオヘッド(Radiohead)、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)、レイ・チャールズ(Ray Charles)という、新旧オールジャンルなバラエティに富んだ選曲だけで充分に興味をそそられますし、それでいてこのバンド独特のふんわかしたトーンで統一感ある演奏になっているところが非常に面白いです。

 
 
 

2009年の「A Love Supreme, Live at Cafe Cultura」に至っては、大胆にも(?)コルトレーンの「A Love Supreme」を完全カヴァー。純ジャズっぽい熱くフリーな演奏を期待すると肩すかしをくらうかもしれませんが、本家本元とは違ったロック世代っぽい解釈のもと、静かなる「至上の愛」を披露しています。

 
 

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