Kohji Matsubayashi (松林弘治)

Autumn ’66 / The Spencer Davis Group

つい先日、LP ラック を買い足しました。その際、段ボール箱に入れて保管していたレコードを整理しましたが、ここ数年手にとっていなかった盤を手にとっては、その盤にまつわる個人的な想い出が次々と脳裏をかけめぐり、整理は滞りがちになってしまいました。これもそんな一枚。記憶が正しければ、1994年の夏に大阪日本橋の某中古レコード屋で購入したものです。

The other day I bought yet another LP stocker. After the built of the stocker was complete, I started to readjust my LP collection (stocked in the cardboard boxes) to re-stock in this new stocker. During the procedure, I took every LP in my hand, thinking of very personnal memory with the record from one after another, which prevented me from very smooth task to store the records. This LP is one of them – as far as I remember, I bought this album in the summer of 1994 at a certain shop in Nipponbashi, Osaka.

[TL-5359 Front Cover] [TL-5359 Back Cover]

Autumn ’66 / The Spencer Davis Group
(Fontana TL-5359)
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Kohji Matsubayashi (松林弘治)

Demo Crazy / Damon Albarn

(本エントリは、私が別の web に 2004年 3月 1日付で掲載していたものを転載したものです)
(this entry was originally made public at my another web site on March 1, 2004)

このアルバムのタイトル「Demo Crazy」を見た時、真っ先に思い出したのはあの偉大なミュージシャン Fela Kuti のことでした。彼は democracy をもじった、意味深な「Democrazy」というタームを提唱したのでした。

I remember the phrase of this album’s title “Demo Crazy” – the phrase should remind us of the late Fela Kuti, who was (of course) a great Afro artist and who originally coined the meaningful phrase “Democrazy” (not democracy).

[DEMO1/HJP10 Front Cover]
Demo Crazy / Damon Albarn
(Honest John’s DEMO1/HJP10)

この 2枚組 LP の、独特の形状をしたゲートフォールドカバーを開いた時、目にとびこんできたのは、幾多の Damon Albarn の殴り書きの中にあった「DEMOCRAZY IS A FELA KUTI CONCEPT」という文字でした。それを見た時なんだか意味もなく嬉しくなりました。また、Damon Albarn さんが Fela Kuti の音楽を知っていた (恐らくとても好きなのでしょう) ことに驚きもしました。

And when I opened this unique gatefold cover of the double LP, I was so glad (meaninglessly though) that I could find “DEMOCRAZY IS A FELA KUTI CONCEPT” among many other scribbles written by Damon Albarn. I was also surprised that Damon Albarn knew (and might love) the music of Fela Kuti.

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Kohji Matsubayashi (松林弘治)

37 Years After the SMiLE


[T-2580 Front Cover]    [79846-2 Front Cover]
左は 1990年前後(?)にリリースされたブート CD (No Label T-2580),
右は今回の CD (Nonesuch 79846-2)

先週,とうとう Brian Wilson Presents Smile がリリースされました (本国版は 9月末リリースだったそうですが). 遅れ馳せながら本日米国版 CD を購入,涙を流しながら聴き入りました.

データの類や,「語られつくされつつある」お馴染みのストーリーはレコードコレクターズ11月号の特集記事などを見れば分かることなので,ここではあまり触れませんが,今まで断片的に公開されてきた Beach Boys の音源 – “Smiley Smile”,“20/20”,“Sunflower”,“Surf’s Up”,“Rarities”,ブート LP 数種,ビデオ “An American Band”,幾多のブート CD,“Good Vibrations” ボックス,1990年代の CD リイシューのボーナストラック,その他いろいろ – や,Domenic Priore 氏の書籍 “Look! Listen! Vibrate! Smile” などを通して,永遠に解けないパズルと格闘するかの様に悶々としてきたファンも多かった “Smile” (多分に洩れず私もそのクチです).それが,ここ最近復調著しい Brian Wilson さん御本人と現在のバックバンド,そして Van Dyke Parks さんなどによって作られたこの新録 “Brian Wilson Presents Smile” によって,一応のピリオドが打たれたというわけです.

この CD で聴ける新録 Smile は,近年のライブ活動を通じて丹念に練り上げられたアレンジをベースにしています.既に Smile ライブ音源もあれこれとブートで出回り出しているようです (未入手.正規で出るまでは買わないとは思いますが…).

見ての通り,ジャケットはかなりしょぼいです (オリジナルで使われるはずだったジャケットも充分にしょぼいですが).けれども,内容は全然しょぼくなかった.これは嬉しい誤算でした. ある意味,これでやっと「万人に文句無く勧められる」作品になってくれたとも言えます.

新録であるけれども,アレンジはオリジナル録音の断片に忠実で,また録音もあの「空気」を見事に再現したもの.足りないところは新たに作詞作曲し,構成も練りに練って,本人の手によってようやく完結した今回の CD.単なるセグメントの羅列ではなく,きちんとトータリティを打ち出した三部の組曲風に仕上っているのは,(それが本来の “Smile” になるはずだったものと同じかどうかはさておき),本人作ならでは.ヴォーカルは残念ながら (当然) あの天使のようなハイトーンが全く出ない現在の Brian さんではありますが,内容の余りの充実ぶりには文句無しに感服しました.1967年に出るはずだった “Smile” そのものではあるはずがありませんが,それに最も近い (あるいはその発展形) ものであることは確かです.

1995年にリリースされるはずだった (けれども Brian さん本人の許可が降りずに日の目をみなかった) “Smile Sessions” ボックスに相当するものは,Brian さんが元気に活動している限り出ることはないでしょう.けれどもあくまで未発表アルバム (になるはずだったものの断片群).ご本人が,37年後にこうやって新録ではあれ一応のおとしまえをつけ,しかもそれが (危惧していた様に「昔の名前で出ています」的なズッコケ新録音になることなく) 実に素晴しい作品になっていることに,何はさておき感謝感激するしかありません.私が 1999年にライブを聴きに行った時には,まだかなり音程も怪しく,懐メロ大会的なライブでしたが,ここ数年でぐんとパワーアップした結果がこのアルバムの充実ぶりに表われています.

今後の活躍に期待せずにはおれません.いや,こんな切札をとうとう切ってしまったのですから,この次のアルバムが本当の正念場になることでしょう.

“Pet Sounds” 同様,「時代の音」から超越しているであろうこのアルバム.今,私が興味があるのは,Brian のことも Smile にまつわるあれこれのことも何も知らないリスナーが,この 2004年に予備知識なしに初めてこのアルバムを「新譜」として聴いてみて,どういう感想をもたれるのだろうか,ということです.

… 「幻」であったが為か,ここ10年程余りにも祭りあげられている感なきにしもあらず,の Smile ではありますが,ここは何も言わず,素直にこの CD を聴き敬礼することにしましょう …