Technics SU-R1000 試聴記 #02: LAPC 補正テスト

試聴 2日目(2021年6月20日)は、主に LAPC (Load Adaptive Phase Calibration) 機能のテストです。マイクなしのスピーカインピーダンス自動補正の実力は?

パナソニック勤務の友人の計らいにより、2021年6月19日〜7月2日の2週間に渡って、話題のフルディジタルインテグレーテッドアンプ Technics SU-R1000 をお借りしての自宅環境で試聴です。

前回 に続き、当時 Facebook に毎日載せていた試聴記の(加筆修正後の)転載となります。

TRX-P300S and SU-R1000 (rear)

あらすじ

2021/06/20: LAPC を試してみました

本日は目玉機能のひとつ「LAPC (Load Adaptive Phase Calibration)」をテストしてみました。

先日の試聴環境設定 に引き続き、入力はDAC からのアナログ RCA のみの状態です。

System Configuration as of June 20, 2021

2021年6月20日時点でのシステム構成図

LAPC は、2014年の SE-R1 (パワーアンプ)、および SU-C700 (プリメインアンプ) に初搭載されたものとのことで、「周波数ごとに異なり変化するスピーカのインピーダンスを、DSP で補正する技術」、そして補正は「実際にスピーカを接続し、テストトーンを鳴らすことでアンプの周波数振幅特性を測定」することでパラメータを算出するとのことです。

LAPC (Load Adaptive Phase Calibration)

海外向けプレス資料から LAPC の解説ページ

よくある計測・補正では「マイクを接続し、スピーカから鳴る音を計測して補正する」というものです。

ところが、Technics プロプライエタリ技術である LAPC の場合は、テスト信号を流して計測する(計測はアンプとスピーカのみで完結しているので、入力音源は関係ない)わけですが、マイクからの計測ではなく、スピーカ端子から流れるアウトプットゲインとフェーズを内部的に計測して、独自のアルゴリズムによって理想のインパルス応答を算出し、ディジタル段で補正(DSP処理)する、というもののようです。

詳しい技術情報がないので詳細までは分かりません(特許がらみとかなんでしょうが、もうちょっと技術目線でのファクトシート的なものを公開してもらえると嬉しいですよね)が、とにかく非常に興味深いですね。

実際の LAPC 計測シーン

動画のように、計測用信号が左右スピーカから流れます。ボリュームノブの音量は無視されて、自動で大きめの音が出ます。3分間ほど計測されると、LAPC 補正データがメモリに保存されます。

このあと、リモコンでの LAPC ON/OFF で、補正後/補正前の音を比較できるようになるのですが。

娘も LAPC の圧倒的な効果にびっくり

まぁびっくりしました。ほとんど魔法レベル です。

「ヴェールを剥がす」という表現がありますが、剥がすレベルが1枚どころではありません。2〜3枚剥がしたように、空間描写がより奥行きを伴って生々しくなります。また低音域の実像感もぐっと増します。

一緒に LAPC ON/OFF 比較試聴した娘(大の音楽好き、親同様絶対音感持ち、パーカッション奏者)もびっくりしてました。

なにこれ、ライブハウスの空気が見えすぎて怖い
圧倒的に違う

と、私と同じ感想を持っていました。

ちなみに、この時の試聴音源は、ナタリア・M・キング (Natalia M. King) さんの「SOULBLAZz」(2014) というアルバムの、ディジタル配信のみのボーナストラックに入っている「Who Knows Best」 (24/44) という曲です。スタジオの空気をそのまま切り取ったかのような鳥肌ものの音源です。

もうちょっと手の届きそうな(笑)価格帯で、LAPC 機能内蔵のシンプルなパワーアンプ(出力はもう少し弱くてもいい)とか出してくれたら、おそらく予算オーバーでもポチりたくなるくらい、とにかく効果抜群でした。いやーこれはすごい。

(後日注: よく考えたら、SU-C700SU-G30 にも LAPC は搭載されているんでしたよね… 未聴ですが)

試聴2日目での所感

オーディオにおけるディジタル側の熟成がここ数十年で進んできて、かつ、コンピュータ(ディジタル処理)の圧倒的な速度・精度向上により、より高密度(ハイレゾリューション)な情報をほぼリアルタイムで「余裕で」扱えるようになってきました。

そして、そもそもこの SU-R1000 が物量投入型で、アナログ段もディジタル段も注意深く緻密に設計されていて、かつ、JENO によるディジタル段でのジッター排除、ADCT による歪み補正、そして LAPC によるスピーカの動的インピーダンス補正、ほぼ全てがディジタル段で処理されている。

その結果、アナログ段との接続部分(ADC周りとスピーカ駆動周り)や電源周りさえ最大限の注意を払いさえすれば、フルアナログ処理じゃなくても、SU-R1000のように経路途中でがっつりディジタル処理が行われていても、人間の耳には「ディジタル臭さ」とか無縁で、全く不自然に感じないレベルになっている。

だからこそ、ディジタル上での処理が再生音質向上に効果的に貢献している、ってことなんでしょうね。

まだ USB 直入力もやってないし、ディジタル/アナログハイブリッドのフォノイコも試してないし、残りの目玉機能 Phono Cartridge Optimization(クロストークキャンセラとレスポンスオプティマイザ)も試してませんが、この LAPC だけでも特筆すべき技術的マイルストーンだと感じました。

それにしても、いかにも日本企業の製品の伝統芸能(笑)らしく、マニュアルは読みにくいし、リモコンもボタンだらけで使いづらいです。音質大絶賛の TAS (The Absolute Sound) 誌レビュー (July/August 2021) でも、その点はもうボロカスに書かれていて(笑)とても共感できました。音は間違いないんですから、そういったユーザビリティに関わるところを丁寧にリファインしていけば、もう世界中のオーディオマニアから文句なし大絶賛になるんじゃないでしょうか。

(後日注: ちょうどこのブログ記事を整えている 9/4 に、TAS July/August 2021号に載った SU-R1000 レビュー記事がオンラインでも公開されました。私はディジタルサブスク + リアル雑誌で6月に読んでましたが、音質面の大絶賛、そしてユーザビリティへの酷評、が非常に興味深いです)

SU-R1000 試聴記 #03 (2021/06/21, アナログ入力と USB ディジタル入力の比較試聴)」に続く . . .

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