Technics SU-R1000 試聴記 #14: 総論と後日談

試聴最終日となる14日目 (2021年7月2日) は、娘によるアナログ系試聴、およびまとめです。

パナソニック勤務の友人の計らいにより、2021年6月19日〜7月2日の2週間に渡って、話題のフルディジタルインテグレーテッドアンプ Technics SU-R1000 をお借りしての自宅環境で試聴です。

前回 まで同様、当時 Facebook に毎日載せていた試聴記の(加筆修正後の)転載となります。

SU-R1000

あらすじ

2021/07/02: 最後に娘のアナログ系比較試聴

明日、Iさんに返すので、期末試験直前である(笑)娘が聴ける最後のチャンス、と、午前授業で帰宅した娘に最後の比較試聴をやってもらいました。ディジタルフォノイコ + 測定レコードによる補正後の音を体験してもらって、感想を聞いてみよう、と思って。

そして、特に説明せず、以前の家の音(BGM用アンプ)もこっそり混ぜてみました。

A: GyroDec → SuperNova II → EPM-10W
B: GyroDec → SuperNova II → SU-R1000 (LINE入力)
C: GyroDec → SU-R1000 (内蔵ディジタルフォノイコ, 補正あり)

A:
いい音。きもちいい。ホントこの曲好き。
B:
おおおお、これでしょ、Iさんのアンプ! Aがかたいスライムで、Bがびよーんとのびるスライムみたい。あー語彙力なくてごめん!

ここで A/B 比較しながら、いろいろ質問してみると「楽器や空間がより立体的にリアルに聴こえる」「低域も高域も綺麗に伸びている」「音に歪みがない」、ということのようです(笑)「そういうの、空間描写、とか、周波数帯域、とか、低歪、とかっていうんだよ」と教えてあげました。たぶんすぐ忘れると思いますが。

C:
うぅーーーーーーーーーん」「いいんだけど。。。。。きれいなんだけど。。。。。。
よくわかんないけど、なーーーーんか、わたしは B の方がきれいな音にきこえる
スネアブラシの音が、C はきれいな人で、B はもっともっと美人のお姉さんの音みたい、かなぁ。
あ、やっぱりもういっかい B きかせて
B:
うぅーーーーーーーーーん」「やっぱりもういっかい C きかせて
C:
うぅーーーーーーーーーん」「全体はとても整ってるんだけど。。。
(床に転がって悶え苦しむ)
やっぱり B がわたしは綺麗で好きだと思う

中2にしてこのボキャブラリのなさがすごすぎですが(涙)、耳と感性ははちゃんとしていたようで、よかったです(笑)

ちゃんとしているかどうかはさておき、感想は父親である私と同じものとなりました。

その後 「ありがとう、聴き比べ、むっちゃ楽しかった!!またやりたい!!」 と超ゴキゲンで鼻歌&スキップまじりで勉強部屋に去っていきました。って徒歩数歩ですが。

その前に、明日Iさんに返すことを伝えると「91万円アンプさん、もう会うことはないけど元気でね!すごくいい音だったよ!!」と言ってトントンしてました。

2021/07/03: 返却当日、別れを惜しむ (?) 娘

試聴用にかけたメインの曲は、娘が目覚ましに使うほど何百回と聴き込んでいる(そして私にとっても愛聴盤である)、Two Dots というスマホゲームのサントラの、5年前に100セット限定で出たLPレコード2枚組から “Outer Space” という曲です。本人が耳タコレベルで聴き込んでる曲の方が違いが分かりやすいかな、と思って。

Two Dots Vol. 1-3 (Original Soundtrack)

Two Dots, Vol. 1-3 (Original Soundtrack)
a

14日間の試聴後の 総論

【PROS】ディジタル技術の最先端

JENO (Jitter Elimination and Noise-shaping Optimization) エンジンは、サンプリングレートコンバータとノイズシェーピングの組み合わせによるジッター削減回路。

ADCT (Active Distortion Cancelling Technology) による、瞬間的な供給電圧の落ち込みや、逆起電力による歪みを除去する技術。

LAPC (Load Adaptive Phase Calibration) は、マイクなしでアンプの周波数振幅位相特性を測定、スピーカ負荷に適応する出力を算出するアルゴリズム。

GaN-FET ドライバ、バッテリ駆動の低ジッターのクロックジェネレータ、その他数多くの技術。

測定レコードを使ってカートリッジのインピーダンスマッチングを測定し、クロストークを測定し、DSPで全てキャンセルし補正するディジタルフォノイコの技術。

これらの複合的な効果により、すべてのアナログ入力およびディジタル(PCM/DSD)入力をハイレートなPWMに変換し、スピーカ駆動直前までディジタル段でピュアに処理し、理想的な状態でスピーカを駆動する、というアーキテクチャ。

2021年ならではの新しい技術で、フルディジタルでもここまですごいことができる(そして一部の側面では超ハイエンドなアナログアンプを確実に超えている)。それを示しただけでも、非常にエポックメーキングと感じます。

海外のあらゆるメーカに影響を与えるレベルですごいと思います。

【PROS】圧倒的な無歪感、圧倒的な透明感、圧倒的なリファレンス感

そして、その結果として出てくる音が、もう有無を言わせぬもので、入力される音、そして出力するスピーカのそれぞれのポテンシャルを最大限に引き出していることが実感できます。

この音を「基準」として、各メーカの各機器を評価してもいいのではないか、と思えるくらい、とにかく高いレベルで「リファレンス」となる音が聴けます。

【CONS】ハードウェアに比べて圧倒的に貧弱なソフトウェアやユーザ体験

マニュアルの書かれ方。操作方法の煩雑さ。複雑で時間のかかる測定手順。フラッグシップのインテグレーテッドアンプだから割り切ったところでもあるのでしょうが、ソフトウェア面とユーザビリティは絶対におろそかにしてほしくないです。最低でも、先行して出されているネットワークステーション兼DAC兼プリメインの SU-G30 レベル(スマホやタブレットから操作可能)にまとめてほしいところです。

【CONS】アナログ入力とディジタル入力の差が気になる

LAPC ON 状態でのUSB入力が、0.8秒遅延する(Low Latency 設定でも0.4秒遅延)のは、各種DSP処理を行っているから理屈上やむを得ないとはいえ、AV目的では望ましくありません。しかも、S/PDIF RCA デジタル入力の時には遅延がないのに、です。

また、入力されるアナログ系の質によるかもしれませんが、うちの環境では、直接ディジタル入力よりも、アナログRCAでの入力の方が、若干好ましい音に聴こえました。これはアナログ系の「色付け」によるものなのか、あるいはディジタル技術で解決できるものなのか、おそらく前者だと思いますが、若干不思議に思った点です。

楽しかった14日間。これから R1000 ロスが待っている…

試聴記はこれにて終了。いい経験させてもらいました。

貸し出しして下さったIさん、そして素晴らしい製品を開発・製造されたテクニクスのみなさん、本当にありがとうございます。

TRX-P300S との A/B 比較ができなかった(BGM 用の EPM-10W との比較しかできなかった) のが残念ですが、TRX-P300S に戻して、どのくらいロスを感じるのか、そして、SU-R1000 欲しくなる秒が発症しないか、今から心配です。

2021/07/05: 後日談1

Technics SU-R1000 去りしあと。

30分温めた TRX-P300S PSVANE WE300B で、同じく爆音でいろいろディジタル音源を聴く。

TRIODE TRX-P300S PSVANE WE300B

耳が戻ってきたせいもあってか(笑)「これは暖かく、かつ歪みなく好きな音」と感じられる。

けど、あのどこまでも無色透明で無歪な純粋な音を2週間も体験したせいで「これより上がある」「もっといい音だったよなぁ」という気持ちが残ってしまうのが残念。

いわゆるジャンキーか、これは。

気をつけよう。手綱は自ら握っておかないと。。。

2021/08/01: 後日談2

やっぱり SU-R1000 は「分かりやすいニュートラル」なんだなぁ、と懐かしむ日々です。

実はニュートラルじゃないかもなんだけど、人間の(私や娘の)耳にとっては「インパクトのある」ニュートラルだった、と。

アナログ技術でニュートラルで歪みなしアンプを聴きながら思う。

SU-R1000 は、分かりやすい無歪ニュートラル、こっちは、分かりにくい「隅々まで徹頭徹尾フツーの」無歪ニュートラル。

2021年7月19日〜の我が家のオーディオ構成図
結局アンプがひとつ増えました(笑)

Leave a Reply

Your email address will not be published.