2025/08/10

ディスコ曲「ジンギスカン」が教育現場に浸透した時期と経緯

1979年リリースのディスコソング「ジンギスカン」 (Dschinghis Khan) が、なぜ今でも小学校の運動会や林間学校でのキャンプファイアーなどでよく耳にするのか。そもそも、いつ頃から教育現場で使われ始めたのか。

以前から不思議で仕方なかったので、いろいろ調べてみました。

意外にも、リリース翌年の1980年辺りから教育現場での使用例が多く確認でき、現在に至るまで長く定番ソングとなっていることを確認しました。

そのきっかけは「リズムなわとび」という体育の活動にあった可能性があり、ほかにもレクリエーションダンスなどでも多くの使用例が確認できました。

しかし、「なぜこの曲だけがこんなにも長く定番化しているのか」「浸透に地域差はあったのか」については、まだ良く分からない、というのが現時点の状況です。

以下、あまりきれいにまとまっていない長い調査過程ログのようなものですが、興味のある方はご覧ください。

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2024/11/26

How Records Were/Are Manufactured (6)

NOTE to non-Japanese readers:
This article — a deep dive into the history of Mercury’s injection-molded styrene LP records — is written only in Japanese, except the conclusion and summary part (also written in English). Or you may read the entire page with the help of the “Translate to English” feature on many modern web browsers, although I’m not sure if my entire Japanese sentences are translated into English correctly and properly.

第1回第2回第3回第4回第5回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

Shelley Products 社によって1940年代末に市場に投入され、一時期は Columbia が開発・実用化・普及に向けて積極的に投資していたスチレンの射出成形法は、LP盤製造では結局は主流とはならず、米国で45回転盤用としてのみ浸透したことを学びました。

また、21世紀に入って、サステナビリティの観点から再び射出成形法が見直され、スチレンではなくリサイクルインフラが整ったPET盤が製造販売されていることを知りました。

最終回となる今回は、もともとレコード製造方法や原材料の歴史を調べるきっかけとなった、Mercury の廉価スチレン製LP盤 について、さまざまな角度から調査してみました。

改めて、今回の一連の調査のきっかけを与えてくださった @zmuku さんに感謝いたします。

プレス工場を特定できる決定的な情報はまだ得られていませんが、レーベルやジャケ裏に印刷されている3本線マークの由来と意味について、非常に妥当な仮説を立てることができた気がします。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (5)

第1回第2回第3回第4回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

5回目となる今回は、1964年の Burt Bacharach = Hal David 両氏へのインタビュー記事に登場する射出成形スチレンシングル盤への不満という面白いエピソードのほか、英国の射出成形ヴァイナル盤研究開発を捉えた興味深い動画の紹介、同じく射出成形ヴァイナル盤製造を1970年代に行っていた日本コロムビアの学術論文、最後に21世紀になって登場した「エコフレンドリーな」射出成形PET盤について、それぞれみていきます。

レコード業界における射出成形による製造法の役割が、長期的なコスト削減および生産効率向上、という目的から、持続可能なレコード文化存続へ、とシフトするさまを現在進行形でみているんだなぁ、という思いを強くした学びでした。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (4)

第1回第2回第3回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

4回目となる今回は、1954年当時の射出成形 vs 圧縮成形の様子を解説した記事をかわきりに、1950年代末には結局LP盤のほとんどが圧縮成形プレスで製造されていたこと、逆に射出成形スチレン盤は7インチシングル盤として米国で広く普及したこと、その他1960年代のさまざまなエピソードをみていきます。

21世紀の現在、新しい文脈から射出成形12インチLP盤が再登場していますが、当時の技術レベル(や当時のレーベルの経営的思惑)からは、射出成形LP盤は主流になれなかったのだろう、そんな風に思わされました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (3)

第1回 および 第2回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

3回目となる今回は、射出成形技術が初めてレコードに使用された1947年から、米巨大レーベルが射出成形に大きな投資を行うことを表明した1950年、さらに1951年〜1953年の朝鮮戦争によるレコード製造原材料不足の時期を、当時の記事などでたどっていくことにします。

当時はありふれた大量生産品であったレコードという製品を作るにあたり、レーベルやプレス工場といった企業にとって、技術面もさることながら、コストに対する意識生産可能速度 が最も重要であった、という至極当たり前のことを、改めて強く認識することとなりました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (2)

前編 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

「射出成形盤はいつ頃から製造されたか」、「米国における圧縮成形 vs 射出成形のバトルはどのようなものだったか」、「圧縮成形のスチレン盤は存在したか」、そして「Mercury の例の廉価盤はなにか」などをみていくわけですが、2回目となる今回は、RCA Victor が1957年と1976年に社内技術紀要に掲載した2つの解説論文をたよりに、レコード製造技術の概要を改めてみていきます。

RCA Victor は、米国レコード業界を牽引する立場でもあり、長年に渡りレコード製造技術の自社開発を積極的に行っていましたし、またそれらの成果を学術論文や社内技術紀要などに比較的積極的に公開していたため、このような資料が残っていることには感謝しかありません。

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2024/10/11

How Records Were/Are Manufactured (1)

今回は、SNS 上でみかけたあるレコードの特徴をきっかけにして、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録の前編です。

This first installment is my attempt to revisit the post-war history of record-manufacturing processes and materials—sparked by an intriguing feature I noticed on a post on social media.

Preface / はじめに

レコードは何から作られているか。レコードのプレスはどのように行われているか。なんとなくでもご存じの方は多いでしょう。

What are records made of, and how exactly are they pressed? Many readers probably already have at least a rough idea.

レコードの主たる原材料として使われてきたものには、シェラック、ベークライト、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、PET などがあります。当然、圧倒的に主流なのはポリ塩化ビニルです。

The principal raw materials that have been used for records include shellac, Bakelite, polyvinyl chloride (PVC), polystyrene and PET. Unsurprisingly, PVC has long been the overwhelmingly dominant choice.

また、レコードの製造(プレス)方法としては、圧縮成形が主流で、射出成形のものもあります。

As for manufacturing methods, compression molding is the mainstream process, although injection-molded records do exist.

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2024/09/03

HumminGuru NOVA アドバンス超音波レコードクリーナ

Kickstarter 経由で2021年10月に入手した、お手頃価格の超音波レコードクリーナ HumminGuru、毎日のように愛用してきました。

HumminGuru Ultrasonic Record Cleaner, which I obtained via Kickstarter in Oct. 2021, is a great product at relatively affordable price, and I have been cleaning records almost every day.

Cleaning “Lean In / Gretchen Parlato & Lionel Loueke” with HumminGuru

Cleaning “Lean In / Gretchen Parlato & Lionel Loueke” (Edition Records EDNLP1216, 2023) with HumminGuru

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2023/05/23

ラーメン丼柄のスリーヴ / LEBO PEERLESS Generic Sleeve

そういえば、米国中古盤でよくみかけますよね、この柄のインナースリーヴ。

確かに私も、ジャンルを問わず、いろんな中古盤でよくみかけてきました。特に1960年代〜1970年代近辺の盤でよくみかけるような気がします。当時いろんなところで売られていたポピュラーなジェネリックスリーヴか、はたまたレコードショップ(チェーン)が提供したジェネリックスリーヴか、そんなところかなぁ、と思っていました。

じゃあ手元のどの盤で、このスリーヴ付を見かけたか調べよう…となるところなんですが、なにせ購入後レコードをクリーニングしたら、別の新品インナースリーヴ(いわゆる白い「ダイカットインナースリーブ」です)に交換し、元々ついていたこのテのスリーヴは捨ててしまうんですよね。各レーベル固有のカンパニースリーヴの場合は保管してますけど。

そこで、この、通称「ラーメン丼柄」スリーヴについて、英語圏のコレクターが集うオンライン某所で訪ねてみることにしました。

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2022/09/27

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 1

Pt.0 (はじめに) の続きです。

This article is a sequel to “Things I learned on Phono EQ curves, Pt.0”.

レコードのEQカーブについて深掘りする前に、そもそも なぜイコライゼーションが生まれたのか、なぜ必要とされたのか、その歴史から調べてみることにしました。また、更にさかのぼって、音を溝に記録するとはどういうことか、についても学び直すことにしました。なので、カーブの話に到達するまでに長い道のりになってしまう予定です(笑)

Before digging deeper about EQ curves, I started to study from the very beginning: why the EQ curve was born, why it was/is needed for phonograph recording (and playback). Also, I tried to re-study the very basic – how the recording sounds are converted to a modulated spiral groove. So I’m afraid it will take very long before I reach the story of the EQ curve itself…

Digital image of the surface of 78 rpm record taken with optical magnification. The illumination is coaxial (the light falls vertically onto horizontal record), therefore only horizontal parts of the record reflect the light back into the optical system. These include the inter-groove surface of the record represented by the wide bands in the picture, and the bottom portion of the groove, represented by the thin lines. The scratches on the inter-groove surface are clearly seen. The size of the imaged surface is 2.35 x 2.19 mm 2 .

Audio Reconstruction of Mechanically Recorded Sound by Digital Processing of Metrological Data – Scientific Figure on ResearchGate.
Available from: https://www.researchgate.net/figure/Digital-image-of-the-surface-of-78-rpm-record-taken-with-optical-magnification-The_fig1_242606860 (accessed 4 Sep, 2022)

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