2024/07/12

“Gruve-Gard” and “Rim-Drive” (T-Rim)

7インチ、10インチ、12インチ。33⅓rpm、45rpm、(ごく一部78rpmも)。我々が手にするレコードのほとんどは、いわゆる「マイクログルーヴレコード」(または「ファイングルーヴレコード」)と呼ばれるものです。

このレコードには、当然ながら、さまざまな規格が関わっています。録音再生特性 にまつわるあれこれもそうですが、レコードの直径、センターホールの大きさ、レコードの反りの許容範囲、音源がカッティングされる最内周の最小半径、溝の形状、レーベルの大きさ、その他あらゆる側面が標準化されています。

1940年代末にマイクログルーヴレコードが登場してからしばらくはレーベルや工場ごとにバラバラだったこれらの特性ですが、それぞれの国で徐々に標準規格化が進み、そして最終的には国際的に統一されていきました。

45/45 ステレオレコードが登場して数年経った頃、1960年代初頭には、ほぼ全ての国で実質的に同等の規格が採用されることとなりました。

例えば 音溝の断面形状・寸法 などは RIAA Dimensional Standards (Bulletin E4) という標準規格で定義されており、民生用レコードにおいては、溝の夾角が90°±5°、溝底半径が最大 0.00025インチ(0.006mm)、溝幅が最低 0.001インチ(0.025mm)、とされています。

一方、レコード自体の形状については、1948年に Columbia が LP をデビューさせてしばらくの間は、従来の78回転盤と同様に、完全にフラットな面を持つマイクログルーヴレコードが大半でした。

しかし、多くの方がご存知の通り、現在製造され流通している盤のほとんどは、断面が完全にフラットではありません。音楽が記録されたエリアに比べて、レコード最外周の「リードイングルーヴ」部分とレーベル部分が厚くなっています。通称「グルーヴガード」と呼ばれるものです。

また、1949年に RCA Victor が発表した、通称「ドーナツ盤」と呼ばれる7インチ45回転盤は、レーベル部分のみが厚くなっています。これは、元々オートチェンジャーでのスタックを念頭に設計されていたためです。

この レコードの断面形状 についても、RIAA Dimensional Characteristics によって規格化されています。

今回は、この「グルーヴガード」について、歴史的経緯を追ってみることにします。

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2023/11/07

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 18

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.17 では、1948年〜1953年(つまり1954年のRIAA規格策定前)の、米国における民生用レコードのEQカーブの状況を調査し学びました。

On the previous part 17, I learned the situation of the consumer records in the U.S. since 1948 until 1953 (i.e. before the RIAA Standard was formulated in 1954), especially the disc EQ curves used for those records manufactured in the U.S.

また、ハイファイブーム勃興期の当時に販売されていたアンプの、マグネットカートリッジ用のフォノイコについても調査しました。

At the same time, I did a brief research of phono EQ units (for magnetic cartridges) in the amplifiers that were sold in the era, when the rise of “Hi-Fi” movement became obvious.

今回の Pt.18 では、ついに、1953年NARTB規格、1954年改訂AES再生カーブ、1954年RIAA規格の成立のストーリーに入ります。

This Pt. 18 — finally — will deal with the stories of the formulation of the following standards: 1953 NARTB Recording and Reproducing Standards; 1954 new AES Playback Curve; 1954 RIAA Standard Recording and Reproducing Characteristic.

Characteristics For Fine Groove Disc Records

source: “RIAA Dimensional Standards: Bulletin No. E 1: Standard Recording and Reproducing Characteristics
1954年1月29日に策定された、RIAA標準録音再生規格文書(の1978年11月6日改訂版)に掲載された、RIAA録音再生カーブのグラフ
RIAA Recording / Reproducing Curves, from the version revised on Nov. 6, 1978.

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2023/04/29

Things I learned on Phono EQ curves, Pt.13

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.12 では、Columbia Long Playing Microgroove レコードにまつわる関係者インタビューなど追加情報、および、LP開発の基盤となった技術面、そして当時の(放送局用)再生機器の補正回路などをみてきました。

On the previous part 12, I studied more on the history of the Columbia Long Playing Microgroove Records, by reading additional interviews with CBS/Columbia’s executives and engineers; technical aspects of the microgroove technology; and compensating circuits for professional broadcast reproducing equipment.

今回の Pt.13 はその続きで、Columbia LP 登場の約半年後にライバル RCA Victor から登場した 45回転マイクログルーヴ盤のエピソードと技術的側面を、当時の技術論文や技術解説記事から読み解いていくことにします。

This time as Pt.13, I am going to continue learning the history of disc recording — the advent of 45 rpm microgroove records by RCA Victor — introduced about half a year after Columbia unveiled LP records, as well as the technical aspects of RCA Victor’s new system, by reading and interpreting the technical papers and articles at that time.

The Remarkable Background of “Madame X”

RCA Victor “Madame X” Ad
source: HAGLEY DIGITAL ARCHIVES

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2023/01/08

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 10

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.9 では、1940年代に市販用シェラック盤がどのような設定で聴かれていたか、そしてどのように記録されていたか、を調べました。

On the previous part 9, I studied on the settings and the trends of how the commercial shellac records were reproduced (and recorded) in the 1940s.

今回はその続きで、戦後のさまざまな動き、特にマイクログルーヴLP登場前後の NAB規格改訂(1949年) についてみていくことにしましょう。EQカーブに関する話も、ますます具体的になり増えてくることになると思います。

This time, I am going to continue learning the history of disc recording – some of the notable discussion after WWII, especially the 1949 revision of the NAB Standards, around the advent of microgroove LP records. More detailed stories on equalization curves will hopefully included on this Pt.10 and the following parts.

MacArthur Cuts Radio Rep In Japanese Area (1945)

source: “MacArthur Cuts Radio Rep In Japanese Area”, The Billboard, Vol.57, No.42, October 20, 1945, p.4

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2022/12/20

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 9

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.8 では、1942年に策定された、放送局用トランスクリプション盤向けの録音・再生標準規格、通称「NABカーブ」についての歴史を調べました。

On the previous part 8, I studied on the history and background of “1942 NAB Curve”, the first recording/reproducing standards for electrical transcription discs used in the broadcasting industry.

今回はその続きで、第二次世界大戦中〜LP登場前夜のあれこれ をみていくことにしましょう。市販のシェラック盤への不満が徐々に蓄積されていたことを示す記事や、EQカーブが当時どのように捉えられていたか、がうかがえる資料などです。つまり「何が正解か」ではなく、「当時はどう考えられていたか」の探求です。

This time, I am going to continue learning the history of disc recording – during the WWII, as well as post-WWII period, until the advent of microgroove LP records. This include growing discontent with the quality and experience with commercial shellac records, as well as how listeners and engineers tried to deal with “EQ curves” in these years. So this article is the exploration of “how the things were regarded at that time”, not of “what is the correct answer”.

ただし、当時の技術書類やエンジニアノートなど、一次資料が非常に少ないトピックが多くなるので、当時の雑誌ではどのように言及されていたか、など、間接的な探求が多くなることをご理解の上、ご覧ください。

Please note that this article contains the topics whose primary information (such as technical documentation and engineers’ notes) is rarely found, and I am going to read many magazine articles about the topics, to understand the situation of the 1940s indirectly.

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