2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (5)

第1回第2回第3回第4回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

5回目となる今回は、1964年の Burt Bacharach = Hal David 両氏へのインタビュー記事に登場する射出成形スチレンシングル盤への不満という面白いエピソードのほか、英国の射出成形ヴァイナル盤研究開発を捉えた興味深い動画の紹介、同じく射出成形ヴァイナル盤製造を1970年代に行っていた日本コロムビアの学術論文、最後に21世紀になって登場した「エコフレンドリーな」射出成形PET盤について、それぞれみていきます。

レコード業界における射出成形による製造法の役割が、長期的なコスト削減および生産効率向上、という目的から、持続可能なレコード文化存続へ、とシフトするさまを現在進行形でみているんだなぁ、という思いを強くした学びでした。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (4)

第1回第2回第3回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

4回目となる今回は、1954年当時の射出成形 vs 圧縮成形の様子を解説した記事をかわきりに、1950年代末には結局LP盤のほとんどが圧縮成形プレスで製造されていたこと、逆に射出成形スチレン盤は7インチシングル盤として米国で広く普及したこと、その他1960年代のさまざまなエピソードをみていきます。

21世紀の現在、新しい文脈から射出成形12インチLP盤が再登場していますが、当時の技術レベル(や当時のレーベルの経営的思惑)からは、射出成形LP盤は主流になれなかったのだろう、そんな風に思わされました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (3)

第1回 および 第2回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

3回目となる今回は、射出成形技術が初めてレコードに使用された1947年から、米巨大レーベルが射出成形に大きな投資を行うことを表明した1950年、さらに1951年〜1953年の朝鮮戦争によるレコード製造原材料不足の時期を、当時の記事などでたどっていくことにします。

当時はありふれた大量生産品であったレコードという製品を作るにあたり、レーベルやプレス工場といった企業にとって、技術面もさることながら、コストに対する意識生産可能速度 が最も重要であった、という至極当たり前のことを、改めて強く認識することとなりました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (2)

前編 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

「射出成形盤はいつ頃から製造されたか」、「米国における圧縮成形 vs 射出成形のバトルはどのようなものだったか」、「圧縮成形のスチレン盤は存在したか」、そして「Mercury の例の廉価盤はなにか」などをみていくわけですが、2回目となる今回は、RCA Victor が1957年と1976年に社内技術紀要に掲載した2つの解説論文をたよりに、レコード製造技術の概要を改めてみていきます。

RCA Victor は、米国レコード業界を牽引する立場でもあり、長年に渡りレコード製造技術の自社開発を積極的に行っていましたし、またそれらの成果を学術論文や社内技術紀要などに比較的積極的に公開していたため、このような資料が残っていることには感謝しかありません。

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2024/10/11

How Records Were/Are Manufactured (1)

今回は、SNS 上でみかけたあるレコードの特徴をきっかけにして、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録の前編です。

Preface / はじめに

レコードは何から作られているか。レコードのプレスはどのように行われているか。なんとなくでもご存じの方は多いでしょう。

レコードの主たる原材料として使われてきたものには、シェラック、ベークライト、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、PET などがあります。当然、圧倒的に主流なのはポリ塩化ビニルです。

また、レコードの製造(プレス)方法としては、圧縮成形が主流で、射出成形のものもあります。

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2024/09/03

HumminGuru NOVA アドバンス超音波レコードクリーナ

Kickstarter 経由で2021年10月に入手した、お手頃価格の超音波レコードクリーナ HumminGuru、毎日のように愛用してきました。

HumminGuru Ultrasonic Record Cleaner, which I obtained via Kickstarter in Oct. 2021, is a great product at relatively affordable price, and I have been cleaning records almost every day.

Cleaning “Lean In / Gretchen Parlato & Lionel Loueke” with HumminGuru

Cleaning “Lean In / Gretchen Parlato & Lionel Loueke” (Edition Records EDNLP1216, 2023) with HumminGuru

当初は、取説で指示されている通り、精製水のみでクリーニングを行ってきましたが、現在は(公式には推奨されていないとはいえ)「精製水90% + イソプロピルアルコール10% + ドライウエル数滴」で落ち着いており、クリーニング結果にもおおむね満足しています。

Initially, I cleaned records with only distilled water — as instructed in the operating manual. But recently I’ve settled on using “90% distilled water + 10% isopropyl alcohol + a few drops of surfactant such as Photoflo or Driwel” (although not a officnally recommended way), and I’m generally satisfied with the result.

Here Comes HumminGuru NOVA (HG05)

2024年8月1日、Happy Well 社から新製品 HumminGuru NOVA の先行予約を案内するメールが届きました。

On August 1, 2024, I received an email from Happy Well International Enterprise Limited, announcing the new product HumminGuru NOVA.

HumminGuru NOVA announcement email

コスパの高さから、オリジナルの HumminGuru に不満は全くないのですが、どのように進化したのか、$378 → $699 という価格上昇分に見合うだけの性能向上を果たしているのか、興味があったので、後継機種の HumminGuru NOVA の購入を即断、8月10日に届きました。

Although I have no complaints at all about the original HumminGuru due to its excellent value for money, I was curious to see how it had evolved and whether the performance improvements were worth the price increase from $378 to $699. I decided to purchase the successor model, HumminGuru NOVA — then the parcel arrived on August 10.

Packaging Comparison

新機種 (HG05) の 梱包 のスタイルは旧機種 (HG01) の時とほぼ同じです。

The packaging style of the HumminGuru NOVA (HG05) is almost the same as that of the previous model (HG01).

Top View of HumminGuru NOVA package opened

Top View of HumminGuru NOVA (HG05) package opened

Top View of HumminGuru package opened

Top View of HumminGuru (HG01) package opened

Unit Size Comparison

本体のサイズ は、旧機種 (HG01) が 34.2cm x 15.2cm x 27.4cm、新機種 (HG05) が 34cm x 15cm x 26.1cm、と微妙に異なりますが、基本的な作りはほぼ同一といえます。

Although the size of the unit is slightly different, the basic structure is almost the same. The dimension of the original (HG01) is 34.2cm x 15.2cm x 27.4cm, while that of the NOVA (HG05) being 34cm x 15cm x 26.1cm.

HumminGuru NOVA (HG05) and HumminGuru (HG01)

Comparison of HumminGuru NOVA (left) and HumminGuru (right)
The water tank mistakenly placed each other… (cleaner tank on the right is the one that came with NOVA, while the dulled one due to the deterioration over time, is for HG01)
私のミスで、ウォータータンクを入れ違いに置いてしまいました…
(右の透明度の高い方が NOVA のもので、経年劣化でくすんだ方が HG01 のもの)

Water Tank Comparison

ウォータータンク 自体は、同一寸法で同一仕様のようでした。

The water tanks themselves appear to have the same dimensions and specifications.

Water Tanks for HumminGuru

Comparison of the Water Tank of HumminGuru (left, deteoriorated over time) and HumminGuru NOVA (right, brand new)

それにしても、3年使うとウォータータンクのくすみがここまで進むものなんですね…(ウォータータンクは交換部品として追加購入可能

By the way, after 3 years of use, the water tank can become so dull… (the water tank can be additionally purchased as a replacement part.)

Water Tanks for HumminGuru

Comparison of the Water Tank of HumminGuru (left, deteoriorated over time) and HumminGuru NOVA (right, brand new)

ちなみに、2021年10月の HG01 新品当時のウォータータンクはこのような見た目でした。

For what it’s worth, the below photo is what the water tank of HumminGuru (HG01) looked like when it was new in Oct. 2021.

HumminGuru Water Tank

(HumminGuru HG01 Water Tank, when it was new, as of October 14, 2021)

Wall wart comparison

ACアダプタ は新旧モデルで違いがありますが、出力は共に 12V 5A で、コネクタの形状も同一でした。

There are differences between the AC adapters (wall wart) of the old and new models, but the output of both is 12V 5A and the connector shape is the same.

AC/DC Adapter (Wall Wart) for HumminGuru (left) and HumminGuru NOVA (right)

AC/DC Adapter (Wall Wart) for HumminGuru (left) and HumminGuru NOVA (right)

Main Control Panel Comparison

新旧機種での違いはいくつかありますが、まず目につくのが、操作ボタン 部分です。

There are several differences between the old (HG01) and new (HG05) models, the most noticeable of which are the control buttons (or “Main Control Panel”).

旧機種 (HG01) では、「洗浄 (Clean)」「乾燥 (Dry)」「自動 [洗浄→乾燥] (Auto [Clean→Dry])」の3つのボタンでした。

The old model (HG01) had three buttons: “Clean”, “Dry”, and “Auto (i.e. Clean → Dry)”.

HumminGuru (HG01) Interface

これが新機種 (HG05) では、洗浄時間が 2分 / 5分 / 10分から選べるようになっています。同様に、洗浄→乾燥の自動モードも、その3種類から選べます。

In the new model (HG05), the washing time can be selected from 2 minutes / 5 minutes / 10 minutes. Similarly, the automatic mode (washing and drying) can be selected from these three options.

HumminGuru NOVA (HG05) Interface

5分洗浄ボタンを3秒間長押しすると、10分間洗浄の「Heavy Washing Mode」を選択できます。

By pressing the 5-minute washing button for three seconds, the “Heavy Washing Mode” (10-minute wash) can be selected.

また、自動(洗浄→乾燥)モードではなく洗浄モードの場合、洗浄水が排水されなくなりましたので、乾燥させずに超音波洗浄だけ複数枚連続で行うことも可能になりました。ただし、取説には「30分以上の連続洗浄はしないように」「30分連続洗浄後は電源OFFにして15分間休ませること」と書かれています。

Additionally, when the washing mode is used instead of the automatic (washing → drying) mode, the cleaning water is no longer drained. So it is now possible to perform only ultrasonic cleaning of multiple records in succession without drying them. However, the owner’s manual states “When the washing mode has been running continuously for more than 30 minutes, power off the machine and let it rest for 15 minutes before starting the next washing cycle.”.

Support for 7-inch / 10-inch records

12インチ以外のサイズ(7インチ、10インチ)への対応方法も変更されています。

The method of handling record sizes other than 12-inch (i.e. 7-inch and 10-inch) has also been changed.

オリジナルの HG01 は 12インチ前提で設計されているため、7インチ / 10インチレコード用アダプタ(別売り、当初の Kickstarter 支援者には無償配布)への着脱が必要です。

The original HG01 is designed for 12-inch vinyl records, so the 7-inch / 10-inch vinyl adapters have to be used (which was avaiable for free for the original Kickstarter backers as the stretch goal).

HumminGuru w/ EmArcy 16005

10-inch Record Adaptor for HumminGuru (HG01)
Shulie A Bop c/w Polka Dots and Moonbeams / Sarah Vaughan
EmArcy 16005 (1954)

一方、新機種 (HG05) では、旧機種 (HG01) の時のようにアダプタにレコードをはめることなく、7インチ / 10インチのレコードの洗浄も可能になっています。とはいえ、サポートパーツをはめる必要があったりしますが。

The new model (HG05), on the other hand, can clean 7-inch / 10-inch records directly, without having to attach them to the adapters as was the case with the old model (HG01). However, it is still necessary to attach the support parts.

HumminGuru NOVA (HG05) Manual p.13

from the HumminGuru NOVA (HG05) Owner’s Manual, p.13
7インチ / 10インチ洗浄用に、ドレン部分に取り付けるアダプタが付属している

HumminGuru NOVA “arrow” indicator

HumminGuru NOVA’s “arrow” indicator of the wheel position for 7 / 10 / 12-inch records
左の穴に付属のツールを差し込み回すと、右の矢印の位置を動かせ、それによりレコードを保持する両端のホイル位置を7/10/12インチ用に変更できる

HG01 のレコードアダプタ方式、HG05 のメカニカルな対応方式、どちらも一手間かかるわけですが、新方式になったことにより、レコードアダプタへの着脱時に落としてしまうなど、レコード自体への意図せぬダメージを避ける意味はありそうです。

Both the HG01’s record adapter method and the HG05’s mechanical method require some effort, but the new method seems to be meant to avoid unintentional damage to the record itself, such as dropping it when attaching to / detaching from the record adapter.

また、複数レコードサイズに対応するために洗浄エリア近辺に可動部分が追加されたことにより、その箇所を不用意に濡らしてしまわないためか、洗浄水を注ぐ際に使用するじょうごが付属しています。

In addition, an additional “Water Funnel” (for pouring cleaning water into the basin) is included, perhaps to prevent accidental wetting of the mechanical area to accomodate multiple record sizes.

Water recommendation

オリジナルの HumminGuru (HG01) が登場した2021年当時は、マニュアルに記載されているように「必ず精製水を使うこと」というのが公式見解でした。その後、日本の水道水レベルの軟水であれば問題ないことが確認されたのか、HumminGuru NOVA (HG05) のマニュアルでは「水道水が硬水のエリアの場合は、水道水の使用は避けるべき」という表記に変更されています。

When the original HumminGuru (HG01) was introduced in 2021, the official stance was that “distilled water should always be used” as stated in the owner’s manual. Later, perhaps because it was confirmed that the soft water at the level of tap water in Japan is not a problem, the manual for HumminGuru NOVA (HG05) changed the statement to “if the user resides in a hard water area, it is advisable to avoid using tap water”.

HumminGuru water recommendations

私は以前から、台所で浄水器を通した水をさらに卓上精製水器「ピュアメーカー」で精製水とした上で、イソプロピルアルコールやドライウエルと配合して使っています。

I have long been using water that has been passed through a water purifier in the kitchen tap, then further purified with a tabletop distilled water maker “Pure Maker”, and then blended with isopropyl alcohol and DryWel.

HumminGuru and PureMaker

Pure Maker” (left), an inexpensive non-electrical distilled water maker, a product by Sanei Corporation.

そういえば、HumminGuru NOVA (HG05) には、HumminGuru 純正の洗浄剤 “The Small Bottle” が付属しています。こちらには、アルコール成分が一切配合されていない、とのことです。

…I nearly forgot to mention that the HumminGuru NOVA (HG05) comes with a genuine cleaning agent “The Small Bottle”, which does not contain any alcohol.

Operating Noise

旧機種 (HG01) の時から十分に静かと感じていた超音波クリーニング + 乾燥中の動作ノイズですが、新機種 (HG05) においてもほぼ同等の静かさ(うるささ)でした。

The noise level during ultrasonic cleaning and drying, which had been quiet enough since the old model (HG01), is almost as quiet (noisy) in the new model (HG05).

40kHz の超音波クリーニングが新機種 (HG05) でどの程度出力強化されたのかは不明ですが、上述の通り10分間洗浄の「Heavy Washing Mode」が追加されたこともあり、より念入りにクリーニングできていると感じています。

It is unclear to what extent the 40kHz ultrasonic cleaning power has been enhanced in the new model (HG05), but as mentioned above, the addition of a 10-minute “Heavy Washing Mode” makes it possible to clean more deeply.

また、乾燥用ファンの出力があがったことで、5分間/10分間(本体側面のスイッチで切替可能)だった乾燥時間が 3分間/6分間に短縮されたことは大きなメリットといえそうです。一方、乾燥時の動作ノイズも(体感としては)旧機種の時と同等と感じられるレベルです。

Also, the increased output of the drying fan has reduced the drying time from 5 (or 10 minutes, selectable with a switch on the side of the main unit) to 3 (or 6) minutes, which seems to be a big advantage. In addition, the noise level during the drying process (as far as my subjective impression goes) seems to be the same as that of the previous model.

The “HumminGuru Birds” on the cleaner lid

新機種 (HG05) の地味に嬉しい改良点として、ダストカバーがレコードジャケットディスプレイスタンドとして使え、同時に(連続洗浄時用に)レコードを複数枚立てかけられるようになったことです(笑)

One of the most welcome improvments of the new model (HG05) is that the cleaner lid can now be used as a record jacket display stand, as well as a drying rack holding up to five records 🙂

“HumminGuru Birds” on the cleaner lid

By flipping the cleaner lid upside down, it becomes a drying rack (holding up to five records) as well as “now playing display”.

裏返すことでジャケットスタンド & レコード乾燥用スタンド(最大5枚)にもなる、本体ダストカバー

HumminGuru のロゴである鳥のデザインも可愛らしく、娘にも好評でした。

The bird design of the HumminGuru logo is also cute, and was well received by my daughter.

“HumminGuru Birds” upside-down when unused

When the cleanr lid functioning as a “dust cover” as its original purpose, “HumminGuru Birds” are stored upside down, which is also humorous 🙂
ダストカバー本来の機能を果たす際には、鳥たちが上下逆さまに格納されているわけで、これはこれでファニーですね(笑)

HumminGuru NOVA — a good buy?

すでにオリジナルの HumminGuru (HG01) を所有している場合、そこから買い換える必要があるか、と言われると、正直微妙なところと感じられるかもしれません。確かに、さまざまな追加機能や性能向上がはかられていますが、もともとオリジナルの HumminGuru 自体がシンプルな機能でお得な価格、というコンセプトだからこその満足感があったわけですし、「買い」だったわけです。

If you already own the original HumminGuru (HG01), you may be wondering if you need to spend extra money to replace it. Certainly, there are various additional features an performance improvments, but the HumminGuru (HG01) itself was originally designed with simple functions and a reasonable price, and that is why it is so satisfying and “must buy”.

一方、最初に購入するのが HumminGuru NOVA (HG05) の場合は、Kirmuss Audio KA-RC-1Degritter Mk IIKLAUDIO KD-CLN-LP200Tなどの高価格な機器と比較する事になり、コスパの優秀さがますます際立つことになりますので、非常におすすめできます。

However, if your first purchase candidate is the HumminGuru NOVA (HG05), you wil be comparing it to higher-priced equipment such as Kirmuss Audio KA-RC-1, Degritter Mk II, and KLAUDIO KD-CLN-LP200T. I can highly recommend HumminGuru NOVA, as its great value-for-money will become more and more apparent.

HumminGuru NOVA の 40kHz という超音波洗浄が本当にベストなのか、あらゆる汚れをそぎおとすほど強力な洗浄性能なのか、は分かりませんが、 この充実した機能で USD 699 + 香港からの送料 + 輸入関税 という値段であれば、非常にリーズナブルといえるでしょう。

I am not sure if HumminGuru NOVA’s 40kHz ultrasnoic cleaning is really the best or if it is powerful enough to remove all dusts and impurities, but the price (of USD 699 + shipping cost from Hong Kong + import duties) is very reasonable and attractive for such a full range of features.

また、HumminGuru のサポート品質が非常に高い ことも、大きなおすすめポイントとなるでしょう。Kickstarter でオリジナル HumminGuru (HG01) を入手した時にも、小さな技術的問題を報告したら翌日には懇切丁寧な対応方法をメールで送ってくれましたし、いろんな質問にも気さくに対応してくれます。

I also highly recommend HumminGuru’s support quality: when I got the original HumminGuru (HG01) through Kickstarter, I reported a minor technical problem and received a detailed response via email the next day. They are also very friendly and responsive to all kinds of questions.

Good-bye HumminGuru (HG01) — make the new owner super-happy!

そして、2021年10月からお世話になってきた、オリジナルの HumminGuru (HG01) ですが、某SNS上で無事次のオーナが見つかり、入手価格の半額で引き取られていきました。

The original HumminGuru (HG01), which has been with me since October 2021, successfully found its next owner on a certain social-networking service, and was taken back at half of the price I paid in 2021.

HumminGuru (HG01) operation check

The last time my HumminGuru (HG01) worked at home for operation check test, before being sent to the next owner
次のオーナに送る前に、最終動作確認として我が家で最後のお勤めをする HumminGuru (HG01)

これからも新天地で働き続けて幾多のレコードをクリーニングしてくれると嬉しいです。すぐさま転売とかされていませんように…(笑)

I sincerely hope that the original HumminGuru (HG01) will continue to work in its new place and clean many more records. I also hope that it is not instantly resold… 🙂

2024/08/30

“Monaural” on Compact Disc Digital Audio

Introduction / 余談からスタート

我が家のオーディオ環境では、2004年に TEAC VRDS-25X の中古を導入するまでは、カーオーディオと兼用していたポータブルCDプレーヤや、タダで譲り受けた LD/CD プレーヤなどで、CD を聴いていました(笑)

In my home audio environment, until I installed a used TEAC VRDS-25X in 2004, I listened to CDs with a portable CD player (which was also used with my car audio system), or with a LD/CD player I got for free 🙂

当時はアナログ再生がメインだったからですが、かといって「アナログマンセー」だったわけではありませんし(笑)、今でもディジタル再生も同じくらい好んでいます。

This was because analog was my main source for listening at the time, but that does not mean that I was an “analog supremacist”, and I still prefer digital playback as much as analog playback.

2012年初頭、(のちに Musical Surroundings MYDAC II として製品化された)DAC のプロトタイプ基板 を開発者の Michael Yee さんにいただいたことをきっかけにして、CD を直接再生することはなくなり、CD をリッピングしたのち PC から DAC 経由で再生するようになりました。ここから我が家での本格的なディジタル再生が始まりました。

In early 2012, Mr. Michael Yee, the developer of the audio components, kindly gave me a prototype DAC board (which later commercialized as Musical Surroundings MYDAC II). After that, I stopped playing CDs directly, and my primary digital audio playback method became “playing digital files (that were ripped from CDs) from PCs via DACs”. This was the beginning of full-fledged digital playback in my home.

以前から CD を購入するたびに、XLD (X Lossless Decoder)Exact Audio Copy を使い、ALAC (Apple Lossless) 形式のディジタルファイルとして SSD や NAS に保存しており、現在はこれを Audirvāna Origin + Music app (旧名 iTunes) から DAC に流し込んで再生しています。

Even since before 2012, I have always used such software as Exact Audio Copy and XLD (X Lossless Decoder) to rip the CDs as digital files in ALAC (Apple Lossless) format on my SSD or NAS. Recentely I always play these audio files using the combination of Audirvāna Origin and Music app (was: iTunes) via the DAC.

System Configuration as of August 25, 2024

2024年8月25日時点での我が家のシステム構成図


Michell Orbe 追加後、特に変更はありません

いまだに Audirvāna Origin を「Music Integrated Mode (legacy)」モードで使っている(Audirvana はあくまでバックエンドで、iTunes/Music をフロントエンドとして使用)のは、取り込み年月日、再生回数、最終再生年月日などのデータを、iTunes/Music から他のアプリに持って行けないからです(笑)

I still use Audirvāna Origin in “Music Integrate Mode (legacy)” mode (i.e. Audirvana for backend, iTunes/Music for frontend), simply because there is no way to bring statistical data (such as imported date, play count, last played date etc.) to other apps.

Audirvana Origin “Music Integrated Mode (legacy)”

上記余談はさておき、CD 上の音源を PC 上にもってくることで、ディジタルデータとしての客観的な数値やパラメータを目にすることが容易になります。

Returning to the main subject — by bringing the sound source on the CD to the PC, it becomes much easier to see the objective values and parameters as digital data.

今回のお題、「CD におけるモノーラル音源」も、そんな中で気づいたものでした。

The subject here, “monaural sound sources on CDs” was also something I noticed in this context.

2012年7月下旬、あるモノーラル音源のCDをリッピングしている時、トラックによってファイルサイズがかなり違うことが気になったのです。残念ながら、この時の CD がどれだったのか、いまだに思い出せずにいるのですが。

It was in late July 2012, while I was ripping a certain monaural CD (which I still can’t remember it was, though), I noticed that the file size varied considerably from track to track.

PLEASE NOTE / 注

以下、本稿を通じて、「左右チャンネルがバイナリ一致したモノーラルCD」と「そうではないモノーラルCD」との間での優劣について書いているわけではなく、両者の差が生じる要因に純粋に興味があることにご留意ください。

Throughout this article, I am NOT going to discuss “is the true 2-track mono CD (with binary identical channels) better audio-wise than the CD which is not?”, but am just interested in what made this difference.

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2024/08/08

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 24

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.23 では、1970年代民生用アンプに内蔵されたフォノイコの RIAA 偏差 に関する興味深い記事、および、米国で伝統的に使われていた LCR 録音イコライザの話などを紹介しました。

In the previous Part 23, I learned an interesting article on RIAA deviation of 1970’s consumer amplifiers, as well as LCR recording/reproducing equalziers that had been the legacy especially in the United States.

今回の Pt.24 では、音声信号が最終的にレコードの溝として記録されるまでに通過するシグナルチェーン、そこで使われる機器の歴史的変遷などについて、改めて復習していきます。

This time on Pt.24, I am going to revisit and learn the signal chain from the audio source to the groove cut into lacquer discs, as well as the history and evolution of these.

Recording process flow chart

source: RCA Engineer, Vol. 3, No. 2, Oct.-Nov. 1957, pp.8-9
1957年のRCA社内エンジニア向け紀要に掲載された、録音プロセスのフローチャート
“Recording process flow chart” from 1957 technocal bulletin for RCA’s engineers.

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2024/07/12

“Gruve-Gard” and “Rim-Drive” (T-Rim)

7インチ、10インチ、12インチ。33⅓rpm、45rpm、(ごく一部78rpmも)。我々が手にするレコードのほとんどは、いわゆる「マイクログルーヴレコード」(または「ファイングルーヴレコード」)と呼ばれるものです。

このレコードには、当然ながら、さまざまな規格が関わっています。録音再生特性 にまつわるあれこれもそうですが、レコードの直径、センターホールの大きさ、レコードの反りの許容範囲、音源がカッティングされる最内周の最小半径、溝の形状、レーベルの大きさ、その他あらゆる側面が標準化されています。

1940年代末にマイクログルーヴレコードが登場してからしばらくはレーベルや工場ごとにバラバラだったこれらの特性ですが、それぞれの国で徐々に標準規格化が進み、そして最終的には国際的に統一されていきました。

45/45 ステレオレコードが登場して数年経った頃、1960年代初頭には、ほぼ全ての国で実質的に同等の規格が採用されることとなりました。

例えば 音溝の断面形状・寸法 などは RIAA Dimensional Standards (Bulletin E4) という標準規格で定義されており、民生用レコードにおいては、溝の夾角が90°±5°、溝底半径が最大 0.00025インチ(0.006mm)、溝幅が最低 0.001インチ(0.025mm)、とされています。

一方、レコード自体の形状については、1948年に Columbia が LP をデビューさせてしばらくの間は、従来の78回転盤と同様に、完全にフラットな面を持つマイクログルーヴレコードが大半でした。

しかし、多くの方がご存知の通り、現在製造され流通している盤のほとんどは、断面が完全にフラットではありません。音楽が記録されたエリアに比べて、レコード最外周の「リードイングルーヴ」部分とレーベル部分が厚くなっています。通称「グルーヴガード」と呼ばれるものです。

また、1949年に RCA Victor が発表した、通称「ドーナツ盤」と呼ばれる7インチ45回転盤は、レーベル部分のみが厚くなっています。これは、元々オートチェンジャーでのスタックを念頭に設計されていたためです。

この レコードの断面形状 についても、RIAA Dimensional Characteristics によって規格化されています。

今回は、この「グルーヴガード」について、歴史的経緯を追ってみることにします。

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2024/06/05

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 23

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.22 では、1950年代以降の 民生用アンプに内蔵されたフォノイコの変遷 について学びました。

On the previous Part 22, I learned the historys — especially the transition of the built-in phono equalizers — in the late-1950s to mid-1960s.

今回の Pt.23 では、1970年代民生用アンプに内蔵されたフォノイコの RIAA 偏差 に関する興味深い記事、および、米国で伝統的に使われていた LCR 録音イコライザ の話などをみていきます。

This time on Pt.23, I am going to learn the interesting article on RIAA deviations of 1970s’ consumer amplifiers, as well as LCR recording equalizers that had been the legacy especially in the United States.

SONY TA-2000F: RIAA Deviation and Pulse Response

source: 季刊ステレオサウンド No.21 ’72 (Vo. 7, No. 2) 特別増刊 プリアンプ・パワーアンプのすべて (1972)

SONY TA-2000F プリアンプ内蔵フォノイコの RIAA 偏差とパルス応答特性
RIAA deviation and pulse response of SONY TA-2000F’s phono preamp

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