2025/01/15

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 25

EQカーブの歴史やディスク録音の歴史を、私が学ぶ過程を記録した本シリーズ。前回 Pt.24 では、録音チェーンおよび再生環境における周波数応答特性や位相特性が変化しうるパターンについて調べ、可変イコライザ等の使用による音作りが(特にポピュラー音楽系で)多く行われていることを改めて学びました。また、各種CDリイシュー音源の比較により、当時のシングルマスター、当時のLPマスター、マルチトラックマスターからのリマスター、などを比較することで、ディスク録音イコライザを通過する前の音の違いが確認できることも紹介しました。

This series have documented my process of learning the history of EQ curves and disc recording. In the previous Pt.24, I examined the patterns in which frequency response characteristics and phase characteristics can be changed in the recording chain and reproducing environment, and I learned again that the sound creation (especially in popular music) is often done through the use of variable equalizers and the like. I also introduced the comparison of various CD reissues to confirm the differences in sound between single masters of the time, LP masters of the time, remastered from multi-track masters, etc., before passing through the disc recording equalizer.

最終回 となる今回 Pt.25 は、2年以上に及び調べ学んできた膨大な内容を総括した 要約(復習)です。諸説多きディスク録音EQカーブについて、現時点で分かっていることを整理し、現時点での私の理解に基づき、最後に結論めいたものを記しています。また、少しでも読みやすくするため、仮想キャラ2名によるカジュアルな対話形式を挿入してみました(笑)

This Pt.25, which will be the final part, is a summary of the vast amount of information that I have learned and researched over the past two years. I will then summarize what is currently known — and some tentative summary and conclusion based on my current understanding of many thories — about the EQ curves of disc recordings. Also, in order to make it as easy to read as possible, I have inserted casual dialogues between two virtual characters 🙂

The Measure of Your Phonograph’s Equalization (Dubbings D-101, 1953)

source: The Measure of Your Phonograph’s Equalization (Dubbings D-101, 1953)
from my own collection

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2024/11/26

How Records Were/Are Manufactured (6)

NOTE to non-Japanese readers:
This article — a deep dive into the history of Mercury’s injection-molded styrene LP records — is written only in Japanese, except the conclusion and summary part (also written in English). Or you may read the entire page with the help of the “Translate to English” feature on many modern web browsers, although I’m not sure if my entire Japanese sentences are translated into English correctly and properly.

第1回第2回第3回第4回第5回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

Shelley Products 社によって1940年代末に市場に投入され、一時期は Columbia が開発・実用化・普及に向けて積極的に投資していたスチレンの射出成形法は、LP盤製造では結局は主流とはならず、米国で45回転盤用としてのみ浸透したことを学びました。

また、21世紀に入って、サステナビリティの観点から再び射出成形法が見直され、スチレンではなくリサイクルインフラが整ったPET盤が製造販売されていることを知りました。

最終回となる今回は、もともとレコード製造方法や原材料の歴史を調べるきっかけとなった、Mercury の廉価スチレン製LP盤 について、さまざまな角度から調査してみました。

改めて、今回の一連の調査のきっかけを与えてくださった @zmuku さんに感謝いたします。

プレス工場を特定できる決定的な情報はまだ得られていませんが、レーベルやジャケ裏に印刷されている3本線マークの由来と意味について、非常に妥当な仮説を立てることができた気がします。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (4)

第1回第2回第3回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

4回目となる今回は、1954年当時の射出成形 vs 圧縮成形の様子を解説した記事をかわきりに、1950年代末には結局LP盤のほとんどが圧縮成形プレスで製造されていたこと、逆に射出成形スチレン盤は7インチシングル盤として米国で広く普及したこと、その他1960年代のさまざまなエピソードをみていきます。

21世紀の現在、新しい文脈から射出成形12インチLP盤が再登場していますが、当時の技術レベル(や当時のレーベルの経営的思惑)からは、射出成形LP盤は主流になれなかったのだろう、そんな風に思わされました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (3)

第1回 および 第2回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

3回目となる今回は、射出成形技術が初めてレコードに使用された1947年から、米巨大レーベルが射出成形に大きな投資を行うことを表明した1950年、さらに1951年〜1953年の朝鮮戦争によるレコード製造原材料不足の時期を、当時の記事などでたどっていくことにします。

当時はありふれた大量生産品であったレコードという製品を作るにあたり、レーベルやプレス工場といった企業にとって、技術面もさることながら、コストに対する意識生産可能速度 が最も重要であった、という至極当たり前のことを、改めて強く認識することとなりました。

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2024/08/30

“Monaural” on Compact Disc Digital Audio

Introduction / 余談からスタート

我が家のオーディオ環境では、2004年に TEAC VRDS-25X の中古を導入するまでは、カーオーディオと兼用していたポータブルCDプレーヤや、タダで譲り受けた LD/CD プレーヤなどで、CD を聴いていました(笑)

In my home audio environment, until I installed a used TEAC VRDS-25X in 2004, I listened to CDs with a portable CD player (which was also used with my car audio system), or with a LD/CD player I got for free 🙂

当時はアナログ再生がメインだったからですが、かといって「アナログマンセー」だったわけではありませんし(笑)、今でもディジタル再生も同じくらい好んでいます。

This was because analog was my main source for listening at the time, but that does not mean that I was an “analog supremacist”, and I still prefer digital playback as much as analog playback.

2012年初頭、(のちに Musical Surroundings MYDAC II として製品化された)DAC のプロトタイプ基板 を開発者の Michael Yee さんにいただいたことをきっかけにして、CD を直接再生することはなくなり、CD をリッピングしたのち PC から DAC 経由で再生するようになりました。ここから我が家での本格的なディジタル再生が始まりました。

In early 2012, Mr. Michael Yee, the developer of the audio components, kindly gave me a prototype DAC board (which later commercialized as Musical Surroundings MYDAC II). After that, I stopped playing CDs directly, and my primary digital audio playback method became “playing digital files (that were ripped from CDs) from PCs via DACs”. This was the beginning of full-fledged digital playback in my home.

以前から CD を購入するたびに、XLD (X Lossless Decoder)Exact Audio Copy を使い、ALAC (Apple Lossless) 形式のディジタルファイルとして SSD や NAS に保存しており、現在はこれを Audirvāna Origin + Music app (旧名 iTunes) から DAC に流し込んで再生しています。

Even since before 2012, I have always used such software as Exact Audio Copy and XLD (X Lossless Decoder) to rip the CDs as digital files in ALAC (Apple Lossless) format on my SSD or NAS. Recentely I always play these audio files using the combination of Audirvāna Origin and Music app (was: iTunes) via the DAC.

System Configuration as of August 25, 2024

2024年8月25日時点での我が家のシステム構成図


Michell Orbe 追加後、特に変更はありません

いまだに Audirvāna Origin を「Music Integrated Mode (legacy)」モードで使っている(Audirvana はあくまでバックエンドで、iTunes/Music をフロントエンドとして使用)のは、取り込み年月日、再生回数、最終再生年月日などのデータを、iTunes/Music から他のアプリに持って行けないからです(笑)

I still use Audirvāna Origin in “Music Integrate Mode (legacy)” mode (i.e. Audirvana for backend, iTunes/Music for frontend), simply because there is no way to bring statistical data (such as imported date, play count, last played date etc.) to other apps.

Audirvana Origin “Music Integrated Mode (legacy)”

上記余談はさておき、CD 上の音源を PC 上にもってくることで、ディジタルデータとしての客観的な数値やパラメータを目にすることが容易になります。

Returning to the main subject — by bringing the sound source on the CD to the PC, it becomes much easier to see the objective values and parameters as digital data.

今回のお題、「CD におけるモノーラル音源」も、そんな中で気づいたものでした。

The subject here, “monaural sound sources on CDs” was also something I noticed in this context.

2012年7月下旬、あるモノーラル音源のCDをリッピングしている時、トラックによってファイルサイズがかなり違うことが気になったのです。残念ながら、この時の CD がどれだったのか、いまだに思い出せずにいるのですが。

It was in late July 2012, while I was ripping a certain monaural CD (which I still can’t remember it was, though), I noticed that the file size varied considerably from track to track.

PLEASE NOTE / 注

以下、本稿を通じて、「左右チャンネルがバイナリ一致したモノーラルCD」と「そうではないモノーラルCD」との間での優劣について書いているわけではなく、両者の差が生じる要因に純粋に興味があることにご留意ください。

Throughout this article, I am NOT going to discuss “is the true 2-track mono CD (with binary identical channels) better audio-wise than the CD which is not?”, but am just interested in what made this difference.

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2024/08/08

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 24

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.23 では、1970年代民生用アンプに内蔵されたフォノイコの RIAA 偏差 に関する興味深い記事、および、米国で伝統的に使われていた LCR 録音イコライザの話などを紹介しました。

In the previous Part 23, I learned an interesting article on RIAA deviation of 1970’s consumer amplifiers, as well as LCR recording/reproducing equalziers that had been the legacy especially in the United States.

今回の Pt.24 では、音声信号が最終的にレコードの溝として記録されるまでに通過するシグナルチェーン、そこで使われる機器の歴史的変遷などについて、改めて復習していきます。

This time on Pt.24, I am going to revisit and learn the signal chain from the audio source to the groove cut into lacquer discs, as well as the history and evolution of these.

Recording process flow chart

source: RCA Engineer, Vol. 3, No. 2, Oct.-Nov. 1957, pp.8-9
1957年のRCA社内エンジニア向け紀要に掲載された、録音プロセスのフローチャート
“Recording process flow chart” from 1957 technocal bulletin for RCA’s engineers.

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2024/07/12

“Gruve-Gard” and “Rim-Drive” (T-Rim)

7インチ、10インチ、12インチ。33⅓rpm、45rpm、(ごく一部78rpmも)。我々が手にするレコードのほとんどは、いわゆる「マイクログルーヴレコード」(または「ファイングルーヴレコード」)と呼ばれるものです。

このレコードには、当然ながら、さまざまな規格が関わっています。録音再生特性 にまつわるあれこれもそうですが、レコードの直径、センターホールの大きさ、レコードの反りの許容範囲、音源がカッティングされる最内周の最小半径、溝の形状、レーベルの大きさ、その他あらゆる側面が標準化されています。

1940年代末にマイクログルーヴレコードが登場してからしばらくはレーベルや工場ごとにバラバラだったこれらの特性ですが、それぞれの国で徐々に標準規格化が進み、そして最終的には国際的に統一されていきました。

45/45 ステレオレコードが登場して数年経った頃、1960年代初頭には、ほぼ全ての国で実質的に同等の規格が採用されることとなりました。

例えば 音溝の断面形状・寸法 などは RIAA Dimensional Standards (Bulletin E4) という標準規格で定義されており、民生用レコードにおいては、溝の夾角が90°±5°、溝底半径が最大 0.00025インチ(0.006mm)、溝幅が最低 0.001インチ(0.025mm)、とされています。

一方、レコード自体の形状については、1948年に Columbia が LP をデビューさせてしばらくの間は、従来の78回転盤と同様に、完全にフラットな面を持つマイクログルーヴレコードが大半でした。

しかし、多くの方がご存知の通り、現在製造され流通している盤のほとんどは、断面が完全にフラットではありません。音楽が記録されたエリアに比べて、レコード最外周の「リードイングルーヴ」部分とレーベル部分が厚くなっています。通称「グルーヴガード」と呼ばれるものです。

また、1949年に RCA Victor が発表した、通称「ドーナツ盤」と呼ばれる7インチ45回転盤は、レーベル部分のみが厚くなっています。これは、元々オートチェンジャーでのスタックを念頭に設計されていたためです。

この レコードの断面形状 についても、RIAA Dimensional Characteristics によって規格化されています。

今回は、この「グルーヴガード」について、歴史的経緯を追ってみることにします。

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2024/06/05

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 23

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.22 では、1950年代以降の 民生用アンプに内蔵されたフォノイコの変遷 について学びました。

On the previous Part 22, I learned the historys — especially the transition of the built-in phono equalizers — in the late-1950s to mid-1960s.

今回の Pt.23 では、1970年代民生用アンプに内蔵されたフォノイコの RIAA 偏差 に関する興味深い記事、および、米国で伝統的に使われていた LCR 録音イコライザ の話などをみていきます。

This time on Pt.23, I am going to learn the interesting article on RIAA deviations of 1970s’ consumer amplifiers, as well as LCR recording equalizers that had been the legacy especially in the United States.

SONY TA-2000F: RIAA Deviation and Pulse Response

source: 季刊ステレオサウンド No.21 ’72 (Vo. 7, No. 2) 特別増刊 プリアンプ・パワーアンプのすべて (1972)

SONY TA-2000F プリアンプ内蔵フォノイコの RIAA 偏差とパルス応答特性
RIAA deviation and pulse response of SONY TA-2000F’s phono preamp

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2024/06/03

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 22

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.21 では、マイクログルーヴLP登場前から存在している周波数テストレコードの歴史を、録音カーブの視点から学びました。

On the previous Part 21, I learned the history and diversity of “Frequency Test Records”, which had been available since 1930s — i.e. before the microgroove record era.

今回の Pt.22 では、1950年代以降の 民生用アンプに内蔵されたフォノイコの変遷 について学んでいきます。

This time on Pt.22, I am going to learn and study the history of consumer amplifiers — especially the transition of the built-in phono equalizers — in the late-1950s to mid-1960s.

Bell 3030 Schematics (Phono EQ)

source: Scribd.
Bell 3030 アンプの PHONO プリアンプ部回路図抜粋
左チャンネルは Eur / RIAA / LP それぞれに専用フォノEQ回路があるのに、右チャンネルは3ポジションともに同一 (RIAA) 回路となっている
From Bell 3030 Amplifier’s schematic: right channel shares the RIAA de-emphasis circuit among the Eur / RIAA / LP position.

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2024/04/18

LPのオールアナログカッティングとディジタルディレイ

先日、X (was: Twitter) 上で、以下の投稿が話題になっていました。

今回は、この投稿をきっかけとして、具体的な時期や歴史的経緯、実際に使われた機材などを改めて調べ直し、ざっくり簡単にではありますがまとめてみました。

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