2024/11/26

How Records Were/Are Manufactured (6)

NOTE to non-Japanese readers:
This article — a deep dive into the history of Mercury’s injection-molded styrene LP records — is written only in Japanese, except the conclusion and summary part (also written in English). Or you may read the entire page with the help of the “Translate to English” feature on many modern web browsers, although I’m not sure if my entire Japanese sentences are translated into English correctly and properly.

第1回第2回第3回第4回第5回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

Shelley Products 社によって1940年代末に市場に投入され、一時期は Columbia が開発・実用化・普及に向けて積極的に投資していたスチレンの射出成形法は、LP盤製造では結局は主流とはならず、米国で45回転盤用としてのみ浸透したことを学びました。

また、21世紀に入って、サステナビリティの観点から再び射出成形法が見直され、スチレンではなくリサイクルインフラが整ったPET盤が製造販売されていることを知りました。

最終回となる今回は、もともとレコード製造方法や原材料の歴史を調べるきっかけとなった、Mercury の廉価スチレン製LP盤 について、さまざまな角度から調査してみました。

改めて、今回の一連の調査のきっかけを与えてくださった @zmuku さんに感謝いたします。

プレス工場を特定できる決定的な情報はまだ得られていませんが、レーベルやジャケ裏に印刷されている3本線マークの由来と意味について、非常に妥当な仮説を立てることができた気がします。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (4)

第1回第2回第3回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

4回目となる今回は、1954年当時の射出成形 vs 圧縮成形の様子を解説した記事をかわきりに、1950年代末には結局LP盤のほとんどが圧縮成形プレスで製造されていたこと、逆に射出成形スチレン盤は7インチシングル盤として米国で広く普及したこと、その他1960年代のさまざまなエピソードをみていきます。

21世紀の現在、新しい文脈から射出成形12インチLP盤が再登場していますが、当時の技術レベル(や当時のレーベルの経営的思惑)からは、射出成形LP盤は主流になれなかったのだろう、そんな風に思わされました。

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2024/10/30

How Records Were/Are Manufactured (3)

第1回 および 第2回 に続き、戦後のレコード製造工程や原材料の歴史を改めて調べてみた、そんな記録です。

3回目となる今回は、射出成形技術が初めてレコードに使用された1947年から、米巨大レーベルが射出成形に大きな投資を行うことを表明した1950年、さらに1951年〜1953年の朝鮮戦争によるレコード製造原材料不足の時期を、当時の記事などでたどっていくことにします。

当時はありふれた大量生産品であったレコードという製品を作るにあたり、レーベルやプレス工場といった企業にとって、技術面もさることながら、コストに対する意識生産可能速度 が最も重要であった、という至極当たり前のことを、改めて強く認識することとなりました。

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2024/07/12

“Gruve-Gard” and “Rim-Drive” (T-Rim)

7インチ、10インチ、12インチ。33⅓rpm、45rpm、(ごく一部78rpmも)。我々が手にするレコードのほとんどは、いわゆる「マイクログルーヴレコード」(または「ファイングルーヴレコード」)と呼ばれるものです。

このレコードには、当然ながら、さまざまな規格が関わっています。録音再生特性 にまつわるあれこれもそうですが、レコードの直径、センターホールの大きさ、レコードの反りの許容範囲、音源がカッティングされる最内周の最小半径、溝の形状、レーベルの大きさ、その他あらゆる側面が標準化されています。

1940年代末にマイクログルーヴレコードが登場してからしばらくはレーベルや工場ごとにバラバラだったこれらの特性ですが、それぞれの国で徐々に標準規格化が進み、そして最終的には国際的に統一されていきました。

45/45 ステレオレコードが登場して数年経った頃、1960年代初頭には、ほぼ全ての国で実質的に同等の規格が採用されることとなりました。

例えば 音溝の断面形状・寸法 などは RIAA Dimensional Standards (Bulletin E4) という標準規格で定義されており、民生用レコードにおいては、溝の夾角が90°±5°、溝底半径が最大 0.00025インチ(0.006mm)、溝幅が最低 0.001インチ(0.025mm)、とされています。

一方、レコード自体の形状については、1948年に Columbia が LP をデビューさせてしばらくの間は、従来の78回転盤と同様に、完全にフラットな面を持つマイクログルーヴレコードが大半でした。

しかし、多くの方がご存知の通り、現在製造され流通している盤のほとんどは、断面が完全にフラットではありません。音楽が記録されたエリアに比べて、レコード最外周の「リードイングルーヴ」部分とレーベル部分が厚くなっています。通称「グルーヴガード」と呼ばれるものです。

また、1949年に RCA Victor が発表した、通称「ドーナツ盤」と呼ばれる7インチ45回転盤は、レーベル部分のみが厚くなっています。これは、元々オートチェンジャーでのスタックを念頭に設計されていたためです。

この レコードの断面形状 についても、RIAA Dimensional Characteristics によって規格化されています。

今回は、この「グルーヴガード」について、歴史的経緯を追ってみることにします。

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2024/04/06

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 21

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を(私が独りで勝手に)学ぶ本シリーズ。前回 Pt.20 では、1954年〜における米国の各レーベルの RIAA 対応状況について各種資料から追いました。また、過去〜現在における EQ カーブ調査の系譜についてまとめました。

On the previous part 20, I looked for trace of how the U.S. labels migrated to RIAA, after the standardization of RIAA Recording and Reproducing Standards in early 1954, by researching various documents and magazines. Also I examined the genealogy of the studies and researches on EQ curves, from past to the present.

多忙等のため少し間があいてしまいましたが、今回の Pt.21 です。もともとは、今回を最終回として、今まで触れられなかった小トピックのほか、ここまでの学びの総括を行い、全体をどのように捉えるのがもっとも論理的整合性が高いと考えられるか、を考察するつもりでした。

After a long absence, here’s the Pt. 21. Initially I was thinking to make this part the summary and conclusion part of the entire series, including some other minor topics, as well as my final consideration of the history of the EQ curves, based on the whole study I have conducted, to find the most logical and consistent.

しかし、その「小トピック」のひとつを書き始めてみると、予想以上に分量が増えてしまったため(笑)、今回は、録音カーブの視点から眺めた「テストレコード」についてのみ扱うことにします。

However, once I started writing one of the “minor topics”, it became longer and longer… so this time I’m going to deal only with a variety of “Test Records”, from the viewpoint of disc recording curves.

ですので、当連載はもう少しだけ続く予定です(笑)

So this series of articles will be continued for a little while longer 🙂

Freq. Response Graph FPR0468H3 of DENON 103-R No. 9076 plotted using JVC TRS-1005

Frequency response graph sheet (Nippon Columbia FPR0468H3) that came with DENON 103-R Serial No. 9076, plotted using JVC TRS-1005 test record.
私が所有する DENON 103-R カートリッジ(シリアル番号9076)に付属してきた、JVC TRS-1005 テストレコードを使った特性グラフシート(日本コロムビア FPR0468H3)

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2023/12/10

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 20

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.19 では、1950年代中盤〜1970年代の代表的なカッティングアンプと内蔵録音フォノイコの取説や回路図を調査し、どのように RIAA 録音カーブが実現されていたかを学びました。

On the previous part 19, I learned how the RIAA recording curve was accomplished with various recording amplifiers and built-in recording EQs from the mid-1950s to 1970s.

今回の Pt.20 では、1954年前半に RIAA 録音再生特性の標準規格化が策定されたあと、米国の各レーベルがどのように RIAA に移行していったか、その痕跡を探すと同時に、過去〜現在における EQ カーブ調査の系譜についてもみていきます。

In this Pt. 20, we’re going to look for traces of how the U.S. labels migrated to RIAA, after the standardization of RIAA Recording and Reproducing Standards in early 1954, as well as to examine the genealogy of the studies and researches on EQ curves, from past to the present.

CSL (Columbia Standard Level)

SIDE II, ZRD 431-1A (from my own collection)
COLUMBIA STANDARD CHARACTERISTIC as per R.I.A.A. — N.A.R.T.B. industry norm.
A playback system equalized to this standard should reproduce this record ± 1 db from 10 KC to 30 cycles, and from 15 KC to 10 KC ± 1 db at 6 db below that from 10 KC to 30 cycles.

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2023/09/29

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 17

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.16 では、第二次世界大戦勃発に端を発した物資不足から「サファイア・グループ」という業界エンジニア交流コミュニティが生まれ、企業秘密による競争から業界をあげての情報公開・技術標準化への動きがうまれたことを学びました。

On the previous part 16, I learned on the history of the “Sapphire Club” aka “Sapphire Group”, that was formed during the WWII because of the shortage of industry materials, and led the standardization in the industry, from the competition with trade secrets to the open collaborations, especially among the engineers.

同時に、その「サファイア・グループ」をきっかけとして、戦後の Audio Engineering 誌の発刊、およびオーディオ工学専門学会 Audio Engineering Society の誕生に繋がった流れを学びました。最後に、初の統一再生カーブである「AES 標準再生カーブ」について詳細を学びました。

At the same time, I learned the foundation of the Audio Engineering magazine as well as the Audio Engineering Soeicty, as a result of collaboration through the Sapphire Group. Then I learned the details of the “AES Standard Playback Curve”, the first advocated standard characteristic for commercial records.

調査に手間取るなどして少し間があいてしまいましたが、今回の Pt.17 では、LP黎明期〜AES標準再生カーブ発表の1951年1月〜統一前夜(最終的に米国各業界内で統一がなされる 1953 NARTB / 1954 改訂 AES / 1954 RIAA 策定の直前)、までの状況を調べていきます。めちゃくちゃ長い記事になってしまいました(笑)

This time as Pt. 17, after a few months of absence (due to the continuous research etc.), I am going to continue learning the history of disc recording, especially during the period: from the advent of LP records, publication of the AES curve in Jan. 1951, to the eve of the industry standardization (formations of 1953 NARTB / 1954 new AES / 1954 RIAA). Please note, this part is going to be an extraordinarily lengthy article 🙂

Mercury MG-50000 Rear Cover (AES)

“About This Recording…” section of Mercury MG-50000 (1951), recommending AES playback curve.
Mercury MG-50000 (1951) の裏ジャケより。AES 再生カーブが指定されている。

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2023/06/10

Things I learned on Phono EQ curves, Pt.14

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.13 では、RCA Victor が1949年に発表した7インチ45回転盤(そして敗北した Columbia 7インチ33 1/3回転盤)にまつわるエピソードと、45回転盤、オートチェンジャー、録音再生EQカーブなど、技術的側面などをみてきました。

On the previous part 13, I studied more on the history of RCA Victor’s 7-inch 45 rpm records (and Columbia’s 7-inch 33 1/3 rpm records that RCA Victor defeated), as well as its technical aspects of the 45 rpm records, dedicated record changer attachments, and recording/reproducing characteristics, etc..

今回の Pt.14 はその続きです。今回は、LP や 45回転盤登場直後における各レーベルの「回転数競争」中の対応状況について、時系列でみていきます。ここは、11年前の記事「What The EP (Extended Playing) Originally Stands For」と一部重複する内容もあります。

This time as Pt.14, I am going to continue learning the history of disc recording — a chronology how record labels (except Columbia and RCA Victor) reacted to the new formats and technology (and to the “Battle of the Speeds”). So this shares several contents as previously shown in “What The EP (Extended Playing) Originally Stands For”, the article I published evelen years ago.

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2023/01/08

Things I learned on Phono EQ curves, Pt. 10

EQカーブの歴史、ディスク録音の歴史を学ぶ本シリーズ。前回 Pt.9 では、1940年代に市販用シェラック盤がどのような設定で聴かれていたか、そしてどのように記録されていたか、を調べました。

On the previous part 9, I studied on the settings and the trends of how the commercial shellac records were reproduced (and recorded) in the 1940s.

今回はその続きで、戦後のさまざまな動き、特にマイクログルーヴLP登場前後の NAB規格改訂(1949年) についてみていくことにしましょう。EQカーブに関する話も、ますます具体的になり増えてくることになると思います。

This time, I am going to continue learning the history of disc recording – some of the notable discussion after WWII, especially the 1949 revision of the NAB Standards, around the advent of microgroove LP records. More detailed stories on equalization curves will hopefully included on this Pt.10 and the following parts.

MacArthur Cuts Radio Rep In Japanese Area (1945)

source: “MacArthur Cuts Radio Rep In Japanese Area”, The Billboard, Vol.57, No.42, October 20, 1945, p.4

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2022/06/15

なぜ日本だけで「SP盤」と呼ぶようになったのか

昔懐かし、蓄音機でかける、割れやすいレコード。

10インチ (片面3分程度) / 12インチ (片面5分程度) が一般的です。

回転数は、当初は 80rpm、76rpm など、いろいろあったようですが、のちに 78rpm に統一されました(正確には 78.26rpm)。

で、そのレコードを指して、日本では SP盤 と呼ばれることが多いです。いわく、LP盤 (33 1/3rpm の Long Playing) に対して、Standard Playing の省略形である、と。

しかし、不思議なのです。日本以外で「SP」や「Standard Playing」という表記を見かけたことがありません。 代わりに英語圏でよく見かけるのは「78rpm」「Shellac Records」「Phonograph Records」「Gramophone Records」といったものばかり。

どうして、日本だけ別の呼び方になったのか、あるいは他の国でも「SP」という表記があるのか、なんとなく気になったので、いろいろ調べてみました。もともとは Twitter 上でのつぶやきから始まったものですが、ここにまとめておきます。

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